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防具を買い替えよう

ハルフォンソの街からこんにちは。ティファレトです。

本日はハルフォンソの街から東にあるトルンの森で果物の採取をしています。

奥地は危険、果物は全て生食不可と危ない森ですが、外周部かつ銅階級相当の実力者であれば充分に探索は可能です。

生っている果物はもれなく全て寄生虫入りの果物なのですが、蒸したり煮たりすると安全になり、かつ、非常に甘みが強い果物である事が多く、高級菓子の原料の一つとして扱われます。

とはいえ、油断は禁物。

外周部であっても、樹上から石を抱えて落下しては他生物の頭を砕きにかかるカチワリザルはいますし、硬い皮膚と突起だらけの体で突進して重傷を負わせるイワイノシシもいます。

それらに見つからないように、そして見つかった時には.....。


「ぐぎゃあ!」


こうして余裕を持って返り討ちに出来なければなりません。

トルンの森での死因圧倒的多数であるカチワリザルの奇襲も、事前に察知していれば対処は可能。

空振りして着地した隙を狙い、頭を逆にかち割りましょう。


「あ...」


メイスで猿の頭を砕いた瞬間、嫌な予感のする音と共に私の胸が締め付けから解放されました。

どうやら皮鎧の留め具が壊れてしまったようです。

防具が不充分なまま探索するのはあまりに危険。

目標数には到達していますし、今日は早めに切り上げて防具を買い替えるとしましょう。


「こんにちは、テッシンさん」


「あ?ああ、ティファレトの嬢ちゃんか」


依頼報告を済ませ、やってきましたのはテッシン武具工房。

親方であるテッシンさんと、複数の弟子の人達、それらの奥さんで成り立っている工房で、堅実な仕事ぶりに定評のあるお店です。


「皮鎧が壊れてしまいまして、良い機会ですし買い替えようかと」


「ふむふむ、壊れたのは皮鎧だけか?」


「はい」


「見せてみろ」


「はい」


皮鎧を渡すと、テッシンさんは色々な角度から見たり叩いたりして確かめます。


「胸の部分に窮屈さは無いか?」


「少しあります」


「なるほど......よし、採寸をするからあっちで測れ」


「はい」


別室に行き、奥さん達に体を採寸してもらいます。


「胸が更に大きくなってるね......え、まだ大きくなるの?」


「なのに腰はそのまま......どういうこと?」


色々と騒がれながら採寸をしてもらい、しばらくしてからテッシンさんに呼ばれます。


「着けてみろ」


新しい皮鎧を言われた通りに着けてみると、随分と窮屈さが減っていますし、肩周りの負担が大きく減っています。


「どうだ?」


「随分と負担が減っていますね。防具としての性能は変わらずですか?」


「外傷への耐性は以前のままに、そのデカい胸からの負担を鎧と嬢ちゃん両方から軽減させた。留め具は以前とは比べもんにならんほどに頑丈になったぞ」


「凄いですね」


「以前、ヒトモドキの騒動があっただろ?その素材の一部がウチにも流れてな。それを留め具に使えばこの通りってわけよ」


ヒトモドキの外殻は柔軟かつ頑丈ですが、職人泣かせと言われるほどに加工が難しいとされます。

それをこの短時間かつ私の特異な体型に合わせて作るとは、テッシンさんの技術力には賞賛の他ありません。


「でだ、値段なんだが」


「ふむ」


以前の鎧と比べると格段にお高いですが、以前と違って積極的にお金稼ぎをしている今ならば払えない金額ではありませんね。


「問題ありません。これでお願いします」


「よしきた。何度も言うが、こまめな手入れを忘れるなよ?」


「はい」


実に良い買い物をしましたね。

最近は華やかな意匠も増えているみたいですが、やはり命懸けである以上は実用性が1番です。

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