とにかく光が欲しいなら私まで
ハルフォンソの街からこんにちは。ティファレトです。
今日もお仕事を探す為、冒険者ギルドへとやってきました。
相変わらず、ここは騒がしいですね。
とはいえ、ここが静かな時は緊急事態がほとんどですので、騒がしいぐらいで良いかもしれません。
「こんにちは、ティファレトさん」
「こんにちは、ロールさん」
いつもの調子でいつもの挨拶。
「ティファレトさんに是非解決したい依頼がありまして.....」
はて、何でしょう?
「こちらを」
ロールさんから依頼書を渡され読んでみると、実験の為にとにかく強い光が欲しいと王立研究所の学者さんからの依頼でした。
確かにこれは私向きの依頼です。
随分と羽振りも良いようですし、受けない理由はありませんね。
「受けましょう」
「良かった。結構、有名な方でして。受けてくださるかどうかで、こちらの評価も変わるところだったのです」
ホッとした様子でロールさんが胸を押さえています。
さて、それでは滞在している宿に出向くとしましょう。
「おお!貴女が話題となっているティファレト女史ですな?吾輩はライト・アカルーですぞ」
「こんにちは、ティファレトです」
短髪に白衣、尖ったアゴ髭が特徴的な方ですね。
「吾輩は火以外でも灯りを作り出せないか研究していましてな。ティファレト女史には噂の奇跡で出来るだけ強い光を見せて欲しいのですぞ」
「もちろん可能ですが、どうしますか?眩しくしないようにも眩しくするようにも出来ますが」
「ふむ、光量は変わらないのですかな?」
「変わりません」
「では、両方を頼む事は?」
「大丈夫です」
好奇心が凄いですね。それにしても、火以外の灯りですか。
私も奇跡以外では見た事ありませんね。
「素晴らしい!では、よろしく頼みますぞ!」
「はい。では、まずは眩しくないほうで」
早速跪き、神へと祈りを捧げます。
音が消え、感覚が消え、ただただ祈りに没頭した果て、神からの許可を賜ります。
「光あれ......」
そして立ち上がり、右手を天に、左手を腰に添えて姿勢を決めて告げます。
「光輝〈そうせい〉」
瞬間、私の指先から強烈な光が放たれ、宿の全てを塗りつぶします。
この為に宿は貸切にしているらしく、ライトさんの研究に対する姿勢が見えますね。
「おおおおお!?」
ライトさんが両手を広げ、目を白黒としています。
「如何でしたか?」
「素晴らしい!神の奇跡の何と偉大なることか!吾輩感激である!」
そうでしょう、そうでしょう。神は偉大なのです。
「あれほどの光量でありながら全く眩しく無いとは、まさしく神の奇跡ですな。おお!神は偉大なり!」
私、この方の事が気に入りました。
「それでは、次は眩しいほうで。目は閉じたほうが良いですよ?」
「あれほどの光量では閉じていても観測出来そうですな。よし!」
ライトさんが目を閉じるのを確認し、再び祈って許可を賜り例の姿勢をとります。
「光あれ.......光輝〈そうせい〉」
「ぬわーーー!!」
ライトさんが膝を震わせながらもなんとか立っています。
凄いですね、腕利きの盗賊でも蹲る光なのですが.....。
「大丈夫ですか?」
「な、なんとか大丈夫ですぞ。ふむ、いや、しかし、これは......よし!」
手を動かしながら思考にふけっていますね。
「ティファレト女史!この度の協力、真に感謝しますぞ!実に多くの発見と学びを得られましたぞ!」
「良かったです」
「ひとまず、今回はここまでで、また必要があれば依頼してもよろしいですかな?」
「もちろんです」
「今回の報酬は既にギルドに預けてあるゆえ受け取ってくだされ。ぬおおお!早く吾輩の思索を書き留めねば!」
そう言ってライトさんは机に向かい、高級な紙にペンを走らせました。
随分と夢中なようで、私の声も聞こえていません。
.....取り敢えず、依頼は成功で良いのでしょう。ギルドへ戻りましょうか。
「ありがとうございます、ティファレトさん。依頼人から依頼料を預かっていますよ」
受け取った依頼料は盗賊退治よりも多く、実に良い収入となりました。




