第22話 御前試合(その剣撃、私の「揉み返し」以下だ)
「者ども、掛かれぇぇぇッ!! 反逆者たちを肉塊に変えてしまえ!」
レオン王子のヒステリックな号令と共に、30名の近衛騎士が一斉に動き出しました。
彼らは王国の精鋭。
個々の剣技は一流であり、連携も完璧です。
瞬く間にジークフリートとルシナを包囲し、死角のない全方位からの同時攻撃を仕掛けます。
「まずはデカブツからだ! 膝を潰せ!」
騎士の一人が、ジークフリートの膝裏を狙って剣を振り抜きました。
鋭い剣閃。
肉を裂き、骨を断つ必殺の一撃。
しかし。
ジークフリートは、避ける素振りすら見せませんでした。
「……ふん」
彼はただ、足の親指に力を込め、太ももの筋肉に意識を集中させただけ。
ガギィンッ!
硬質な音が響き渡り、騎士の手から剣が弾き飛ばされました。
斬られたはずのジークフリートの足には、傷一つありません。
ただ、ズボンがパンと張り詰め、鋼鉄のような筋肉の隆起が布越しに主張しているだけです。
「な……ッ!? ば、馬鹿な! 直撃したはずだぞ!?」
「確かに当たったな。だが、浅い」
ジークフリートは、怯える騎士を見下ろしました。
「貴様の剣速は悪くない。だが、質量が足りん。私の足の筋トレの負荷に比べれば、貴様の剣など枯れ枝で撫でられた程度だ」
「ひ、ひいいっ!」
騎士が後ずさると、今度は別の三人が背後から襲いかかりました。
狙うは背中。
心臓の裏側。
「死ねぇぇッ!」
ドスッ! ドスッ! ドスッ!
三本の剣が、ジークフリートの広背筋に突き刺さり――そして、止まりました。
切っ先が皮膚に触れた瞬間、筋肉がギュンッ! と収縮し、剣を挟み込んでしまったのです。
「ぬ、抜けない!?」
「剣が……筋肉に噛まれた!?」
ジークフリートは鼻を鳴らしました。
「背中で語るとはこういうことだ。……さて、次は私の番だな?」
彼は両腕を広げ、自身の背中にある剣ごと、騎士たちを吹き飛ばすように力こぶを作るポーズを取りました。
ブワァァァァッ!!
衝撃波が発生。
剣はへし折れ、騎士たちは木の葉のように吹き飛び、壁に叩きつけられました。
「ぐわああああっ!!」
圧倒的。
理不尽。
それは戦闘ではなく、災害でした。
一方、ルシナの方もまた、一方的な蹂躙が行われていました。
「甘い! 脇が空いています!」
ルシナは、振り下ろされた剣を素手で掴み取り(白刃取り)、そのまま騎士の手首を極めて投げ飛ばしました。
「剣を振る時は、広背筋から力を伝えるのです! 腕だけで振るから手首を痛めるんですよ!」
「あがぁぁッ!」
「貴方は重心が高すぎます! もっと腰を落として! はい、そのままスクワットの姿勢で待機!」
ルシナが通った後には、綺麗なフォームで空気椅子をさせられる騎士たちの山が築かれていきます。
彼女は誰も傷つけず、ただ「正しい姿勢」に矯正して無力化しているのです。
数分後。
謁見の間には、呻き声を上げる騎士たちと、筋肉痛でプルプル震える騎士たちだけが転がっていました。
立っているのは、汗一つかいていない公爵と聖女だけ。
「……そ、そんな……」
レオン王子は、腰を抜かしてへたり込んでいました。
自慢の近衛騎士団が、魔法も武器も使わない二人に、素手だけで壊滅させられたのです。
「ば、化け物……! 貴様ら、痛みを感じないのか!?」
レオンの問いに、ジークフリートは呆れたように首を振りました。
「痛み? ああ、感じるぞ。だがな、レオン殿下」
ジークフリートは、傍らのルシナに優しい視線を向け、そしてレオンに向き直りました。
その顔には、底知れぬ凄みが宿っていました。
「貴様らの剣など、蚊に刺されたようなものだ。……ルシナの指圧に比べればな」
「は……?」
「彼女の指が、癒着した筋膜を引き剥がす時の激痛。深層筋に指をねじ込まれる時の、魂が削れるような感覚。……あれに比べれば、貴様らの殺意など、幼児の遊びにも劣るわ!」
ジークフリートは胸を張りました。
それは、「地獄の施術」を耐え抜いた者だけが持つ、歪んだ自信と誇りでした。
「ルシナの施術こそが、この世で最も痛く、そして愛おしい! 生半可な攻撃で、私が怯むとでも思ったか!!」
ドンッ!!
ジークフリートが一歩踏み出すと、レオンは「ひぃっ!」と悲鳴を上げて失禁しかけました。
勝負あり。
武力でも、精神力でも、公爵側が完全勝利を収めた瞬間でした。
ルシナは、そんなジークフリートを見て、頬を染めていました。
「まあ……ジーク様ったら。私の施術をそんなに褒めてくださるなんて(意訳:痛みに耐えて偉い)」
完全にズレた感想を抱きながら、ルシナは震えるレオン王子に歩み寄りました。
「さて、レオン様。邪魔者は片付きました」
彼女はニッコリと笑いました。
「次はいよいよ、貴方の番です。……その腰、そろそろ限界でしょう?」
レオンの顔色が、恐怖で真っ青に染まりました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
近衛騎士団、全滅です。
「剣で斬られるより指圧の方が痛い」という、究極のマッスル理論。
確かに、現代の整体でも涙が出るほど痛い時がありますから、怪力聖女の指圧なんて想像したくもありません。
「公爵様の痛覚耐性がバグってる」 「背中で剣を折るなww」
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次回、ついに王子の腰が爆発します。 そして始まる、地獄の(そして奇跡の)施術タイム。
明日も更新します!




