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おいしいパフェと恋しい雨宿り

「時間は・・・・まだたくさん・・・あるから」

「・・・暑い」

「綾、それ何回目?聞いてるこっちも暑くなるよ」

私は今友達とアイスをくわえながら商店街をぶらついている。

いくら田舎でも商店街くらいはあるものなのだ。

・・・大きくはないけど




「・・・死ぬかも」

暑いというと怒られるので死ぬかもしれないに切り替えた。

今は七月の一週目の土曜日。

七月に入ったと思ったら、いきなりこの暑さ。31度もあるらしい。

「このくらいで死んだら沖縄の人は全滅しちゃうでしょ?」

「京は暑くないの?」

「暑さには強いのよ」

今隣にいる、暑さに強くてたくましい(?)友達の名前は工藤京クドウミヤコ

私の数ある友達でも一際仲がいいのがこの京だ。なかなか可愛い。学校でも隠れファンが多い、という噂を聞いたことがある。

「・・・仕方がないなぁ。あの喫茶店入って涼もうか」

それにすばらしい慈愛の心をお持ちである。

「ありがとう!何か一杯おごってあげる」

「じゃあ、チョコパフェSPおごってね」

「え゛っ・・・」

前言撤回。血も涙もない女だった。




喫茶店で私は一番安い紅茶を頼み、京にはチョコパフェSPだけは・・・と頼み、普通のチョコパフェにしてもらった。

ちなみに値段は私の紅茶の六、七倍はある。


しばらくしてイケメンな店員さんが紅茶とパフェを持ってきてくれた。

私は砂糖もミルクも入れずに飲む人なのだ。

さっそく一口飲んだ。

いつものように最高においしい。

「ここの紅茶って最高だよねー」

京はパフェを食べながらこくりと頷いた。

・・・どう見てもパフェのほうがおいしそうだけどね



私は紅茶を早々と飲み終わってしまった。

「もう飲み終わっちゃったの?」

「だってこのカップに一杯だよ?すぐ飲みおわっちゃうよ」

パフェに比べれば量が少ないっつーの。

「・・・仕方がない。ただおごってもらうってのは悪いから・・・」

そう言って京はスプーンにチョコをとり、私の口元に持っていき

「綾、あーんして」

と言った。

私は口を開けて・・・

パクッ

「綾おいしい?」

「すっごいおいしい!」

口の中で広がるチョコがさっきまで飲んでいた紅茶の味と絶妙にマッチしている!

「じゃあこれ、あとは食べていいよ」

まだ半分くらい残っているチョコパフェを私のほうによこしてきた。

「えっ!いいの!?」

「私お腹いっぱい」

「じゃ!遠慮なく」

京の残飯処理機と化した私はおいしそうな残飯を口元に持っていき・・・

パクッ




「じゃ、そろそろ家に帰ろうか」

「そだね」

「じゃ、私こっちだから」「うん。じゃーねー」

「また明日ね」

あのあと私と京は会計を済ませ(私が全部払った)近くの公園でおしゃべりをしてから帰路に着いた。

私は右に、京は左へ。

各自の家へ向かって歩だした。

そのあと私は家につき、夕食をとり、風呂に入り、ほどなくして就寝した。

・・・明日は雅也と練習だ・・・今日みたいに暑くないといいなぁ


などと思っているうちに私は眠りにおちていった。





「はぁ・・・はぁ・・・」今日は昨日ほどの暑さではないが十分暑い。

そんな中を私は放課後になってすぐに学校からでて、全速力で川原にきた。

当然息が切れて楽器は吹けないのだった。

「やぁ、綾ちゃん」

後ろから雅也の声が聞こえた。

「こっ・・・こんちは」

「また走ってきたんだ・・・もっとゆっくり来てもいいんだよ?この調子だとラッパが上手くなるより先に陸上選手になっちゃうよ・・・」

わっ・・・笑えない・・・

「・・・ちょっと休んでいい?」

私は川原の草むらに座り込んで言った。

「うん。いいよ。時間は・・・たくさんあるから」

そういったとき、雅也の顔が少し苦痛そうに歪んだ。

「・・・どこか痛いの?」

そう聞いたとき雅也は、はっとして

「いっいや!どこも痛くないよ」

と弁解した。

怪しいな・・・



二、三分たってから雅也は

「綾ちゃんの息も整ったみたいだし、練習をはじめようか」

と言った。

「はーい!今日もよろしく。雅也せんせっ!」

「先生かぁ・・・何だかくすぐったいな」

「あはは!」

こんな感じで今日の練習は始まった。




・・・今なら、雅也があの時なんで顔を歪めたのか分かるよ。

あの時すでに雅也と一緒にいられる時間はあまりなかったんだよね・・・




「ストップ。そこはもっと音形を丸くして吹いて」

「どんな風にすればいいの?」

「うーん・・・ラッパ貸して」

そういって私からトランペットを借りようとしたとき・・・

スッ・・・

「え・・・?」

今・・・雅也の手、トランペットのベルの所すりぬけなかった?

「え・・・」

雅也の口から動揺の声がもれた

「・・・やっぱり、ちゃんと口で説明するね」 「え・・・うん」

私は雅也の説明の半分以上を聞いていなかった。

あれは見間違い?それとも本当に手がすりぬけたの?

だとしたらいったい雅也って・・・


そこで私の思考は停止してしまった。

「ん?・・・雨だ」

雅也の言葉で我に返った。

「え?・・・」

私は手のひらを空にかざしてみた。

「本当だ・・・」

まだ少ししか降ってないが空模様をみていると今にも大雨になりそうだ。

「雅也、降りだす前にあそこの屋根つきのバス停に雨やどりしようよ」

「わかった」

私は楽器と楽譜を持ってバス停に入った。

入ってすぐに雨が降りだした。

間一髪。

「どしゃぶりだねー」

「うん、なかなかやみそうにないな」

「朝は天気よかったのに・・・それに予報は晴れだったのに・・・」

「はぁ・・・」




しばらく私と雅也は無言で雨が降るのを見つめていた。

雅也と何か話さないと・・・と思い、ふと横に座っている彼をみた。

雅也の横顔は人生でみてきた横顔の中でも、最高に美しく・・・かっこよかった。

思わずドキッとしてしましまい、

「・・・」

見とれてしまった。

「・・・?綾ちゃん、どうかした?顔になんか付いてる?」

「いっいや!なんでもないよ!」

心臓の音が大きく聞こえる。

雅也に聞こえるんじゃないだろうか、と思うくらい大きい。

べつに雅也のことなんか・・・好きじゃないもん

と自分に言い聞かせながら雅也の顔をもう一度見た。雅也もこっちを見ていた。

雅也と見つめあう形になってしまった。

「ッ!」

私は顔が火照るのを感じて、目をそらしてしまった。

「?」

雅也はきょとんとしていた。

やば・・・動悸がなおさら早くなってる・・・

「綾ちゃんさっきからどうしたの?さっきからキョドッてるけど」

「なっなんでもないの!」

恥ずかしさからか自然と語気が強くなってしまった。

「そう?ならいいけど」

雅也はそういうと、雨の降りやまない空を見つめて、ため息をついた。

「はぁ・・・いつやむんだろうね」

「え・・・うん。早くやんでほしいね」

とは言ったが、

このまま一緒に雨やどりをしていたいなぁ・・・

と心の片隅で考えていた。

このまま二人の、二人だけの時間が続けばいい。

このまま・・・ずっと・・・二人で。

そんなことを考えていた。

雅也と出会ってまだあまり時間は経ってないけど、今気が付いた。

私は雅也に・・・





恋をした。





決して結ばれることのない恋を・・・



おいしいパフェと恋しい雨やどり 了


はい。どーもDOGOONです。

お待たせしました第3部です!(待ってた人いるのか?)

今回少し長くなりました。申し訳ない。読むのだるかったかも知れませんね(笑)

男も恋愛に興味の無かった綾が、ついに雅也に恋をしました。これからどうなる事やら・・・


なんだか物語の進行が早すぎる気がしますが、なんとかついてきてくださってますでしょうか?(爆)

次回は最終部の一つ前の話になります。つまり次の次が最終部。きゃー!大変!(爆)

みなさんあと少しだけおつきあい下さい。

ではっ!


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