恋愛や政略だけが前提ではない
ハルフォンソの街からこんにちは。ティファレトです。
本日の仕事も終わり、冒険者ギルドへと戻ってきたのですが、ツィツィーさんが机に項垂れていますね?どうしたのでしょう?
「こんにちは、ツィツィーさん」
「あ....ティファレト〜、こんにちは」
「随分と元気がありませんね?お酒でも失くしましたか?」
「ううん、そうじゃないの。私のね、友達が結婚してさ、落ち込んでるんだ」
「喜ばしい事なのでは?」
結婚をする事で喜ぶ女性を多く見てきましたよ?
ツィツィーさんにとっては友人の結婚は喜ばしい事では無いのでしょうか?
「友達が結婚したのは嬉しいし、祝福してる。でも、友達の間柄で結婚してないのが私だけになっちゃって」
「ふむ」
後れを取ったという事でしょうか?
「私ももう24だしさ、そろそろ行き遅れっていわれる頃だからさぁ。はぁー、結婚したいなぁ」
「番の希望はあるのですか?」
「番て.....間違っては無いけどさ。結婚しても冒険者はしたいし、お酒は飲みたいな。それに、家事は普通だし、体は小さいし胸も小さいし、そういうのに文句を言わない人が良いな」
「見た目には拘らないのですか?」
整った顔立ちの男性は婦人会では大変人気です。
「そんなに気にはならないかな?ちゃんと仕事をしてて、人を馬鹿にしないような人が良い」
「ふむふむ。それならば、該当者が1人いますので呼んで来ましょう」
「へ?いるの?」
彼なら条件を満たしていますし、折良くこの場にいますので、早速聞きに行きましょう。
「ザバンさん」
「お?ティファレトか。どうした?」
戦闘能力のみが足りずに銅階級には昇級出来ない鉄階級の優秀な人こと、ザバンさんです。
彼なら条件を満たしているのではないでしょうか?
「ツィツィーさんと結婚しませんか?」
「ぶほっ!?きゅ、急にどうした?」
「実は.....」
ザバンさんに事情を説明します。
「なるほどな。確かに俺に条件は当てはまってるな」
自由主義かつ基本的に人を尊重している方ですので、ツィツィーさんのあげる条件を満たしています。
「まぁ、俺も27だし、身を固めるには良い時期ではあるな。とはいえ、まずはお互いの気持ちの確かめ合いだぁな」
ザバンさんが椅子から立ち上がり、ツィツィーさんの元へと向かいました。
「ツィツィー」
「へ?条件に合うって、ザバン?」
「ツィツィー、俺はスケベだし、戦闘能力は並だし、稼ぎだってお前さんに比べりゃ低い。だが、お前のしたいようにはさせるし、家事だって俺の方がたぶん上手いから任せっきりにはさせねぇ。どうだ?」
「私、胸小さいよ?」
「女は胸だけじゃねぇ。まぁ、デカいのが好きなのは否定しねぇがな」
「殴るよ?」
「そりゃ理不尽だろ」
「お酒いっぱい飲むし、結婚してからも冒険者も続けるよ?」
「構わねぇ」
「娼館も浮気も無し」
「なら満足させてくれ」
「.......仕方ないか」
「ツィツィー、俺はお前を信頼に足る奴だと思ってるし、今はお前が良いと思ってる。ツィツィーはどうだ?俺じゃ駄目か?」
「......良いよ。私、ザバンと結婚する。これからよろしくね」
「おう、俺のほうこそよろしくな」
ザバンさんとツィツィーさんが握手を交わしました。
「おめでとうございます、お二人とも」
「マジかよ!おめでとうテメェら!」
「ザバンとツィツィーがなぁ......」
皆さん、聞き耳を立てていたようで、ギルド内が歓声包まれました。
「よーし!1つ悩みが消えたし、飲むわよ!」
「俺もたまには飲むか」
この日、ギルドは夜中まで宴騒ぎだったようです。
私は子ども達が待っていますので途中で帰りましたが、幸せそうな雰囲気でしたね。
本では結婚は政略か恋愛かなのですが、こういった結婚の形もあるようです。
人間は、実に複雑で面白い生き物だと再認識しました。




