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二話

少しだけ加筆、修正しました。一部編集しました。



「……?」


光を感じる。瞼を開くと、豪華な模様の壁が見える。いえ、これは天井ですね。私が横になってました。

いつも通りのログイン。≪ベルセルク・ワールド≫では自分の家、自分の部屋と決めた部屋からログインし、ゲームを始めることが出来るのです。

私が寝ていた場所は私の寝室の天蓋付きベッド。外は明るいのですが、天蓋付きベッドについているカーテンであまり眩しく感じません。

手で体を支えながら起き上がって伸びて深呼吸をすると、どこか違和感を感じました。


「……あれ?」


自分の身体が何処(どこ)か可笑しいですね。何が、と言われると具体的には言えないのですが……。

自分の身体に目を向けると、いつも通りの服装を纏っていることは分かります。

ですが何か変な感じがして触れてみると、やっとその正体が分かりました。


「感触がある……」


そうです、服を触ってみると布の感触があるのです。それどころか自分の身体を触っている感触が分かるのです。これは有り得ない(・・・・・)ことなのに。


どうして、とぐるぐる思考を繰り返していた時、ピロリンという音が聞こえました。


この音はゲームの公式からの通知音です。少し頭を上げると、そこにはいつも通り緑色の透けた画面のようなものが浮かんでました。勿論触ることは出来ません。

その画面には以下のようなことが書かれていました。



『 ベルセルク・ワールドへようこそ!

 と言っても、ここはVRMMORPGのベルセルク・ワールドとは少し違います。ゲームでは五感の内の触覚、嗅覚、味覚は遮断されていましたが、ここではそんなことはありません。この世界で死ぬと生き返る事もありません。まさにサバイバルです。しかし、設定やゲーム内であった貴方自身のステータスはゲーム時となんら変わりません。アイテムボックス、所持金もそのままです。貴方でしたらこの世界で難なく生きていけるでしょう。


もう一つ重要なことですが、只今の貴方の状態は体験版として参加している形です。この世界に参加した場合、元の世界に戻ることは不可能です。この世界で生きることで不老長寿になり、何千年と生きることになります。それが承認出来なければ、今でしたら現実世界に戻ることは可能です。どうしますか?   承認/拒否』



「……」


突然の事で茫然としていましたが、徐々に文章の意味を理解していきました。

元の世界に戻ることが出来ない、と書かれてはいましたが何も問題はありません。親や友達の存在が少し気になりましたが、私にとってあの世界は、地獄です。


一日の半分をVRMMOにあててひたすら没頭していた私ですが、そんな私の一日のもう半分は病院生活なのです。半身不随で生涯治ることはないと医者に断言されました。

夢も希望も、未来さえありません。元の世界の私は、自由に身体が動かせられるあの『ベルセルク・ワールド』が生き甲斐だったのです。


そんな私に、こんなチャンスが降ってくるなんて。涙が出そうになりました。

涙を拭き、覚悟を決めて『承認』を押します。するとまたピロリンと音がし、先程の文が消えて新しい文が更新されました。



『 承認されました

 それでは、改めてベルセルク・ワールドへようこそ!

 この世界ではゲームの設定から500年もの年月が経っており、魔族の存在が昔より1/3ほど減っています。魔王の存在は500年前に突如として消え去ったことで、魔界が混乱に陥っていた時に人間が魔界を制しようと軍を編成し、見つかり次第魔族が滅ぼされました。そして今では人間が魔界に蔓延っています。それをどうするかは貴方次第です。


 イベント通知にあった召喚チケットをアイテムボックスに10枚贈与しておきます。注意点は、召喚チケットはVRMMOのユーザーを連れてくることで消費され、召喚された者は、貴方と同様現実世界に戻ることは出来ません。よく考えて召喚してください。

 しかし、召喚するユーザーに事前に確認することは出来ます。ただし一人一回だけです。


 他に気になることがあればステータス画面の右下のお問い合わせに申込みください。      ≪ベルセルク・ワールド≫製作者』



なんという親切設計なんでしょう。親切すぎて何か裏があるのでは?と勘繰りたくなってしまいます。まあそれは置いといて。


体を動かしてベッドから降り立ちます。現実世界にはなかった生きてるという実感が湧き上がってきました。一人ではベッドから降りることもままならなかった生活とはおさらばなのです。とても感慨深くなります。




さて、先ずは城を探索しなければいけませんね。言ってませんでしたが私の住んでいる場所は魔界にある十ある内の一つの魔王城です。今は他の城はどうなってるか分かりませんが、私の城は無事なようで良かったです。


さて探索を、と思いましたが、私の状態を確認しておきましょう。寝室から出てお風呂部屋にある鏡で自身の姿を確認します。


艶のある長い白銀の髪は腰まであり、その髪の下から出ている耳は長く尖っており、右耳だけシャラシャラと涼やかな音がする耳飾りを着け、肌は雪のように白い。

全体的に色味は薄いように見えるが、アメジストのように煌めき、色の深い紫の瞳が鮮やかで強烈な印象を相手に刻む。パッチリとした二重瞼で、鼻筋はすっきりとしており、唇は小さいが桜の花弁のような色合いでプルプルと潤っている。

それが綺麗に卵型の縁取りに収まっており、見目好い造形をしている。


身長は160㎝程。身体はバランスの良い均整が取れたもので、余分な肉がない。胸の余分な肉は多いけれど。身体には瞳の色と同じ紫色で、袖の先が広がっているスリーブのエンパイアラインのドレスを着ていた。


うん、いつも通りですね。実を言うとこのドレス、装備です。ええ、装備なのです。大事なことなので(ry

防御力は女性用防具の最大値を誇り、ステータス上昇、状態異常無効、そして装備が壊れる、破れることはないというチートな防具です。

しかも毎日自動で清浄魔法がかけられるので洗濯要らずです。便利すぎですね。なのでこのドレスが手に入ってからはこれしか着てません。



そういえば、今更ながらに自己紹介してないことに気付きました。一応元の世界での名前も言っておきましょう。

元の世界での名前は小倉(おぐら) 杏奈(あんな)、もうすぐ25歳でした。

そして≪ベルセルク・ワールド≫での名前はアンジェリーナ・ヴィンセント、レベルは999です。


ゲーム内での歳は分かりませんが、元の世界とゲーム内での時間の軸が全く違い、元の世界では12時間でしたが、ゲーム内では二日もの時間が経っていましたから……ゲーム内の時間で言えば30年以上もプレイしていたのですね。しかも今現在500年経ってますから…530歳以上、ですか……。

ま、まあこれからは何千年もの間生き続けるのですから、これからです。これから。

それから名前はやはりアンジェリーナ・ヴィンセントで行きましょう。こちらの方が馴染み深いですし。



ステータスも見ましたが、特に身体に異常はないみたいです。ゲーム内でもあったように、『ステータス』と思い浮かべば先程と同じ画面が出てきて、私自身のレベル、経歴、体力、魔力等、更に所持品や所持金も見れます。

所持品は『アイテムボックス』という亜空間に入れてありますので、これも『アイテムボックス』と思い浮かべば亜空間の入り口が出現するので問題なしです。


よし、身の周りはバッチリですので今度こそ城の探索に行きましょうか。

人間が魔界に侵入し、制圧されていったと書かれてましたが、私の国はどれほどの被害があったのでしょうか。まずは調査ですね。



3時間程で漸く城を探索し終えたのですがどうやらあまり被害はなく、もぬけの殻になって500年もの月日が経った、という感じでしょうか。

でも城の内部は装飾品などの価値のあるものが殆どなくなってました。

多分人間が強奪していったんでしょう。許すまじ人間。


ですが、あまり金品や財宝は置かないように、というかそんなものは即座に売って貯金してましたからあまり被害は無かったですね。


それよりも、内部より城外の方が問題です。城は構造も外観も適度に重視して、白く美しい外観で白い煉瓦で統治された上に防護魔法が施されていたのですが、500年経った今では長い年月で硬くなった蔓が城を覆っていて、防護魔法も消滅し煉瓦も変色し、腐敗してボロボロという酷い有様でした。

更に酷かったのは庭に植えていたあの美しかった白薔薇園が見る影もありません。

あれだけ年月かけて美しく育てていたのに、この仕打ちはあんまりだと泣きたくなります。


とりあえず城を覆っていた蔓を火の魔法で一瞬にして消滅させました。勿論焦げ跡なんて付けさせません。……鬱憤晴らしではありませんよ?ええ。


まあ城の防護魔法や白薔薇園は一旦そのままにして、次は城下町です。

大通りに行ってみたのですが、ここでも人の気配はなく、閑散としておりました。あれだけ熱気があって賑わせていたのに……。物寂しいものですね。

ただ、あまり荒れた様子は無かったので、修繕すればそのまま使えそうです。けれどそれも時間がかかるでしょう。



溜息を吐きながら城に戻ると、何やら人の気配がします。見た限りこの辺りでは私だけのはずでしたのに。

強盗でしょうか?ですが、先程言った通りこの城はもう殆ど何もありません。怪しいので気を付けて行くことにしましょう。


気配を探っていくと、何故か上階にある私の執務室の前に着きました。探索した時に確認しましたが、ここには私の執務机しかないはずです。どういうことでしょうか?

気配を殺し、音を立てないようにドアを少しだけ開いて中を覗いてみました。

そこには--。


私の執務机に向かってただ姿勢良く立っている後ろ姿が見えました。本当にただ立っているだけです。何もせずに。

ただそれだけなのに、何故か息が詰まりました。

そしてじっとよく見ると、その人(というか魔族?)は真っ黒の燕尾服を着ていることに気が付きました。

短い髪の毛も漆黒で、私と同じく耳が尖っており、素肌は首の後ろと耳しか見えませんが褐色で、身長は私の頭一つ分よりも高く、背筋もピシッとして少し筋肉質のようでまだ若いことが見受けられます。私よりは年上に見えますが。


何処かで見た気がして思わず首を傾げると、耳の飾りがシャラン、と音をたててしまいました。

すると瞬時に燕尾服を着ている方がこちらを振り向き、酷く驚いたように目を見開きました。紅蓮の瞳をこちらに向けて。


その瞳から逸らせずに私は見覚えのある魔族の名前を、無意識に声に出していました。



「アレクシス……?」







誤字・脱字ありましたらご報告お願いします。

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