危機一髪
グリテン平原からこんにちは。ティファレトです。
今日、私はサンレイン王国北側にあるグリテン平原にイワカラガエルの表皮を取りに来ています。
【イワカラガエル】
グリテン平原に多く棲む手の平ほどの大きさのカエルです。
まるで岩のような表皮を持つことから名付けられたのですが、実はこの表皮は岩では無く、イワカラガエルの分泌液が固まったものでして、この表皮を乾燥させて粉末にすると香辛料になるのです。
「中央地じゃなくてもいるのは良いですね」
グリテン平原は縦に広く、中央に近づくほどに強い生き物がいます。
とはいえ、生物の分布なので確実という訳ではないのですが。
「......」
見つけたイワカラガエルを睨みつけ、防御姿勢をとらせてその間に表皮を毟り取ります。
必要なのは表皮だけでイワカラガエルそのものではありません。
毟り取った傍からイワカラガエルは分泌液を出していますね、どれくらいで固まるのでしょうか?
「む?」
この圧、この感じ、強者が近くにいますね。
まだ指定量には達していませんが、ここは退却するべきかもしれません。
「.......」
そう思っていましたが、一足遅かったようです。
姿を見せたヨロイイノシシがこちらを発見するやいなや突進してきました。
【ヨロイイノシシ】
グリテン平原中央に棲むイノシシで、特徴はなんといっても人の3倍はある体躯と鎧のような毛皮です。
幼獣の内に天敵によって数を減らし、成獣になればグリテン平原における頂点捕食者の一種となります。
「.......」
さて、勝つことは現状不可能なので逃走一択なのですが、肝心の逃走をどのようにしましょうか?
このまま走っても追いつかれるのは間違いありませんし.....足止めをして隙をみて逃げ出すしかないですか。
「ふっ」
土煙を上げながら突進してきたヨロイイノシシの口下から股まで一気に滑り込み、すれ違いざまに後ろ足の関節にメイスを一撃。
「通りませんね」
私の筋力では多少の痛みを与える程度にしかなっておらず、即座に来た後ろ足の蹴りを転がるようにして回避。
その後の振り向きによる立派な牙の一撃を、小盾で逸らすようにして回転して腹下を潜るようにして回避。
「ふむ」
攻撃すらままなりませんね。
このままでは体力が尽きて......おや、あれは、アワダチソウ。これを使わない手はありませんね。
「はっ」
アワダチソウを背に待機し、ヨロイイノシシの突進を牙の突き上げに便乗する形で背後をとるように跳躍して回避。
ヨロイイノシシはすぐさま振り向こうとして、転びました。
流石はアワダチソウです。路面に粘液を撒けば衛兵沙汰になるのも伊達ではないヌルヌル具合です。
ヨロイイノシシが滑っている今が好機、ハルフォンソに向かってひたすらに走ります。
「そうですか......ヨロイイノシシがそんな場所に。無事で良かったです」
生き延びました。
冒険者ギルド受付嬢のロールさんに報告をして一段落です。
依頼が失敗に終わったのは残念ですが、お金はまた稼げば良いですからね。命が最優先です。
その後、あのヨロイイノシシはジードさんを筆頭とした冒険者達に狩られたようです。
やはり、人間は恐ろしいですね。




