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第38話 ハネムーン・ブートキャンプ(お姫様抱っこは「ウエイト」ですわ)

 サンクチュアリ王国の遥か南、一年中温暖な気候と美しい湖畔で知られる王立保養地――通称『女神の休息所』。

 本来、ここは新婚の貴族たちが甘いひと時を過ごし、優雅なティータイムとボート遊びを楽しむための場所です。


 しかし、アイゼンラッド公爵夫妻――ジークフリートとルシナがこの地に足を踏み入れた瞬間、保養地の空気は一変しました。


 午前四時。


 湖面に朝霧が立ち込める静寂の中、大地を揺らす重低音が響き渡ります。


 ドドドドドドドドドドッ!!


「ジーク様! ピッチが落ちていますわよ! 腕を振って、広背筋(ラット)の反動で足を前に出しなさい!」


「……はぁ、はぁ、承知……したッ!!」


 朝靄(あさもや)を切り裂いて走るのは、伸縮率300%の超高性能素材のランニングウェアを纏ったジークフリート公爵。

 彼の肉体は、昨夜の祝宴でのパンプアップが嘘のように引き締まり、一つ一つの筋肉が彫刻のように研ぎ澄まされていました。


 頸部から背中の中央までを覆う僧帽筋(トラペジウス)は、激しい呼吸に合わせて岩盤のように脈動し、肩の三角筋(デルトイド)は、腕を振るたびにメロンのような丸みを強調しながら、重力に逆らって隆起しています。


 そして、驚くべきは彼の「荷物」でした。  

 ジークフリートは、自身の前方にルシナを「お姫様抱っこ」の形で保持したまま、湖畔の周回コース(一周約十キロ)を全力疾走していたのです。


「ああ……ルシナ……。なんて、なんて素晴らしい『愛の重み』なんだ……ッ!」


 ジークフリートの「大胸筋ペクトラリス・メジャー」が、ルシナの体重を受け止めるたびに心地よい悲鳴を上げます 。

 通常の女性よりも数倍の密度を持つルシナの筋肉。

 それは彼にとって、この世で最も神聖で、最も効率的な「生体ウエイト」でした。


「ルシナ……君をこうして抱いていると、私の全細胞が歓喜に震える。……これが、ハネムーンというものなのか……!」


「いいえジーク様、それはアドレナリンと乳酸の相乗効果ですわ!」


 腕の中で、ルシナはストップウォッチを片手に、ジークフリートの心拍数と呼吸を冷静にモニタリングしていました。

 彼女の(マッスル・サーチ)は、ジークフリートの「外腹斜筋」が、捻転の動きに合わせて美しく浮き出る瞬間を逃しません。


「ジーク様、ここから上り坂です! 私、さらに負荷を上げますわね!」


「負荷……? これ以上、どうやって――うぐっ!?」


 ルシナが、ジークフリートの首に両腕を回し、ぐいっと自分の体を密着させました。


 単なる抱擁ではありません。

 ルシナは自身の体重を「一点」に集中させ、ジークフリートの重心を意図的に狂わせることで、彼のインナーマッスルに強制的な刺激を与えたのです。


「……っ!! あ、ああ……ルシナ! 君が……君の鼓動が、私の『前鋸筋』にダイレクトに伝わってくる……! これは……熱い! 愛の炎が燃え上がるようだッ!!」


 ジークフリートの脳内フィルターは、過酷なトレーニングをすべて「官能的なスキンシップ」へと変換していました。

 ルシナが彼の僧帽筋の付け根(いわゆる『ツボ』)を指先でグッと押さえると、激痛が走ると同時に、血流が爆発的に向上。


 バキィィィィィンッ!!!!


 昨日予備に買っておいた特注ウェアの肩口が、彼の「三角筋中部」の膨張によって粉々に粉砕されました。


「ナイス・パンプです、ジーク様! ウェアが裂けるのは、貴方の筋肉が『ここから出たい!』と叫んでいる証拠ですわ!」


「ああ……!! 見てくれ、ルシナ!! 私の(筋肉)が、君に応えようとしているッ!!」


 二人は朝日が差し込む湖畔を、黄金の汗を撒き散らしながら疾走し続けました。


 すれ違う老夫婦や優雅な令嬢たちが、恐怖で湖に飛び込んだり、気絶してベンチから転げ落ちたりしていましたが、二人は気づきません 。


 コースの終盤、標高五百メートルに位置する絶壁の展望台。

 そこに到着した瞬間、ジークフリートはルシナを地面に下ろし、膝をつきました。


「……ふぅ。……最高の、セットだった……」


「お疲れ様です、ジーク様。……はい、プロテインです。今回は旅行気分を出すために『トロピカル・マンゴー風味』にしてみましたわ」


「……っ、美味しい。……君と飲むプロテインは、どんな高級ワインよりも芳醇だ」


 ジークフリートは、ルシナから手渡されたシェイカー(聖遺物レプリカ)を飲み干し、彼女の肩を抱き寄せました。


 眼下に広がる、輝く湖と緑の森。

 本来なら、ここで「生涯の愛」を誓い合い、口づけを交わす場面です。


 ジークフリートは、ルシナの潤んだ瞳(トレーニング後の充血)を見つめ、熱く囁きました。


「ルシナ。……私は決めた。……このハネムーンが終わっても、一生……いや、来世までも、君に私の『負荷』であってほしい」


「ジーク様……」


 ルシナは頬を赤らめ、彼の胸板に顔を埋めました。


「嬉しいですわ。……でも、一つだけ訂正させてください」


「ん……?」


「来世ではありません。……今日の午後、『砂浜でのダッシュ20本』のメニューが、まだ残っていますわ!」


「……!! はは、ははははッ!! 全くだ! 君という人は……最高だ!!」


 絶壁の上で、黄金の半裸公爵と、笑顔の筋肉聖女が強く抱き合いました。  


 ベキッ!!


 展望台の石造りの手すりが、二人の抱擁(クリンチ)の圧力によって粉々に粉砕され、奈落の底へと落ちていきました。  


 アイゼンラッド公爵夫妻の新婚旅行。

 それは、周囲の環境を物理的に破壊し、愛の熱量で気温を上昇させる、史上最も「暑苦しく、そして爽やかな」地獄のブートキャンプとなったのです。

新婚旅行回、これぞ「お姫様抱っこ(物理的な過加重)」!

本来甘いシーンのはずが、ルシナ様が重心移動で負荷を調節し始めるところが、個人的にお気に入りのシーンです。

公爵様も、服が破れるたびに愛を感じているようで、もはや無敵ですね。


「展望台壊すなww」 「ウェアの予備持ってきたんだ」

と、笑って楽しんでいただけましたら、 ぜひ【ブックマーク】登録と、 記事下の【☆☆☆☆☆】から評価をいただけると、ついに迎える最終回の原稿用紙が筋肉質になります!

(皆様の★のおかげで、ついにここまで来ました。本当に感謝しかありません!)


次回、ついに最終回!! 「筋肉は世界を救う」。

数年後、アイゼンラッド領が迎えた「究極の平和」とは!?

明日、伝説の幕が閉じます。絶対にお見逃しなく!

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