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第二話 黒髪の少女

前回の話を読み返してみて、終わり方がちょっと気に入らなかったので、一話の最後の方を二話の初めに持ってきました。



牢屋に捕らえられていたところ、突然洞窟の中から現われた黒髪の少女。

見た感じだと同い年くらいに見えるが、実際のところは如何なのかはよく分からない。

薄暗い洞窟には余りにも似つかわしくない少女だが、俺は彼女の美しさに心惹かれていた。


「ん? アンタ、そんなところで何してるのよ」

「ぁ、いや……見ての通り捕まってるんだが」

「変ねぇ……私が聞いた情報だと、オーク達に捕まった人間は居ない筈なんだけど」


彼女に取って俺の存在はイレギュラーなのか、黒髪の少女は不思議そうな顔で俺の事を見てくる。

他人にジロジロ見られるのに抵抗を感じ、俺は思わず後ろに後ずさりしてしまう。

それを察知した彼女は、何を思ったのか両手の銃を腰のホルスターに仕舞い、牢屋へと近付いて手を差し出してきた。


「はっ? あ、その……」

「動かないでジッとしてなさい」


彼女にそう言われた俺は、何をされるのか分からないまま、その場から動けなくなる。

俺が動かなくなると彼女は俺の顔に手を添えて、聞こえるかどうかの小さな声で意味不明な言葉を紡いだ。

その言葉が何を意味するのか分からず、なんとなく彼女に聞こうとしたその時、俺の体を淡い光が包み込んだ。


「な、なんだこりゃ?!」

「ただの回復魔法よ。直ぐに終わるからジッとしてて」


突然の出来事に驚く俺だが、彼女の言う通り光は直ぐに収まり、さっきまであった痛みが嘘の様に消えていた。

驚いた俺は確認するかのように額を袖で拭うが、今度はさっきとは違い袖に赤い液体が付く事はなかった。


「あの怪我が一瞬で治るなんて凄いな……」

「初歩の回復魔法だし、別に凄くともなんとも無いわよ。……それじゃ、怪我も治してあげたし私はもう行くわ」

「……へっ?」


俺の怪我を治して満足したのか、黒髪の少女は気楽そうに別れを告げて部屋から出て行こうとする。


「ち、ちょっと待てーい!」

「何よウッサイわね。私はアンタと違って色々と忙しいのよ」

「忙しいところ引き止めて悪かった。でも、この牢屋から出してくれても良いだろ。てか、せめて鍵をくれ!」

「……アンタ、其処から出られないの?」

「出られたらこんな事頼んでないだろ……」

「そうれもそうね。でも、アンタを助けても何のメリットもないしなぁ~」

「うぐッ。それを言われると確かにそうなんだが……」


黒髪の少女は顎に手を添えて、助けを求めている俺の事をジッと見詰めて何やら思案し始めた。

実際のところ、彼女に助けてもらったところで俺に出来る事なんて何もない。

見ず知らずの人間だし、怪我を治して貰っただけじゃなく牢屋から出してくれってのは、やっぱり虫のいい話なんだろうか。


「……まぁ、別に出してあげても良いんだけどね」

「ほ、本当か?!」

「ただし、一つだけ条件があるわ。それを呑むって言うなら其処から出してあげる」

「その条件ってのは? 先に言っとくけど、金とかは無理だぞ。見ての通り金銭は一切持ち合わせていない」

「んなの見れば一発で分かるわよ。私の条件ってのは……暫くの間、私に扱き使われなさい」


悪戯を思い付いた子供の様な顔で少女は言うが、思ってたよりも簡単な条件に思わず聞き返してしまった。

助ける代わりに多額の金を請求されるかと思ったけど、そんな事も無くてちょっとだけホッとしてたりする。


「…………そんだけ?」

「そんだけよ。…んで、如何するのよ。この条件を呑むの、呑まないの」

「いや、そんな条件で良いなら幾らでも呑むけど、何を企んでるんだアンタ」

「別に企んでないわよ。ただ、色々と扱き使える奴が欲しいなぁ~って思ってただけよ。それに女の一人旅ってのも結構大変なのよ? ちょくちょく野党なんかに寝込み襲われるし」

「そっかー苦労してるんだなぁー」

「……そんな風に適当な返事をするなら、其処から出してあげないわよ」

「すみませんゴメンナサイ出してください」

「宜しい。……んじゃ、危ないから格子から少し離れてなさい」


少女に言われた通り格子から離れると、彼女はホルスターの銃を抜いて発砲してきた。

いきなりの発砲に驚いた俺は耳をふさいで小さく屈むと、少女は数発だけ撃ったあとクルクルと回転させながら銃をホルスターに仕舞った。

銃声が止んだのを見て格子を確認してみると、南京錠が壊れ小さな戸が少しだけ開いていた。

俺はその戸から牢屋を抜け出し、凝り固まっていた身体を解すように大きく背伸びをした。


「ん~~~……っと。やっぱり牢屋の中に居るってのは良い気分じゃないな」

「普通はそうでしょうね。……それよりも、さっきの約束ちゃんと守りなさいよ」

「分かってるって。…俺の名前は『黒耀 武』ってんだ。アンタの名前は?」

「私は『レイナ・オルブライト』よ。ガンガン使ってやるから覚悟しなさいよ、コクヨウ」

「お、お手柔らかにお願いします……。あと、名前は武の方な。黒耀は苗字だ」

「そうなの? まぁ、なんでもいいわ。宜しくね、タケル」

「俺の方こそ宜しく頼むよ、レイナ」


レイナに笑い掛けながら、俺は右手を差し出して彼女と握手を交わした。

今後どうなるか分からないが、今は此処から脱出するのが先決だし、後悔するのは後からでも間に合うだろう。


「ところで、タケル。あんた、武術かなにかの心得はある?」

「武術って言うか、剣道なら小さい頃からやってるが……それが如何かしたか」

「ケンドウ? ……なんの事か良く分からないけど、とりあえず剣は扱えるのね。それなら十分だわ」

「いや、だから何が?」

「此処のオークたちを殲滅するよりも先に、まずはアンタの武器探しから始めないとね。それじゃ行くわよ」


レイナは一人で勝手に納得すると、そのまま収容所から出て行ってしまう。

俺は慌てて彼女の後を追いかけると、此処の出入り口の所に青い血を流して倒れている豚人間の姿が在った。

余りにも生々しい光景に俺は思わず眼を逸らし、どんどん先へと進んで行くレイナの後を追いかける。

体格の大きいオークが棲んでいるからか、洞窟は奴等が通り抜けるには十分な広さはあるが、戦うにしては少々窮屈と言ったところだろうか。

こんな所で奴等を鉢合わせなんてゴメンだし、出来るだけ奴等を遭遇しない事を祈っておこう。


「……あ~レイナ、一つ聞いておきたい事があるんだけど良いか」

「ん? なによ? 此処は既に敵陣の真っ只中なんだから、のんびりお喋りしてる暇は無いわよ」

「お前の職業って一体なんだ? こんな所に居るんだから堅気の人間じゃないんだろ」

「私は流れの賞金稼ぎよ。言ってなかったかしら?」

「言ってないし、聞いてない。……てことは、さっき聞いてきた武術云々ってのは―――」

「アンタにも賞金稼ぎを手伝ってもらう為よ。大丈夫、使えないと判断したら直ぐに捨てるから」

「全く安心できねぇよ!!」


レイナの非情な言葉に、思わず大声を出してツッコンでしまうと、狭い洞窟と言う事もあって声がかなり反響してしまった。

山彦の様に声にエコーが掛かって、少しずつ声が遠のいていくかと思ったら、今度は地響きの様な音が洞窟の奥から聞こえてくる。

光源が篝火だけと言う薄暗い洞窟の中、俺は音が聞こえてくる方に目を凝らしてみると、暗がりの向こうから五体ほどのオークの姿が見えた。


「あ~もう来ちゃったのか。全く、アンタが大きな声を出すから」

「それは悪かったけど、そんな暢気な事を言ってる場合じゃないだろ!」


呆れながらに呟くレイナを他所に、俺は彼女を庇おうと前に出ようとするが、手元に武器になりそうな物がない事を思い出し、その場で留まった。

戦う手段のない俺が前に出たって足手纏いに為るのは明白だが、こんな狭い通路じゃ後ろ以外に逃げ場なんてない。

この状況で如何したものかと考えていると、レイナが俺を庇うように前に出て、腰のホルスターからシアン色の大型装飾銃を抜いた。

銃の形状としては大型のオートマの様な銃身に、リボルバーの様なレンコン状のシリンダーが付いた物なんだが、その大きさが少々異常で女性が片手で持つには大き過ぎるサイズだ。

男でも両手で扱うようなサイズなのに、レイナはその銃を軽々と片手で構え……前方からきているオークたちに向けて発砲した。


―バンッ!―


洞窟内に発砲音が響き渡ると、レイナの拳銃から放たれた弾丸は一番前のオークの頭部に命中し、一撃でそのオークを絶命させる。

一番前のオークが倒れた事で後続の連中の足が止まり、如何見ても致命的な隙が生まれた。

奴等の足が止まっている間に、レイナは立て続けに四発もの弾丸を撃ち、残っていたオークを一掃してみせた。

残りのオークが地面に倒れ伏せたのを見て、レイナは銃のシリンダーを左横に降り出して、装填されていた弾丸の薬莢をその場に全て捨てた。

鮮やか……と言って良いのか分からないけど、彼女が見せた銃の業の俺は思わず関心してしまった。


「……レイナって、思っていた以上に強いんだな」

「このくらい如何って事無いわ。独り旅を続けていれば嫌でも身に付くもの」

「そうだとしても、やっぱりスゲェよ。剣一筋で生きて来たから、あんな技術があるなんて思いもしなかった」

「少し褒めすぎな気もするけど……悪い気はしないかな」

「でも……死体は見慣れて無いから、あの光景は結構堪える……」

「其処は早く慣れてもらわないと仕事に為らないわね。…ほら、何時までも喋ってないで先に進むわよ」

「へ~い……」


何時の間にか弾丸の再装填も終わっていたのか、レイナは銃をホルスターに戻すと先へと進んで行く。

俺も彼女の後を追いかけて進むけど、やはりオークの死体を直視するのは結構辛いものがある。

胃から込み上げて来る何かを無理やり飲み込みながら、俺はレイナに続いて洞窟の奥へと進んで行った。





………

……


薄暗い洞窟の通路を進んでいると、出口の近くで突然レイナが壁際によるように手で指示してきた。

俺は彼女の指示に従って壁際によって屈むと、通路の先の広い空間に数体のオークたちが居て、その中でも一際大きな体格のオークが家宝の剣を玩具の様に振り回しているのが見えた。


「あの野郎ッ!」


その光景を見て一瞬で頭に血が上った俺は、立ち上がって殴り込みを掛けようとしたが、レイナに無言のまま止められてしまった。


「止めるなよレイナ。あの剣は俺の家の大切なモノなんだ」

「そうなの。でも、今のアンタが殴りこみを掛けても殺されるだけよ」

「グッ……」


レイナの言う通り、格闘技の取り得も無く何の武器も持たない俺が殴りこんだって、アイツ等に嬲り者にされるのは眼に見えている。

彼女に諭されなくても分かってはいたが、はっきり言われると流石に堪えるものがあるな。


「それが分かってるなら大人しくしてなさい。私がチャンスを作ってあげるから」

「……チャンスって、一体何をする心算だよ」

「私が先に飛び込んで隙を作るから、後は自分で何とかしてみせなさい」

「随分とアバウトな作戦だなオイ」

「コッチとしては、アンタに先に動かれると邪魔に為って困るのよ。自分でも分かっているなら言う通りにする」

「……………」


少々癪に障るが、今の俺は彼女に取って足手纏い以外に何者でもない。

そんな奴が偉そうに文句言っても時間の無駄だし、此処はレイナの言う通り彼女が隙を作ってくれるのを待とう。


「……分かった、宜しく頼む」

「それで良いのよ。んじゃ、大人しくして為さいよ」


そう言ってレイナはホルスターから二丁の銃を抜いて、広間へと飛び出していった。

突然の乱入者にオークたちは驚きを顕わにするが、レイナはそんな事お構い無しに構えた二丁の銃を乱射する。

洞窟の中で何度も発砲音が響き渡るが、先程とは違いオークを一撃で仕留めると言う事は無かった。

乱射していたレイナが弾丸を撃ちつくすと、オーク達は反撃と言わんばかりに自身の武器を手に、一斉にレイナに襲い掛かり始めた。

大きな体格のオークも例外ではなく、家宝の剣を叩き付ける様に地面に突き刺し、壁に掛けていた大きな斧を手にレイナへと向かう。


「タケル、今よ!」

「ッ!!」


レイナの合図を受けた俺は矢の様に駆け出し、オーク達の事など目にもくれず、一目散に下方の剣の元へと向かう。

体格の良いオークは直ぐに俺の事に気付き、手にした斧で俺の事を薙ぎ倒そうと振り払ってくる。

俺は前に転がるようにしてその一撃を回避し、なんとかオークの横を通り過ぎ、剣の柄に手を掛けて地面から引っこ抜いた。


「よっし、回収っと!」

「それじゃ、そのデカイのはアンタに任せるから、後は頑張りなさい」

「嗚呼、任せろ……ってデカイの?」


嫌な予感がする中、恐る恐る後ろを振り返ってみると、先程のオークが怒り狂ったような顔で俺の事を見ていた。

その様子に思わず顔が引き攣ってしまうが、オークはそんな事お構い無しに斧を振り下ろしてきた。


「うぉっと?!」


振り下ろして来た一撃を後ろに跳んで回避するが、オークは斧を闇雲に振り回して襲い掛かってくる。

体格も良い上に見た目通りのパワーがあるのか、斧が風を斬る音はかなり大きく、一撃でも当たったら只では済まないだろうと予感させる。

レイナは残った敵を殲滅していて、さっきの連射ほどではないが、かなりの弾をばら撒いている。

弾を撃ち尽くしたら素早くにリロードして、オーク達を手早く次々と片付けている。


俺は剣道で培った経験を活かし、なんとかオークの斧を避け続けていると、背中に硬いモノが当たり、何時の間にか壁際まで追い詰められていた。

壁にまで追い詰められ逃げ場がなくなると、オークは斧を両手で握り渾身の力を込めて振り下ろそうとしてくる。

もう後ろに下がることは出来ず、左右のどちらかに逃げたところで斧の一撃で切り伏せられる。

これ以上逃げ場がないのならと開き直った俺は、前に飛び出してオークの脇を通り過ぎようとする。

俺が飛び出した直後にオークは斧を振り下ろして来るが、間一髪のところで難を逃れ奴の背後に周り込んだ。

オークは直ぐに振り向いて、その勢いのまま斧を振り回してくるが、行動を起こすのが一歩遅かった。


「貰ったぁッ!!」


俺は裂帛の気合を込めて剣を振るい、オークが斧を振り回すよりも早く奴の胴を薙ぎ払った。

手には肉を斬り裂いた確かな手応えが伝わり、剣で薙いだ胴からは青い体液が噴出し、俺の体に降りかかった。


「ぷぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!!」


斬り裂かれたオークは断末魔の悲鳴を挙げて地面に倒れ、暫く痙攣していた後にピクリとも動かなくなった。

オークが絶命した事を認識した俺は、その場で腰を抜かし座り込んでしまった。

今まで平和な世界で生きていた所為だろうか、こういった状況に対する耐性が全くと言って良いほどない。

本当に今更ながら、とんでもない世界に迷い込んでしまったものだと、思い知らされてしまう。

やらなければやられていた、そんな事は頭では分かっているんだが、今回が初めてと言う事もあって中々に堪えるものがある。

俺が呆然とオークの死体の前に座り込んでいると、横から薄汚れたタオルが差し出された。

一体誰だろうと横を確認してみると、少し心配そうな顔をしているレイナが居た。


「……………」


無言のまま彼女からタオルを受け取ると、レイナも何も言わず俺の隣りに座り込んだ。

俺は横のレイナに対して何も言わず、受け取ったタオルで体に付いた青い液体を拭き始めた。


「……アンタさ、こう言うのって今回が初めてなの?」

「まぁな。俺のいた国じゃ、こんな化け物なんて存在しないからな」

「その割には吐いたりしないのね」

「気を抜いたらそうなりそうだが、なんとか我慢してる」

「そうなの。……随分と無理するわね」

「ほっとけ」


体液を拭き終わり、タオルをレイナに返すと彼女は汚れたタオルを捨ててしまった。


「……良いのか」

「別に構わないわ。元々汚れていた物だし、タオルくらい安いものよ」

「ふ~ん。……さっきの連射みていて思ったんだが、レイナって散財するところがあるだろ」

「ど、如何して分かったのよ?! その事はアンタに伝えてない筈よ!?」

「弾丸だって安くはないのに、アレだけ連射してればそう思われても仕方が無いだろ」

「む、言われてみれば確かにそうね。これでも控えめに撃った心算なんだけどなぁ~……」

「アレで控えめだったのかよ……」


倹約って言葉を知らないのか、そう思ってしまうほどにレイナは弾をばら撒いていた。

一発も誤射がなかったのは凄いが、撃ち過ぎて弾を無駄遣いしたら意味ないだろう……。

俺は思わず呆れて盛大な溜息を漏らすと、何故かレイナが俺の顔を覗き込んできた。


「ん? なんだよ、まだ体液でも付いてるのか?」

「そうじゃないけど、少しは元気が出て来たのかなって」

「……まだ完全にとは言えないが、お陰さまで立ち上がる位の元気は出て来たよ」


そう言って俺は誰の手も借りずに立ち上がり、部屋の中の状態を見渡してみる。

部屋のアチコチには、レイナが倒したと思われる死体が転がっていて、目を背けたくなる様な光景が広がっていた。

此処で眼を瞑って見なかった事にするのは簡単だが、レイナと行動を共のする以上は少しでも早く慣れないとやっていけなくなる。

元の世界への帰り方が分からない以上、今の俺が頼れるのは彼女だけだからな。

俺が静かに決意を固めていると、隣に居るレイナも立ち上がって真剣な顔で俺の事を見てきた。


「少しは元気になったみたいだから聞くけど、アンタこれから私に付いてくる気ある」

「嗚呼。今の俺にはお前しか頼れる奴がいないし、助けてもらった恩もまだ返して無いからな」

「中々言ってくれるじゃない。それなら、今度はビシビシ扱き使わせてもらうわね」

「……頼むから手加減してくれよ? あんまり厳しいと流石に倒れちまう」

「それは私の気分次第って事で。……それじゃ、さっさとこんな所からオサラバするわよ」


レイナは言いたい事だけいうと、そのままこの部屋から出て行こうとする。

俺も彼女の後を追って部屋から出て行くが、さっきの発言を聞くと物凄く不安になってくる。


「はぁ……前途多難とはまさにこの事か……」

「ちょっとタケル! あんまり遅いと置いて行くわよ!」

「直ぐに行くからちょっと待てって!」




【キャラクター紹介】


黒耀 武:17歳


日本のとある高校に通う剣道部所属の三年生。

幼い頃より祖父に剣道を叩き込まれたため、その実力は折り紙つきで、今では全国に名を轟かせるほどの猛者となった。

中3・高1・高2の時に全国優勝したが、その所為で他の部員たちが本気で挑もうとしない事を感じ、今では部活に対する熱意が冷めてしまっている。

鍛練は今でも欠かさず行っているが、自分の剣を向ける先がない事に憤りを感じていた。


祖父母は既に他界しているが、実の両親は今も生きているが、世界中アチコチ飛び回っていて、家には滅多に帰って来ない。

幼い頃の武はアチコチ連れ回されるのを嫌がったため、両親から離れて祖父母の元で暮らす様になった。

三つほど歳の離れた妹がいるが、彼女は両親と共にアチコチ飛び回っているため、殆ど面識は無く、武は妹の事を近い親戚くらいの認識しかない。


家宝の剣は祖父が死ぬ間際に武の父に渡されたが、世界中を飛び回っている自分に管理する事はできないと判断し、日本に残る武へと受け継がれる事になった。

あの剣には色々と曰くがあり、いまだ果されぬ約束があると伝えられているが、随分昔に口伝されなくなった為、どんな約束なのか知るものは居ない。


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