産地バトンパス。〜キャベツを例に〜
野菜も果物も、タテヨコに広がる日本列島の様々な場所で作られ、季節によって商品が途切れないように北から南へ、あるいは南から北へ、次々に産地は切り替わっていく。今これを読んでいる方は何か一つ、野菜を思い浮かべてほしい。それが1年間途切れることなく店先に並んでいるならば、ほぼ間違いなく、全国の産地を切り替えつつ通年の流通量を確保する産地リレーが行われているということになる。
では私も八百屋のはしくれとして、キャベツを例に挙げて説明していこうと思う。
今は春キャベツが真っ盛り。サラダや浅漬けに向く柔らかいキャベツはどこで採れたものなのだろうか。
先に答えを述べよう。春キャベツは間違いなく神奈川が最も大きな産地だ。近いところなら千葉も強いには強いし愛知も強力な産地で、そもそも春キャベツは全国で育てることができるのだが、こと市場のものとなれば神奈川のシェアは圧倒的だ。東日本に位置する私の暮らす街も例に漏れず、今は大概神奈川の春キャベツを売る。神奈川のそれは、柔らかいのに葉が厚いという素晴らしい特徴がある。
春キャベツの後には夏秋キャベツが控えている。これも最近わりと色々あるが私が夏のキャベツとして一番馴染み深いのは岩手県産か。高原の涼しい気候の中で育ったキャベツはぎゅっと詰まっている物が多く、千切りにしてもいいし夏野菜と共に野菜炒めに使っても底力がある。だが近年の夏の暑さゆえに、キャベツも夏の供給は不安定だ。
秋になるとキャベツの産地は途端に戦国時代のような有様になる。様々な産地がある。北海道から出てくる早出しの寒玉キャベツに、群馬の嬬恋キャベツも私の中ではお盆を過ぎて9月からが本領という感じ。前面にでてくる群馬のキャベツのすぐ後ろに茨城が控えていて、冬キャベツの前、11月あたりの晩秋にメインになる。長野も忘れてはいけない。滋賀にもあると聞いたことがあるが、滋賀のキャベツはまだ取り扱ったことがないので未知の産地だ。
雪が降り出すと産地は南下して千葉県と愛知県の2県が強い。九州ものも西日本では一般的らしく、大分県や佐賀県なども最上位ではないものの大きな存在感がある。真冬は私の職場では愛知県をメインに千葉と交互で入荷がある。
そして最近流行りになってきたのが、豪雪地帯の特産品のような立ち位置になりつつある雪下キャベツである。私は福島県の猪苗代や柳津、西会津のものも扱う。新潟でも確か越後高田の方だったと思うのだが雪下キャベツの産地があるはずだ。雪下キャベツの良さは、寒さに耐えるべく葉に蓄えた強い甘みと、ギュッと硬く巻いた寒玉特有の葉だ。寒い時期のキャベツ全般に言えるが、煮物に使えるポテンシャルが最も高いのも厳寒期に収穫されたキャベツであると思う。だしの効いた味噌汁にたっぷりのキャベツと油揚げ。冬ならではの豊かな味噌汁だと思う。
こうやって見てみると実に、あらゆる産地を行ったり来たりしながらキャベツは年中店に並ぶようになっている。野菜のなかでは重量あたりの値段がかなりお得であり、日持ちもよい素敵な野菜である。普段お使いの皆様もぜひ、1年間どんな産地でリレーを繋げていくのか、産地を気にしながら買ってみるのも面白いかもしれない。
産地の話には必ず、どこどこのコレはすごく良くて……という話が入ってくるが、安定供給のための産地リレーの話も大切なので書いた。
春のお彼岸で個人的に忙しく突っ込んだ話は書けなかったが、上手くまとまるときは別タイトルでもう少し詳しく書いてみたい。




