六話
お待たせ致しました!!
ほっとんど進んでおりません!書きたいことありすぎて!!
そんなゆっくりゆっくりペースですがよろしくお願いします。
清々しい朝です。ふかふかのベッドで起きるのは気持ちが良いものですね。このまま二度寝したい気分です。
え?計画はどうしたかって?
フッ……失敗してしまいましたよ。ええ、眠気に勝てませんでした(泣)
くぅっこんなはずでは……!え、そもそも何をやりたかったのかって?
夜の女子会ですよ女子会!!
女の子だけで一つのベッドに集まって……えーと、恋バナ?したかったんです!
今までベッドで寝るのは一人でしたし、そもそも元の世界でもリアル女友達というのも居なかったものですから……あれ、目から水が。
兎に角、ストック用のお菓子を出してミリアレーヌを待って準備万端でしたのに、元の世界でも決まった時間に寝る習慣でうっかり寝てしまいました……。自分の身体が恨めしいです……!因みにミリアレーヌ本人は何処から持ってきたのか寝袋で寝てたそうです。本当に何処から持ってきたのでしょう。あ、アイテムボックスからか。
でも、次こそはちゃんと遅寝早起きするのです!……あれ、何か違うような。
こほん。まあ何はともあれ朝を迎えましたので今日は大掃除をしようと思います。でもその前に、腹が減っては戦は出来ぬと言いますし、朝食を食べましょうか。
私、アンジェリーナ・ヴィンセントの朝は一杯の紅茶から始まります。ふふ、○執事ではないですよ?
ミリアレーヌが淹れた紅茶はとても美味しいのです。私の気分やこの後の仕事で茶葉が変わり、且つ私に適した温度にしてくれるので、とても助かってます。
朝食はベッドに腰掛けながら戴きます。さながら貴族のようです。魔王ですけど。
あまり朝は食べられませんのでパンとドレッシングがかかったサラダ、オムレツで済ませてしまいます。
クリストフが作ってくれる朝食はいつも美味しいですね。
次に洗顔ですね。これは10分で終わります。朝の洗顔はさっぱりできて気持ちが良いのです。
次はお着替えです。といっても私が着るのはあの豪奢な紫のドレス(防具)一着ですから、貴族の令嬢にある何着ものドレスをあーでもないこーでもないと選ぶ時間など皆無です。そんな時間があるなら仕事に費やしてます。
お着替えも10分で充分です。ミリアレーヌの手腕でキッチリと着させて貰い、髪の毛を整え、トレードマークの耳飾りを着けたら完璧です。え、お化粧?リップだけで充分ですとも。
準備が出来たら時間通りにアレクシスが迎えに来てくれます。ノックが鳴ったのは丁度10時ぴったりですね。流石です。
ミリアレーヌがドアを開くといつも通りパリッとした執事服に着替えてました。うん、眼福です。
「お早う御座いますアンジェリーナ様」
「お早うアレク。今日も……いえ、今日から再び宜しくね」
「っ!……はい」
私にとっては一昨日のいつも通りの事でもアレクシスにとったら500年振りですものね。私の言葉に彼は驚きましたが直ぐに顔を綻ばせてきました。……何だか顔が熱いのでさっさと部屋を出てしまいます。
すると後ろから小さくクスクスと笑い声が聞こえてきました。むう。
居た堪れないので転移魔法を使ってしまいました。目的地は執務室です。
通常ならアレクシスと共に歩いて執務室へ赴くのですが、ついうっかりです。
一瞬で執務室に着いて、いつも通り執務席に座りました。さて、あの三人は起きているでしょうか。
彼等が着けているピアスの通信機を使って呼びかけましょう。
『クロード、フェリクス、クリストフ、起きてますか?』
『『…………』』
『起きてますよ、俺のお姫様』
……どうやらクリストフは起きてるみたいですね、まあ朝食を作ったのは彼ですから当たり前ですが。
通信機はクリストフだけに絞って話し掛けます。
『お姫様はお止めください、お兄様』
『はいはい』
『はい、は一回』
『分かったよ。…お早う』
『……お早う御座います』
元の世界でも電話越しで話してましたが、この掠れるような重低音ボイスは本当に止めてほしいですね。耳元で囁かれてる感じでむずむずしてしまいます。
『そういえばさっきあの二人も呼んでたけど、俺にまで話し掛けるとは何か用があるんでしょ?』
『ええ。お話は執務室で行いますから、あの二人を起こしてきてくださいませんか?』
『ええ~?』
『お願いします』
『……あの二人起こすの面倒臭いし、何で男相手に……』
ぶつぶつ文句言う兄のクリストフは女の子大好きですので、男相手ですと一気にやる気を失います。あれでも戦闘になると強いのですけれど……。ああもう、仕方ないですね。
『……今了承しますともれなく私からお早うのキスを差し上――』
『行ってくる!!』
最後まで言うまでもなく通信機を切って行ったようです。重度のシスコンの相手は疲れます……。尊敬はしてるのですけどね。
通信を終えますとアレクシス、その5分後に皆私服でクリストフ、フェリクス、クロードの順で入ってきました。
随分と早かったですね。と思ったらクリストフがキラキラした瞳で近づいてきました。
「頑張ったからね。ほら」
「?」
「? じゃなくて、ご褒美は?」
「…要件が終わってから」じゃだめ。今くれないと仕事やんないよ?」
子供ですか貴方はっ!と言いたいけれど、仕事してくれないのは困ります。皆の目の前でやるのも恥ずかしいのですが……仕方ありません。背の高い彼に屈んで貰って頬にキスを贈りました。
瞬間、何故か空気がビキッと音を立てて氷のように寒くなりました。固まったとも言えます。
皆無表情ですが反対に、クリストフはにんまりと嗤ってます。皆、怖いですよ。
「クリストフ殿……覚悟は出来てますか?」
そう言いながらアレクシスがアイテムボックスから彼専用のサーベル型の武器、【黒鋼剣】を取り出し。
「死にたいらしいなぁクリストフゥ……」
クロードは目を光らせて腰に帯刀している両手剣の【焔天斬】の柄を掴み、
「斬り落とされたいんですね?」
と満面の笑みをしながら黒いオーラを纏っているフェリクスはレイピア型の【暴風雪】をすらりと刀身を抜き――って!!
「お、落ち着いてください!」
「そうそう、これは唯単にご褒美だよ?」
「「「!!」」」
クリストフの言葉に一斉に黙り込みました。皆、怖いですよ。大事なことは二度言います。
「それで、アンジェリーナは俺達に何をして欲しいのかな?」
クリストフの言葉でハッと思い出しました。そうですよ、皆で作業しないといつ終わるのか分かりませんからね。切り替えないと、そう思いながら再び執務席に座りました。
アレクシスには事前に伝えていたことを皆に話して貰います。
「この城の掃除をやって貰います」
「「「掃除?」」」
「ええ、このままでは外部の敵に我々が、特にアンジェリーナ様が復活したことが露見されてしまいかねません」
「ちょ、待てよ。外部の敵って何のことだ?それに復活って?」
クロードの質問で昨日の事が思い返されます。そういえば昨日詳しく話す約束でしたね。ここは私が説明しましょう。
「そうでしたね、まあ簡潔に話すと……ここは私達の記憶より500年も後の世界。そして今魔界では人間界にいるはずの人間がこの魔界で蔓延っています」
「「「…………は?」」」
ええ、そうなりますよね。私も同じ反応しましたからね。でも現実です。ゲームとは違い、死ぬと生き返れません。まあ私達魔族(この城に居る六人)が死ぬには相当な力が必要ですけれど。
ですが今はこの城の大掃除と防護魔法が最優先です。細部の細部までやるとすれば多分3日はかかるでしょうが、必要な分だけ手っ取り早く、確実にやりましょう。
「更に詳しい話は掃除と防護魔法が掛け終わったら、です。良いですね?」
「「「分かった」」」
「でもさすがにこの六人で掃除するのは大変ですから。クロード、フェリクス、クリストフ、『援軍』って出来ますか?」
「「「!」」」
援軍とはその言葉通り、NPCの援軍を呼ぶことが出来る魔法、ではなく、技のようなものです。ですがそれが出来るのは立場が上の方、騎士団長や総料理長など、人(NPC)を使うことが出来る人でなければ使えません。
「成程、人数を増やしていけば手っ取り早く終われそうですね」
「でしょう?」
「だ、大丈夫なのか?」
「何がです?」
「いやその……」
「どうなるか、それは私にも分かりません。ただ、やってみないと先には進めませんよ?」
「う」
「そうですね、先ずはクロードから20名。お願いします」
「……分かった」
この執務室は無駄に広いので余裕で30人くらいは入るでしょう。クロードは後ろを向いて腕を前に出します。そして何か呟くと人型の光が創り出され、多くの魔族が構成されました。
一先ず成功ですね。――そういえば、援軍から出来た魔族って撤収出来るのでしょうか?……まあこれは後で考えましょう。出来なかったとしても寝床は取り敢えず城のお部屋で寝ることは出来ますし(掃除は各自でして貰いましょう)、食糧もショップで買えばなんとかなりますし。
あ、ショップというのはステータス画面の【お問い合わせ】の左に普通に【ショップ】とありました。文字を押せばゲーム時にあったような武器に防具、食材に薬まで何でも一通り揃ってありました。便利ですね。
彼等はクロードやフェリクスのような立派な甲冑ではありませんでしたが、その装備を少なくした物を着て、後ろにはクロードより暗い紅のマントを付けていました。クロードの部下ということが分かりますね。皆様々な髪色に肌色をしておりグラデーションが綺麗……というわけではありませんね、すみません。
彼等は一斉に閉じていた瞼を開くと、心が宿ったように目の光が輝きました。
「……クロード団長……?」
その内の一人が茫然としたように呟き、全員が全員、ぽかんとした顔で突っ立っています。
やっぱりNPCという存在だった彼等も精神が宿るのですね。やっぱりこの場面は感慨深いものです。
うんうんと肯いていると団員の一人がぶるぶると震えだし、どうかしたのかと顔を見ると、まさかの涙目になっており、ぎょっとすると同時に涙がほろりと落ちて号泣しました。それに伝播するように周りの者も泣き出してしまいます。
私、アンジェリーナ・ヴィンセントは、集団で男泣きされるとどうすれば良いのか分からなくなるという経験を初体験致しました。
誤字・脱字がありましたら教えてくださると助かります。