五話
投稿して一週間足らずで1000PV超えてました。ありがとうございます!
お待たせしました。一部編集しました。
さてさて、あの三人を全員一緒に召喚しましょうか。まずは召喚するために使う召喚チケットを、亜空間アイテムボックスから出しましょう。
アイテムボックスに手を突っ込んで探ってみると何かツルツルとした手触りのある物が手を掠りました。取り出してみるとそれは金で出来た薄いプレートで、驚いた瞬間説明文が書かれた画面が表示されました。
『 召喚チケット
プレイヤーを呼び出すために使うアイテム。召喚は魔王三名しか使えない。召喚する場合は決まった詠唱を行わなければならない』
召喚者は三名だけ……ということは?他の魔王が持っていた召喚チケットを私が使っても何の問題はない、ということですね?ふふ、ふふふふふふふふ…………、え?何もしませんよ?……冗談ですよ冗談。
私が黒い笑みを浮かべているのにアレクシスとミリアレーヌは微笑ましいという顔でほんわか和んでいます。何やら気恥ずかしいですね。
と、画面に続きがあることに気付きました。それに先程までスルーしてた決まった詠唱とはなんでしょうか。そんな私の疑問に答えるかのようにそれは書かれてありました。
『詠唱文【ベルセルクという世界の名の元に、そして(召喚者)の名の元に現れよ。我の名によって縛られ、従事する者、(召喚される者の名)を召喚せん】と絶対に唱えなければならない』
………………なんでしょう、これを詠唱しなければならないのがものすごく嫌です。こっ恥ずかしいどころではないような気がします。いえ寧ろ黒歴史になりそうな。厨二病かと盛大にツッこみたい。これは製作者からの陰謀でしょうか。「絶対」ってありますし多分そうなんでしょう、ね……。
……結局のところ、これを詠唱しなければ召喚出来ないということでしょう。そういうことでしょう。もうこの際羞恥心を捨て去って無心でやってやりましょう。
ですがその前に。
「アレク、ミリア、これから私が詠唱して召喚を致します。が、貴方達は耳栓をしていてください」
「……何故です?」
「そっ……それは…、この詠唱を聴いた場合貴方達に障害がないとは限らないからです」
「「……畏まりました」」
ええ、詠唱するということはこの部屋にいるアレクシスとミリアレーヌに聞かれてしまうということです。二人を我が子のように思っている(そう思っているのは私だけですが)私が耐えられません。
なので二人には耳栓をして貰いましょう。勿論被害があるかもしれないというのは嘘ですがこれも方便です。
二人が耳栓をして更に耳を押さえているのを見届けて三枚の召喚チケットを前に掲げます。
――この時、二人が耳栓の片方だけ外して見守っていることを私は気付いていませんでした。
「ベルセルクという世界の名の元に、そしてアンジェリーナ・ヴィンセントの名の元に現れよ。我の名によって縛られ、従事する者、クロード・アルクイン、フェリクス・ベルモンド、クリストフ・ブライアンを召喚せん」
結構早口で詠唱した瞬間、真っ白な光が視界を埋め前が見えなくなりました。そして漸く収まった時には、三人の煌びやかな顔をした魔族が私の前に立っていました。
左から順に、一人は紅く短い髪で所々跳ねた癖っ毛をし、瞳は琥珀、肌は少し焼け耳は尖っており、左耳にはアンジェリーナの紫の瞳と同じ色をした小さく丸いアメジストが留まっていた。
そして紅騎士団団長の名の通り、薄く紅みがかった白銀の甲冑と大きく燃えるような濃い紅のマントを着込み、その下は頑強で大きな身体をしている。
もう一人は蒼く長い髪を後ろで縛り、さらさらとした髪質で、瞳はサファイア、肌は男にしては白く、耳はクロードと同じで先端が尖り、左耳に同じように小さなアメジストが留まっている。
そして蒼騎士団団長の名の通り、薄く蒼みがかった白銀の甲冑と大きく海の底を思わせるような濃く蒼のマントを着込み、その下は細いながらも堅固な身体をしている。クロードとは対照的だ。
最後の一人は私と同じ少し長い白銀の髪でこれも滑らかな髪質をしており、瞳はエメラルド、肌色は普通で、耳は同様に(以下略)。
そしてシェフのように全身白い制服……ではなく、長袖の白いシャツに黒い袖なしのベスト、そして濃い灰色のすっきりとしたズボンを穿いてその上に真っ白の前掛けを着け、黒く汚れが全くない革靴を履いている。
うん、皆ゲームの容姿そのままですね。そして皆さん疑問に思ったでしょう。三人の耳にある同じものをつけたピアスは、私の仲間という印です。
これに対象者の血を一滴落として耳に着ければ個人認証となり、そして更にGPS代わりにもなりますし、電話のように連絡も出来ますし、対象者の魔力を自由に蓄積することも出来るという便利な魔道具です。勿論私の自作ですよ。
それにしても三人とも目は開いてはいますが、何処か茫然といった感じです。私の事見えてますかね?ぶんぶんと手を振ってみると漸く正気に戻ってくれたようです。
「よく来てくれました、クロード、フェリクス、クリストフ」
ですが、この三人がココに来てくれたことに、嬉しくて、うれしくて。どうしても笑みがこぼれてしまいますね。
胸の奥で様々な想いが溢れて口を動かそうとしますが声が出ません。涙が溢れそうになるのをギュッと目を瞑って押さえ、嗚咽が漏れそうになるもの抑えて、言葉を紡ぎました。
「私の願いに応えてくださって感謝致します。……ありがとう」
私の姿に目の前の立派な身体をした男性達がおろおろと狼狽えているのを見て、少しだけ笑ってしまいました。そんな私を見てほっとしたように落ち着きを取り戻すところも笑えてしまって周りの空気が和やかになりました。
……それにしても、三人とも背が高いですね。元の世界でもそうでしたが。アレクシスを含めた男性陣皆180㎝超えってどういうことでしょうか。バスケ選手でもいけるのでは?まあそれは置いといて。
「さて、三人にはこの世界について説明しなければならないところですが…もうすぐ夜になりますのでまた明日に致しましょう」
そう、窓の外を見ればもう黄昏時になっていました。時が過ぎるのは早いですね。私の言葉にアレクシスは指を鳴らし、部屋に何本もの蝋燭を出現させたので部屋が明るくなりました。
あ、城には既に外視反射の魔法をかけていて、更に魔力を感知させないようにしてますので、部屋が明るくなっても外からは点いてない仕様になってます。外敵に気付かれでもしたら少々困りますからね。
アレクシスの魔法に三人が目を見開きました。まるで今アレクシスとミリアレーヌの存在に気付いたという風ですね。多分そうなんでしょうけど。
ゲーム内でも知ってるでしょうが、改めて二人を紹介しておきましょうか。
「三人とも、アレクとミリアのことは知っているでしょうが、二人は私達主力の魔族が居なくなってから今まで500年もの間、ここを守ってくれてたの」
「「「500年!?」」」
「まあ詳しいことはまた明日話しましょう。そういえばアレク、城に客室と思えるような設備はあるのかしら?」
三人の反応をスルーしてアレクシスに質問してみました。寝床がないとやってられません。ですが何故か自室だけ無事だったのでまあ良いのですが、男四人に女二人はちょっと……。
まああのベッドなら二人どころか三人でも四人でも寝れそうですが。
「いえ、人間共に殆どを奪われたと思ってもいいでしょう。ここは寝れるどころか埃も大層溜まっていますし……」
確かに、この執務室や私の自室ですらたくさんの埃が溜まってましたからね。ではどうしましょう。
さすがに埃が溜まったところで寝たくありませんし……。
「アンジェリーナ様の自室は無事でしょうが、ミリアに掃除させましょう。宜しいですね?」
「はい、畏まりました」
「え、ちょ」
「クロード殿とフェリクス殿とクリストフ殿の寝床は自分で掃除させましょう。掃除道具は後で渡します」
「ア、アレク」
「ああ、クリストフ殿は簡単なものを調理して夕餉の支度をしてくださいますか?食材はこれも後で渡しておきます」
「アレク!」
「はい、何ですか?アンジェリーナ様」
「…………」
一気に脱力感が湧いてきました。指示を出す姿に何だか監督のような感じですごく堂に入ってますね。あ、元々はこの城の総監督という名の執事でした。
そういえば、客室やらの部屋は殆どの設備が無いのに、何故私の部屋だけ無事だったんでしょうか?私が起きた時は埃と壁の色やベッドの生地が古くなって色が落ちただけでしたし。
そんな疑問をアレクにぶつけてみました。
「ああ、それは私がアンジェリーナ様のお部屋の扉に不可侵の魔法を施したからですよ。あれは私か私より強い者でなければ入れないようになってました。今はアンジェリーナ様がいらっしゃるのでもう解除してあります」
…私は本当にアレクシスには頭が下がらない思いです。こんなことまでしてくれていたとは……しかも500年も。何かしてあげたいのに、何もしなくていいという彼にムッとします。
ゲームでは無表情だった彼が今では微笑んでいる彼の表情をもっと見てみたくて――ちょっとだけ悪戯を思いついてしまいました。
今この部屋では私とアレクシスしか居ない(他の四人はそれぞれアレクシスから受けた仕事で出て行きました)ので丁度良いです。
じっと彼の顔を見ていると扉に向いていた視線がこちらに向けられました。そのままススス、と近付くと少しだけ戸惑ったような表情になりました。
そのまま目の前でじーっと顔を見て――ぎゅうっと抱き着いてみます。おお、固い胸板に大きな背中ですね。さらに彼の灰色のベストの下に手を入れてこしょぐってみました。
私の行動に戸惑い、困惑していた彼が服の下に手を突っ込んだ瞬間大きく目を見開いて硬直してしまいました。あら?反応がないことに首を傾げてしまい、彼の身体から離れてみましたが、目を見開いたまま氷のように固まってしまってました。
目の前で手を振ってみても反応はなく、尖っている耳をちょいちょいと引っ張ってみましたがこれも反応ありません。
うーん……悪戯、しすぎましたかね?
私としては子供相手にやるような感じでしたが……どうやら私の行動に驚いて固まってしまったみたいですね。
このまま居るのもなんですし……。
結果、静かに部屋から退出しました。
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そのまま広い大きなテーブルがある食堂に行って夕餉を食べてきました。最初は慣れなかったここも今では一人でもそもそと食べれましたよ。
それにしても美味しかったですね。さすがに豪勢とまではいきませんでしたがある程度の食事量で丁度良くお腹がいっぱいです。
満足したところでクロードとフェリクスを探しに行きました。色々と客室を調べていたらある一室に私服に着替えた二人が倒れていました。
よくよく見ると床には汚れが一切なく、何処か埃っぽかった空気が一新したようです。この短時間で良く頑張りましたね。
思わず拍手を送りましたが、二人とも反応がないです。疲れて寝てしまったんでしょうか?
さすがに床で寝るのは辛そうなので、左右の壁際にダブルベッドを創造し、重力魔法で二人の身体をその上に置いて、寝かしました。一仕事終えたような気分で私は自分の部屋に戻っていきます。
部屋に戻ると埃っぽさがなく、壁や絨毯の色味が戻って元の部屋に還ってきた感じです。寝室に向かうとここも新しくなったようで、ベッドのシーツも新しい物に替えられていました。
流石ミリアレーヌです。
そろそろ眠くなってきたので寝ちゃいましょうか。……あ、そうだ。一度やってみたかったあれをやってみましょう。
ふふふふと口元を曲げて笑み、私はある計画を脳内で建てていきました。
誤字・脱字がありましたら教えてくださると助かります。