食を支える鳥
ハルフォンソの街からこんにちは。ティファレトです。
今日のお仕事は、ハルフォンソの街最大のマンマルコッコ牧場であるシャーモ牧場でマンマルコッコのお世話です。
【マンマルコッコ】
温暖な地域に生息する非常に繁殖力が高い、体も人間の頭程度に大きい丸々とした鳥です。
人間が家畜として飼い慣らしており、肉と卵は食料に、羽は寝具にと余す事なく使われています。
マンマルコッコ側もただ利用されている訳では無く、人間を盾に外敵を退け、安定した繁栄を享受しているようです。
「では、始めましょう」
そんなマンマルコッコひしめく牧場での私の仕事は害虫駆除です。
「神よ......」
跪き、広範囲に奇跡の恩寵を届かせる為に強く強く祈ります。
マンマルコッコの鳴き声が消え、風に漂う臭いが消え、やがて視界すらも意識の外へ。
自我を置き去りにするほどの祈りはやがて神へと届き、愚痴を聞いたうえで許可を賜り、私は目を開いて指を地面に着けて告げます。
「報せよ.....芳香〈おとない〉」
奇跡を告げた瞬間、私の指から地面全体へと爽やかなミルクの香りが広がっていきます。
するとどうでしょう、マンマルコッコ達の体から大小の虫が慌てたように飛び出してきました。
致命的でなくとも痒みや不快感をもたらす寄生虫がいなくなり、マンマルコッコ達は随分と満足気です。
牧場主が言うにはマンマルコッコにとっての不快感はそのまま肉の味に繋がるらしく、年に何回かはこのような害虫駆除を請け負っています。
「いつもありがとうな、ティファレトさん」
「これで良いでしょうか?」
「充分だ。ウチのコッコ達は色んなところに卸しているからな。味の劣化は牧場の評判にそのまま響くってんで助かるぜ」
「それほどに変わるのですか?」
「実際のところ、食えなくなるほどじゃない。だけど王都にも卸してるんでな、ケチはつけられねぇ」
「なるほど」
もしかすると、アメリアもここのマンマルコッコを調理しているかも知れませんね。
「今後ともよろしく頼むぜ!」
「はい」
最大のマンマルコッコ牧場なだけあって、依頼料も相応に払ってくれました。
ふむ、少し懐かしさが心にありますね。
帰りに子ども達へ焼き菓子でも買うとしましょうか。
......子ども達も、焼き菓子を見てアメリアを思い出すのでしょうか?そうであるならば、私も一歩、人間に近づいたと言えるのかもしれませんね。




