表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/7

閑話 神話の歴史&アレクシスの誕生

またまたちょっと長いです。あと回りくどい言葉が度々あります。

話をちょっと変えました。



ある日、一人の神がベルセルクという世界を創造し、大陸という名の大地を創り上げた。

そして幾千年の年月を経て大地に緑が芽吹き、大海原が創られたと同時に地が二つに分断され(この時点で人間界と魔界とに分断されていた)、その頃には原始生物が生まれた。


そうしてまた幾千幾万年もの長い長い歳月が経った頃、生物の中に知能に優れた生物が生まれた。

これが後に人間と呼ばれる。


人間は段々と数が増えていき、大きな集団が出来たら分裂し合い、一つの大陸の殆どが人間に開拓されていった。

しかし何時しか統率が取れなくなり、気付けば誰が頂点に立つかという激しい覇権争いが生まれ、人間同士の殺し合いを始めてしまう。


そんな最中(さなか)に、一人の赤子が産まれた。だが、それは通常の人間より一際変わった姿をしていた。

明るい色素を持つ両親とは全く異なる土気色の肌、周りにはない尖った耳、純然たる黒の髪、血の色を思わせるような紅い瞳という、周りから見て奇異な色、形を持った赤子が生まれ、周りは勿論の事、その赤子の両親も気味悪がり、産んで直ぐ捨ててしまった。


人間の覇権争いで悲しんでいた心優しい神はその事で更に哀しみ、赤子をそのまま捨て置けなくて、そしてある考えに思い立った神は直ぐに地に降りて赤子を拾い、人間のいないもう一つの大地――魔界で赤子を育む事を決心したのである。



神は先ず人間が魔界に立ち入らぬように、2つの大陸の間に巨大な壁のような霧を覆わせたのである。

そうして神は一人の赤子を自分の子とすることに決断した。自身を赤子とほぼ同じ容姿に創り上げ、この魔界で赤子と二人生きていくために、獣――この頃には既に魔獣が蔓延っていた――が跋扈する鬱蒼とした森の中に絶対的安全区域、つまり神域を創り赤子とともにそこで暮らしていった。



十数年経た頃、赤子は青年となり大人の姿にはなったが、神は青年の番となる者がいないことに案じて、自身を分裂し、その半身を全く別の存在に創り上げて拾い子として連れ帰り、年月を掛け無事に青年の(つがい)となった。

神は安心して二人に神域としていた場所を渡し、元の場所へ帰っていった。


そして時は過ぎ、二人の間には二人に似て非なる存在――男の子が産まれた。それは両親の色が混ざったように、将又(はたまた)色が抜けたような容姿だった。

父親からは紅い瞳の色と尖った耳を、母親からは蒼い瞳の色と母親と殆ど似た容姿を受け継いだ。

髪の色はどちらにも似ない、色素が全くない真っ白な髪だったが、瞳の色は二つの色を混ぜたような不思議な、だが神秘的な色で両親の顔を映していた。


この赤子が魔族の始まりである。




その後数千数万もの時が過ぎ、魔族は人間より深い思慮、高尚なる叡智、強靭なる身体、そして神より授かった大きな力――魔法を魔族の誰もが使えるようになり、長い年月で魔族も十分な数になった。

ある者が、一個一個の魔族が強くてもある程度統率は持った方が良いという事で、魔族の中で特に力が強い者が王に就き国を造り上げることになり、そこで様々な議論が行われた。

魔王一人だけを畏敬するのは良いが、魔界全ての事態の負担を負いきれるかどうか 、ということで激しい論争になった。

そうして結論が出されたのは、魔王を三人据える、ということ。


長い年月に様々な者が競い合い、そうして三名が魔王に就くことになった。

その者達の名前は、



アンジェリーナ・ヴィンセント

リオン・ガンドロフ

ユリウス・ベルフォート



彼の者達は魔族の中でも殊更力が強く、極めて聡慧であり、魔族の上に立てる者だった。

特にアンジェリーナ・ヴィンセントは、始祖の特徴でもあった紫の瞳を持つ直系と言われ、その瞳を持つ者は彼女以外存在しなかったのだ。

そのおかげか王位に就いた彼女に反抗する者は微塵もいなかった。他の二名の魔王は力尽くで服従させたのだが。


それから何年か過ぎ、最大魔王が十名ほど就いた頃の世は全くと言っていいほど騒ぐ者はおらず、小さな小競り合いすらもなく、平和な世が続いた。



――だがそれは束の間の平穏。ある日、突如として魔界の国々に張っていた其々(それぞれ)の結界が消えてしまう。結界は魔王自身が常時張っているもの。

魔王に何かあったのかと近侍の者はすぐさま魔王の姿を探すが、何故か何処(どこ)にもおらず魔王の魔力を探しても見つからず、雲隠れどころか存在すら消え去ってしまったかのようで魔界の国々は混乱し、更には有能な者達も消えて互いの国が疑心暗鬼になってしまった。


そんな時、魔族同士が争うという情報ではなくまさかの人間が魔界に攻め入ってきたという情報が入り、その情報で国々の間に動揺が生まれ広がり、対策する間もなく魔族が人間に惨殺されたという更なる情報で魔族は混乱した。


その間にみるみる魔族が殺されていき冷静になった頃には、魔王や消えた者達も含め既に半数程度になってしまっていた。見つかったら殺されるということで誰も良い打開策が浮かばずに時間が経過していったのだった――。


そうして500年経った今、漸く魔王の一人が帰還し、また新たに歴史が刻まれようとしていた。



『さあ、新たな歴史を始めよう』




********




あの方がまだ魔王に就く前、ギルドハンターをしていらした頃のことです。

私が<私>という思念を持ったのは、あの方の言葉が始まりでした。



「やったぁ!漸く完成したわ!」


何もない真っ黒な世界の中、何かの音が脳に響き、それが言葉だと理解するまで暫くの時間を要しました。声は間近に聴こえ、私は何故か先程の鈴を転がすように響いた清音をもう一度聴き入れたいと思いました。


そうすると真っ黒な世界が徐々に冴えていき(まばゆ)い程に白くなって、思わず瞬き(・・)を繰り返すと、そこには先程感じたものより更に耀き、何物にも染まらない白銀の髪を流しながら、こちらを見つめ揺るぎ無く、また確固たる意志を持った不思議な、いえ、神秘的な紫の瞳を持ち私に微笑む女性がいました。


「おはよう」


ぷっくりとした膨らみを持ちながらも潤った唇が開いた瞬間、先程と同じ声が耳に届きました。思考が及ばずに茫然としていると、再び彼女の声が脳に響いてきます。


「聴こえてる?」


耳飾りをシャラと奏でながら首を傾げる彼女に何とか肯定してみせると、まるで花が綻ぶかのように微笑んだ彼女に、一瞬ですが動悸が一際激しくなりました。これは、何でしょうか。


「私はアンジェリーナ・ヴィンセント。貴方を創り上げた者よ」


彼女の言葉に再び動悸が激しくなりましたが、またすぐに治まりました。これが何なのかは後で考えましょう。私を創り上げた、ということは彼女――アンジェリーナ様は私のご主人様ということになりますね。私は了承したように再び肯定します。


「貴方の名前はもう決めてあるの。――アレクシス。今日からよろしくね」


名前を呼ばれた途端、私は考える間もなく、無意識に次の動作に移ってました。アンジェリーナ様に一歩近づき跪いて彼女の手を取り、自身の額を彼女の手の甲に着け、まるで既に決まっていたかのような言葉を私は抑揚もない声で呟いたのです。


「……貴女をご主人と認めます。どうぞこれからよろしくお願い致します」



――――これが、私とご主人様の出逢いとなりました。





その後、アンジェリーナ様の自己紹介で彼女はギルドハンターということが分かりました。

服装を見てなかなか稼いでいることが窺えます。ですが、次の言葉で大層驚くことになりました。


「私より貴方の服装を決めるのに苦労したわぁ。あ、いずれ貴方専用の武器も買うから少し待っててね」


私は自分の服装を見ると主に黒一色ですが、上質な黒生地の裾が鋭い燕尾服、純白のシャツに黒ネクタイを締め、黒に近い灰色のベストを着込み、袖にはレッドスピネルを使ったカフスボタンできっちりと留められ、手には真っ白な手袋、すっきりとした純黒のズボンを穿き、艶々と滑らかなフォーマルシューズを履いていた。

この服装でしかも随分と上等な生地で作られた執事服だと分かりました。更には服全体に上質な防護魔法が掛けられているようなので、魔族なら誰でも出来る『ステータスの表示』を見てみると。



『 アレクシス Lve 1


HP(体力) 85000/85000

MP(魔力) 70000/70000

ATK(攻撃) 6000

DEF(防御) 8000(+90000)

MATK(魔法攻撃) 12000

MDEF(魔法防御) 9000(+90000)

AGI(敏捷性) 70(+50)→上限

DEX(命中率) 80

EVA(回避率) 70(+50)→上限


状態異常 なし

身分 アンジェリーナ専用執事兼世話係』


………………私の目の錯覚でしょうか。ゆっくりと瞬き、深呼吸をしてから上から下まで三回読み直しましたが……どうやら錯覚ではないみたいですね…………。

何故私がこんなに驚いているのかというと、初期ステータスが異常に高い事と、括弧(かっこ)内の+αも異常に高い事――恐らくこれは今着ている執事服のせいでしょう。そして身分についてですが……執事は分かるとして世話係とは……?


そんな私の疑問にアンジェリーナ様が答えてくださいました。


「アレクシス、貴方にはこの家の管理をして貰うわ。それから私の身の回りの事も」


身の回りの管理……ですか?


「そう。と言っても家事をしてもらうだけよ。私は朝から晩までギルドの仕事で家に居ないので、貴方に家を管理して貰おうと思って」


家の管理と、家事だけですか?他はないのですか?


「え?特にないけど……」


……それならハウスキーパーで良かったのでは?


そう思っても、私の口からは「畏まりました」という言葉しか出ません。

決まり事のように勝手に開く言葉に違和感を感じましたが、その程度です。


ハウスキーパーとは、この世界で家を持つ者のみが使える魔道具です。金は掛かりますが、家の掃除に料理洗濯を誰も居ない家に自動でやってくれるという便利な魔道具です。一個に一ヵ月しか持ちませんが。


正直言って少しだけ不満でした。私を創ってくださったアンジェリーナ様にはとても感謝しておりますが、仕事はハウスキーパー代わりということに(わだかま)りの気持ちを持ってしまいます。

実は一年分のハウスキーパーを買う金額より、私のように魔族に付き従う魔族を創る元手の金額の方が倍以上で、更に主人となる方の膨大なる魔力が必要なのです。

ですので少々不躾だとは思いましたが不満をぶつけてしまいました。私にこれだけの強さを与えておきながら全く使わず護衛にするわけでもないアンジェリーナ様に。


しかし不満を口にしたわけでもないのですが、アンジェリーナ様は言い訳のように早口に喋り始めました。


「ごめんね。ハウスキーパーのようなことをさせて。でも私はただ、普通の家庭にある、暖かみがある家……ううん、家族のような存在が欲しかっただけなの。ハウスキーパーは人の気配がしないでしょう?」


その言葉にハッとし、息が詰まりました。ただ、人の温もりが欲しかったという彼女の想いに胸が締め付けられるのに対し、先程まで自分が浅ましくも見苦しい考えを持っていたことに吐き気が致します。

……アンジェリーナ様に軽く扱われ、挙句の果てには捨てられるのではと、心の底では恐怖していたのでしょう。


しかし、この御方がそんなことをするはずがないと、たった今理解出来ました。そして彼女に対し、申し訳なさと不甲斐無さが積もりました。

それでも、私の口はその言葉を口にすることはありません。


『そうでしたか』

「……これは私の勝手な想い。気に障ったらごめんなさいね」


この御方は何処まで心が広いのでしょうか。それにとても情の深いお人だ。

……この御方に創ってもらって良かったと、傍に居て良かったと思いました。同時に、一生この御方に付いて行きたいとも。


この先アンジェリーナ様に何が起ころうとも彼女に順じ、手となり足となり、また盾になろうと決めた。

この御方の心身が休められるように、心温まるようにすることが私の役目なのだから。






誤字・脱字がありましたら教えてくださると助かります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ