ヒマワリの種収穫
ハルフォンソの街からこんにちは。ティファレトです。
突然ですが、ここ、サンレイン王国かつハルフォンソの街での主流作物及び主食は何だと思いますか?
答えはヒマワリの種です。
この辺りは気温も土壌も非常にヒマワリが育ちやすいらしく、色々なヒマワリが育てられたり自生したりしています。
中でも多く作られているのが、【サンサンヒマワリ】と【ギトギトヒマワリ】です。
どちらも種を利用するのですが、サンサンヒマワリは中身を取り出して加工して食べ、ギトギトヒマワリは非常に多くの油が含まれているので、その油を採取します。
サンサンヒマワリはこの辺りでも最大の種類で、なんと花の大きさが大人が8人は座れる丸テーブルほどに大きく、採れる種も親指ほどの大きさのものが大量に採れます。
ギトギトヒマワリは普通の大きさですね。
ただし、名前の通り油で花部分もギトギトします。
主食と油、如何にヒマワリがこの辺りで重要な作物であるかがお分かりいただけましたでしょうか?
何故ヒマワリの話をしたかと言いますと、今日はヒマワリの収穫の日だからです。
「いつものように収穫してくれれば良いからの。お茶は用意しとくで疲れたら休憩するんじゃぞ」
「ありがとうございます」
「さぁて、頑張るか」
見てください、この黄金一色の景色を。
右を見ても左を見ても前を見てもヒマワリ、ヒマワリ、ヒマワリ。
この街では、収穫の季節になると冒険者は一斉に収穫に駆り出されるのです。
年に2回のこの大仕事ですが、収穫をすればするほどにお金になるので、単純作業が嫌いでなければ悪くはありません。
収穫側と護衛側に分かれての作業なのですが、私がこの区画の収穫リーダー、レシートさんが護衛リーダーのようですね。
「よろしくお願いしますね、レシートさん」
「お、おう!バッタ一匹通しゃしねぇぜ!」
随分と頼もしい言葉です。
とはいえ、街から離れていない領内なので危険な存在はそうそういないでしょう。
「これを運んでください」
「は、はい!でへへ」
台に登り、ひたすら巨大なヒマワリから種を収穫します。
カゴ一杯になれば鉄階級冒険者に渡して運んでもらい、私はとにかく収穫、収穫、収穫。
この運びの仕事は早々に拒否する人が多いと話に聞きますが、幸いにも私はまだそんな人には出会った事がありません。
皆が働き者で何よりです。
しかし、この収穫時の指定の服はどうも胸元がキツいですね。
ボタンが閉まらないので半開きにしているのですが、注意を受けた事は今のところ無いのでそのままです。
やはり普段のシスター服が1番ですね。
着やすいし、洗いやすいし、何より神の信徒である事を示せます。
「はぐれのギグがいるぞー!」
あら、珍しいですね。
声がした方を見ると、ちょうどレシートさん達が向かうところでした。
【ギグ】
人と同じような体型で、全身が毛に覆われ、手足が人と比べると長い動物です。
野蛮の権化と言われるほどに気性が荒く、異種族を襲っては食べたり痛めつけたり強姦したりするので、人間からは滅法嫌われています。
本来はハーレムでの群れを形成するのですが、争いに敗れた雄が八つ当たりと言わんばかりに人間の群れを襲撃したりします。
あっ、レシートさんが顔を拳で潰しましたね。
盗賊討伐の時よりも動きが速くなっていませんか?
もしかしたら、銀階級に上がれる日も近いかもしれませんね。
さて、そろそろ休憩しましょうか。
「レシートさん、お疲れ様です」
「おう!はぐれギグぐらいなら問題無いぜ」
少し顔が赤いようには見えますが、傷は無し。
はぐれのギグは普段よりも狂ったように気性が荒く、銅階級でも人によっては苦戦します。
それを無傷で一蹴するとは、お強い。
「盗賊討伐の時より強くなったのでは?」
「お、おう。あれから、修行も更にキツくしたからな」
「冒険者は体が資本ですからね。怪我には気をつけてください」
「......だな」
あれ?どこか気を落としていませんか?
「ティファレトさんも台から落ちないようにな」
「そうですね、気をつけます」
そろそろ休憩も終わりですね。
結局、それから危険生物の襲撃も何も無く、私とレシートさんは計3日間のヒマワリ収穫を終えたのでした。
中々の稼ぎになりましたね。
戦闘は疲れますし、年2回と言わずに週に1回収穫出来るようになりませんかね?




