虫下しは年中無休
ハルフォンソの街からこんにちは。ティファレトです。
今日のお仕事も終わり、他に予定が入っているわけでは無いので教会へと戻ってきたのですが、あら?いつもより灯りが明るいような?
「戻りましたよ」
「あ、帰ってきた」
「おっす、ティファレト」
迎えてくれたのはジョンと、何故かザバンさんです。
「ザバンさん、こんにちは」
「おう。帰ってきたところ悪いんだが、頼み事があってな」
「何でしょう?」
ザバンさんが私に頼み事とは珍しいですね。
「そいつらの虫下しをやって欲しいんだ」
「うぐぅ、気持ち悪い」
「ぐ、う、ああ」
ザバンさんが指さす方を見れば、明らかに若い男性が2人、腹を抱えたり横になったりして苦しんでいます。
「鉄階級に上がりたての後輩でな、覚えてないだろうが以前挨拶させた奴らだ。例によってモツグイバチに寄生されたんだが、診療所はまだこいつらには払える額じゃなくてな」
「それで私ですか」
「すまねぇな。これもこいつらのとっての経験になる。礼は水ブドウを木箱でどうだ?それならこいつらでも払える」
「はい、大丈夫です」
「よし、やってくれ」
「はい」
男性達の前で跪き、意識を深く深く祈りへと向けます。
音が消え、思考が消え、ただただ神への感謝で心を満たし、奇跡の許可を賜ります。
「報せよ.....芳香〈おとない〉」
奇跡を告げる言葉を世に出すと同時、私の体から爽やかなミルク臭が立ちのぼります。
「んがごご!?」
そして特に強く臭う私の指先を男性の口に突っ込み、喉奥で少し待機.....してから指を引き抜きます。
「おごげぇええええ!!」
出ました出ました、大量の幼虫です。
「うわ、こんなの入ってたのか」
「目を背けてはいけませんよジョン。トルンの森は兵士になった後は入るでしょうから」
危険な森ですが、食糧や素材の豊富な場所なので、必ず任務で入る事になるでしょう。
「さて、もう1人ですね」
「ひぃいいい」
「しょうがねぇな。ティファレト、俺が押さえておくから頼むわ」
怯えて口を閉ざす男性をザバンさんが羽交い締めにしながら口を開かせてくれました。
「では......」
もちろん、もう1人の男性もしっかり寄生されていましたね。
「ふぅ、ありがとうなティファレト。こいつらは....今は礼が出来る状態じゃねぇか。改めて後日、礼をさせるよ」
「はい」
「さて、こいつらを送って俺も帰るわ。ツィツィーも待ってるしな」
「ザバンさん、少し待ってください」
「ん?」
ザバンさんに少し待ってもらい、自室からヒマワリ酒を持っていきます。
「これをツィツィーさんに」
「これは、ヒマワリ酒の3年物じゃねぇか!良いのか?」
「はい、結婚した人には贈り物をと聞いたので」
「良く手に入ったな?」
「こういった人助けをしていると、何かと貰える事がありまして」
アメリアが第三王子殿下の宮でよく働いているらしく、保護者への礼として贈られてきたのですよね。
私では飲めませんし、飲める人に渡る方が良いでしょう。
「詮索はしないでおく。とにかく、ありがとうな!」
そうしてザバンさんは2人を抱えて帰っていきました。
ふむ、すっかり遅くなってしまいましたね。
ひとまず、水ブドウを食べて......。
「ティファレトさんはいるか!?」
.......お休みの日を設けたほうが良いでしょうか?




