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第30話 決戦の地へ(勇者の遺産は、キンキンに冷えたアレでした)

 ――ズォォォォォォォォンッ!!


 地下迷宮の最深部へと続く大回廊。  

 そこには、『怠惰の悪魔』が設置した「超重力結界」が何重にも張り巡らされていました。


 一歩踏み出すごとに、大気は密度を増し、重力は通常の三十倍、四十倍へと跳ね上がっていきます。


「ぐ、ぅ……あ、足が……床に、溶け込むようだ……ッ!」


 ジークフリート公爵は、もはや直立を維持することすら困難な状況でした。

 膝を深く曲げ、大地を掴むようにして進むその姿は、端から見れば「超高重量のバーベルを担いで歩くパワーリフター」そのもの。  

 血管は怒張し、皮膚の下では筋肉繊維が一本一本、限界まで引き絞られた鋼のワイヤーのように軋んでいます。


「素晴らしい……! 見てくださいジーク様! 貴方の太もも(大腿四頭筋)のカット、この高負荷でこれまでにないほど深く、鋭く刻まれていますわ!」


 一方、ルシナはといえば、重力など存在しないかのような軽やかなステップ(ランジ歩行)で進んでいました。  

 彼女にとって、この重力は不可抗力(神からの愛)でしかありません。


「さあ、ジーク様! ここが踏ん張りどころです! おしり(大臀筋)をギュッと締めて、地面を蹴り上げるのではなく、地球を押し下げるイメージで進むのです!」


「地球を……押し下げる……ッ! はは、ハハハッ!! 全くだ、ルシナ! 君に教わった通りだ……重力など、ただの『無料(タダ)の負荷』に過ぎないッ!!」


 ジークフリートの脳内で、生存本能が「筋トレの快感」に完全に上書きされました。

 彼は咆哮し、重力の壁を物理的に突き破るように加速しました。


 バキィィィィィィンッ!!!!


 ついに、本日七枚目となる特注シャツが、広背筋の爆発的な膨張に耐えきれず粉々に弾け飛びました。

 黄金色に輝く上半身を露わにし、ジークフリートは回廊の突き当たりにある巨大な黄金の扉を、両手で力いっぱい押し開きました。


 その先に広がっていたのは、迷宮の心臓部――『大聖堂(グレート・ジム)』。


 天井からは太陽のような光を放つ魔石が吊るされ、中央の祭壇には、一つの「聖遺物」が鎮座していました。


 それは、眩い黄金の輝きを放つ、巨大な――「プロテイン・シェイカー」でした。


「……あれは」


「はい。古代の勇者が、重力エネルギーを凝縮して作り上げた究極の栄養剤……伝説の『(ホエイ・)(プロテイン)(・ゴッド)』ですわ!」


 ルシナの瞳が、歓喜で潤みます。


 しかし、その「聖なるシェイカー」には、どろりとした黒い霧が絡みついていました。

 祭壇の影から、実体化した『怠惰の悪魔』が、不気味なソファのような体を揺らして現れます。


『……クク。間に合ったか、筋肉の亡者ども。だが、もう遅い』


 悪魔は、シェイカーの中に自身の触手を伸ばし、中の「黄金の液体」を吸い取ろうとしていました。


『この“究極のプロテイン”を私が喰らえば、私は努力せずして不滅の肉体を手に入れる。人は皆、私の呪いに沈み、永久に寝そべって過ごす“怠惰の楽園”が完成するのだ!』


「させるかぁぁぁぁぁぁぁッ!!」


 ジークフリートが、床を蹴って飛び出しました。

 

 四十倍の重力を無視した、弾丸のような突進。

 彼は右の拳を振り抜き、悪魔の顔面(らしき場所)を狙いました。


 ドゴォォォォォォンッ!!


 しかし、悪魔の体は煙のように霧散し、ジークフリートの拳は空を裂きました。


『無駄だ。私は実体を持たぬ精神体。物理的な打撃など、私を眠くさせることすらできんわ!』


 悪魔が嘲笑うと同時に、シェイカーの輝きが急速に失われ、黒く染まって空へと昇り始めました。

 『究極のプロテイン』が、悪魔のエネルギー源として吸収されようとしているのです。


「ジーク様、待ってください! あの悪魔、今は『プロテイン』と一体化しています! 物理で殴るのではなく、筋肉の共鳴(ポージング)で引き剥がすのです!」


「なんだと!? 共鳴……ポージングだと!?」


 ジークフリートは戸惑いましたが、ルシナの言葉に一点の疑いも持ちませんでした。

 ルシナは、自身の法衣を脱ぎ捨て(下には伸縮性抜群のトレーニングウェアを着用)、ジークフリートの隣に並びました。


「ジーク様! 筋肉の熱量で、あの不純物を焼き払いますわよ! 本日の最終セット、最大出力(オールアウト)で行きますわ!!」


「……承知した! 私の全てを、君のポーズに捧げよう!!」


 地下最深部。


 究極の栄養剤を巡り、人類最強のカップルと、人類最古の誘惑による、筋肉を賭けた「最終決戦」の火蓋が切って落とされました。


 扉の向こう側では、追いかけてきた騎士たちが「まぶしい!」「筋肉が光っている!」「これが神話の再現か!」と涙を流してひれ伏していました。

最後までお読みいただき、本当にありがとうございます!


ついに決戦の地、古代のジムの最奥へと到達しました。

勇者が遺した伝説のアイテムが「シェイカー」という、この世界観の徹底ぶり。

そして、物理攻撃が効かない悪魔に対し、ルシナが出した指示は「ポージング」。


「地球を押し下げるww」 「シェイカーが聖遺物とかこの世界終わってる(褒め言葉)」

と、笑いながら楽しんでいただけましたら、 ぜひ【ブックマーク】登録と、 記事下の【☆☆☆☆☆】から評価をいただけると、最終決戦のポージングのキレが上がります!

(★評価をいただけると、作者も一緒にサイドチェストを決めます!)

さて、次からは最終決戦が加速します。

ポージングによる除霊? 究極の共同作業とは?

明日も更新しますので、お見逃しなく!

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