表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ケサランパサランの鉢植え

作者: 昼月キオリ
掲載日:2026/04/22



このメンタルクリニックでは、ケサランパサランの鉢植えが処方されていた。

 


「ケサランパサランの鉢植え、処方しますね。

後で受付でもらって下さい。」


受付に来ると鉢植えを渡された。

 

鉢植えには、

真っ白でふわふわした毛玉のような生き物が、ちょこんと生えている。

くりくりとした目にニコニコしている口元。


「なんですかこれ?」


「ケサランパサランですよ。」


「まさか、本気でこれを処方箋と?・・・」


「はい。」


「これ、何をしてくれるんですか?」

 

「ずっとニコニコしてるだけですよ」

 

「え!?そ、それだけ!?」

 

「はい。それだけです。副作用もありません。」


いや、副作用もありませんって・・・。

病んでるのにこんなおもちゃみたいな生き物を飼うなんて。

 

注意事項は一つだけ。

朝に一度、日の当たる場所で水をあげること。

あげないと、だんだん小さくなり、やがて枯れて死んでしまいます。

 

帰宅すると、僕は鉢をベランダに置いた。

翌朝、目覚ましが鳴っても二度寝したくなった。

でも、ふと鉢を見ると、ケサランパサランはずっとニコニコとこちらを見ている。

なんだか申し訳なくなって、起き上がって水をあげた。

 

それからまたベッドに戻り、二度寝コース。


しかし、それを繰り返しているうちに、少しずつ身体のだるさが抜けていった。

朝、水をやるために起きる。

それが習慣になると、自然と体が軽くなってきた。

ある朝、僕は鉢に向かって小さく呟いた。


「ありがとう。君がいてくれて良かった。」


僕がお礼を言ったけど、

ケサランパサランは、相変わらずニコニコしているだけだった。




 

♦︎

帰宅した家で俺は苛立っていた。


「何だよ、ケサランパサラン処方って。

しかもニコニコしてるだけで何の役にも立たないなんて。やっぱり普通の薬を出してくれる医者を探すか・・・。」

 

ケサランパサランは、ただただニコニコしている。


最初は水をあげなかった。

すると、一日ごとに体が小さくなり、ショボンとしていた。

その姿を見て、さすがに俺はバツが悪くなり、

日の当たる場所へ移動させると水をやった。


ある日、

人付き合いでいざこざを起こした俺は鉢植えを睨んだ。


「くそ、いいよなお前は気楽でよ。何の苦労も知らないで。」

 

俺が毒を吐いても、ケサランパサランはただニコニコしているだけだ。


一か月後。

俺は泣きながら鉢植えに抱き付いていた。

 

「酷いこと言って俺が悪かったよぉ・・・くそがぁ・・・。」

 

ケサランパサランは、いつものようにニコニコしている。


それ以来、人が変わったように穏やかになったことで周囲の人からは気味悪がられたらしい。

 

朝、太陽の光を浴びながら鉢植えに水をやる。

ケサランパサランは、今日もニコニコしている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ