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第33話 聖なる共振(汗の反射は、ダイヤモンドよりも美しく)

 ――ズゥゥゥゥゥゥゥゥン……ッ!!


 地下迷宮の最深部、『大聖堂(グレート・ジム)』の空気は、既に生物が生存できる領域を超えていました。


 四十倍に跳ね上がった重力と、怠惰の悪魔が放つ負のエネルギー。

 そして、それらを真っ向から押し返さんとするジークフリート公爵の圧倒的な体温(サーモジェネシス)

 三つの巨大な力が衝突し、空間そのものが「ミシミシ」と物理的な軋み声を上げていました。


「……ハッ、ハッ、ハッ……!!」


 ジークフリートの背中から、ルシナが静かに降り立ちました。


 悪魔の『絶対休息(オール・レスト)』によって一時的に停止させられていた彼女の神経系は、今、ジークフリートの肉体から伝播した「熱」によって再起動(リブート)を完了していました。  


「……素晴らしい熱気ですわ、ジーク様。貴方のミトコンドリアが、重力を糧に核分裂でも起こしているかのような出力(アウトプット)です」


 ルシナは自身の二の腕を軽く叩きました。

 鋼鉄のように硬直していた筋肉が、ジークフリートの熱い波動を受け、より柔軟で、より爆発的な反応速度を備えた「戦うための組織」へと変貌していました。


「ルシナ……。身体は、動くか?」


 ジークフリートが問いかけます。


 彼の全身は、既に本日八枚目となるシャツを文字通り霧散させ、黄金色の肌を晒していました。

 血管は蛇のようにうねり、筋肉の境界線(セパレーション)は、まるで地割れのように深く、鋭く刻まれています。


「はい。……完璧です。これまでのどのセットよりも、今、私の身体は『仕上がって』いますわ!」


 二人が肩を並べた瞬間、奇跡が起こりました。


『な、なんだ……!? 奴らの周りの空気が、歪んでいる……!?』


 祭壇の上で、怠惰の悪魔が戦慄しました。


 ジークフリートの肉体から溢れ出す「生の生命力(プラーナ)」。

 そしてルシナの魂から溢れ出す「聖なる魔力」。

 本来、異なる性質を持つはずの二つのエネルギーが、共通のリズム――すなわち、「筋肉の収縮と弛緩の周期」において完璧に同調し始めたのです。


「ジーク様、私の呼吸に合わせてください! 吸って、吐いて……筋肉の拍動(リズム)を一つに!」


「承知した……! 私の心臓は、既に君の指示に従って動いているッ!!」


 二人が同時に息を吐き出し、特定のポージングへと移行しました。


 ――ボォォォォォォォォォンッ!!


 瞬間、二人の全身から眩いばかりの黄金の光が噴き出しました。


 それは魔力による演出ではありません。

 極限までパンプアップした筋肉の表面を、激しい運動によって噴き出した「汗」が薄い膜となって覆い、そこに聖女の光が乱反射することで生まれた、物理的な「聖なる輝き」でした。


「見て……ジーク様。私たちが流す汗の一滴一滴が、重力の粒子と衝突し、光の粒子(フォトン)へと変換されていますわ。これぞ筋肉神学の奥義……『汗の聖なる共振(マッスル・レゾナンス)』です!」


「ああ……ルシナ! なんと美しいんだ! 君の広背筋(鬼の顔)が、黄金のオーラを纏って、私に『微笑んで』いるぞ!! これなら、どんな闇も、どんな怠惰も、塵に等しいッ!!」


 ジークフリートは、自身の『大胸筋上部』とルシナの『前鋸筋』が放つ光の干渉縞(フリンジ)を見つめ、恍惚としました。


 彼の目には、もはや悪魔の姿など映っていません。

 そこにあるのは、自分たちの努力が光へと変わる、究極の「自己肯定」の世界。


『ふ、ふざけるなッ! 私の呪いは絶対だ! 死ね、筋肉の化け物どもォォォッ!!』


 悪魔が最後の力を振り絞り、地下施設の全重力エネルギーを一点に凝縮した、漆黒の極大魔力弾を放ちました。  


 ――ドゴォォォォォォォォォォンッ!!


 しかし、その絶望の一撃は、二人に届く前に「蒸発」しました。

 二人の黄金の汗が放つ、数千度の熱量と、圧倒的な陽のエネルギーを前に、怠惰という名の闇は霧散するしかなかったのです。


「無駄ですよ、悪魔さん」


 ルシナが、一歩、前に出ました。

 彼女の足跡には、重力に押し潰された床ではなく、黄金の結晶が生まれていました。


「筋肉は、積み上げた時間を嘘にしません。貴方が奪おうとしたのは、私たちの『昨日までの努力』そのもの。……それを否定することは、世界そのものを否定することと同じですわ!」


「その通りだ!! 悪魔よ、感謝しろ!! 貴様の絶望があったからこそ、私はルシナとの『最高のシンクロ』に到達できたのだからなッ!!」


 ジークフリートの右腕が、ルシナの左腕と交差しました。


 二人の腕が触れ合った瞬間、落雷のような衝撃波が走り、地下迷宮の天井がボロボロと崩れ落ちます。

 黄金の光はさらに膨れ上がり、ついには『聖なるシェイカー』を飲み込み、迷宮全体を昼間のような明るさで照らし出しました。


『ああ……あ、ああああああああああッ!! 眩しい! 暑苦しい! 努力の臭いが鼻をつくぅぅぅぅぅぅッ!!』


 怠惰の悪魔は、二人が放つ「過剰なまでの活力」に耐えきれず、自身の構成組織である「怠惰の霧」が次々と燃え上がっていくことに絶望しました。


 それは、究極の「陽」による、究極の「陰」の浄化。  


「ジーク様! トドメの一撃、行きますわよ!」


「ああ! 全筋肉(オール・マッスル)、フル出力だッ!!」


 二人の背後に、巨大な「筋肉の翼」が光で形成されました。


 次話、ついに出る合体奥義。

 物理法則が、愛と筋肉によって完全に上書きされる瞬間が、今まさに訪れようとしていました。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!


これぞ「筋肉聖女」のクライマックス! 汗の反射が黄金に輝くという、文字通りの「神々しい暑苦しさ」をお届けいたしました。

ジーク様の「君の広背筋が微笑んでいる」というセリフ、作者としても書きながら「恋って怖いな」としみじみ思いました。


「汗で発電しそうww」 「鬼の背中が笑ってる……怖すぎる」

と、笑いと熱気を感じていただけましたら、 ぜひ【ブックマーク】登録と、 記事下の【☆☆☆☆☆】から評価をいただけると、次話の合体奥義の威力がさらに倍増します!

(皆様の★が、物語を完結へと導く最強のプロテインです! ありがとうございます!)


次回、最終決戦決着! 究極奥義『グランドクロス・プレス』炸裂!

悪魔よ、重力加速度の彼方へ消え去れ!

明日も更新しますので、絶対にお見逃しなく!

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