太陽のあたたかさを集めるくろいはな
鼻があたたかい。黒い鼻は太陽の光を集めて春の暖かさを感じる。と白熊はおもった。
顔の下にに両腕を置いて鼻を上下にゆっくり動かす。雪の匂いをかぎながら辺りの様子を耳でさぐる。
近くにはだれもいないにちがいない。
近くに感じるのは鼻にあたる太陽の光だけだった。
さあ立って、陸へ歩きはじめよう。しばらく氷の上で過ごしてきた白熊は、陸がなつかしいのだ。
今日はこの黒い鼻の命じるままにすすもう。
一瞬風が吹いた。軽い感じと思ったが、ぐっと足を踏ん張らなければならない程の強さに突然変わり。
雪も混じって、春の嵐になった。
嵐のとき氷の上を歩くのは久しぶりだった。白い毛の先に少しずつ雪が付き同時に凍り始めた。
もう少し歩こうかとも考えたが、前も見えない嵐のなか寒さを感じて休むことにした。
氷と雪のくぼみをみつけて体をいれた。
風は止みそうになく前も見えないが、ここは快適だった。無理に前に進むより周りの様子の変化をしっか
りとらえてから進むほうがいいのだ。
しばらく休もう。黒い鼻もすっかり冷たくなりやっぱり休んでよかった。
そうしているうちにうとうとと眠たくなり、しろくまは夢をみはじめた。
夢の中は真っ白な世界。
お腹がすいた。何か食べるものは。今食べたいものは魚じゃなくあまいものかな。
赤い実をお腹いっぱい食べたい。食べたらきっと幸せだろうな。
食べ物があって休める場所があってこれが幸せなのかな。食べた気分になって夢は醒めた。
白熊はしあわせについて考えた。生きるために必要なものがそろっていること。
単純だよね。
また氷の上をあるきはじめた。
くろいはなを信じて必要なものををさがすために。