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同じ相手ばかりは飽きる

ハルフォンソの街からこんにちは。ティファレトです。

今日も今日とて、朝の鍛錬を行い、ジョンとの模擬戦に付き合っています。


「ぜぇー、はぁー。あ、ありがとうございました!」


普段は私に丁寧な言葉を使わないジョンですが、鍛錬の時だけは別です。

なんでも、師匠にあたるかららしいのですが、果たして私の槌振りがジョンの技術向上に役立っているのかは分かりませんね。

今でこそ私が圧倒していますが、まだ10歳でありながら既に鉄階級相当の実力を培っているので、もしかすると成人前には私は敵わなくなっているかも知れません。


「なぁ......シスター」


「どうしました?」


井戸水を浸したタオルで体を拭きながら、ジョンが私に話かけます。


「シスターって、銅階級の中じゃ1番弱いんだよな?」


「はい」


「それさ、全然実感湧かないんだよ。相変わらず俺はシスターから1本とれないのに、それでも1番弱いってさ」


「ふむ」


「だからさ、1回でも良いからシスター以外とも模擬戦をしてみたいなぁって」


「そうですね。私が相手だけですと色々と偏るでしょうし。私の知り合いに聞いてみましょう」


「本当?やったぜ!」


基礎能力と補助能力で銅階級にいるのであって、私は特別戦闘技術を持っているというわけではありません。

ジョンが目指している兵士になれるように、一度だけでも強者から学ぶのは大事でしょうし、冒険者ギルドに行った際に掛けあってみましょうか。


「と、いうわけでお連れしました。ジードさん、お願いします」


「おう!この坊主がティファレトんとこのだな?兵士になりたいんだってな!」


「ジ、ジジジ、城塞のジード!?本物!?」


ちゃんとした本物ですよ。

冒険者ギルドに向かう途中でジードさんとばったり会いまして、鍛錬の件を伝えますと快諾してくれました。

銅階級ではなく銀階級ですが、実力も技術も高い事に越した事は無いでしょうし大丈夫でしょう。


「見たところ、鉄階級相当ってとこか?随分と鍛えてやがる。坊主、今いくつだ?」


「え、あ、えっと....10歳です」


「ほう!その年で大したもんだ!ティファレトの指導の賜物だな」


「そ、そんな......えへへ」


何ですか?ジョン、その照れ具合は。

私が褒めてもそんな姿を見た事ありませんよ?


「基礎鍛錬はそのまま続けるとして、俺に求められてんのは剣の技術と目標だな?本来の武器じゃねぇが、まぁ大丈夫だろう」


普段は短槍を使っているジードさんですが、最も突出した得意武器がそうなのであって、他が使えないというわけではありません。武芸百般です。


「よし、好きに打ってこい!」


「はい!よろしくお願いします!」


少し怯えながらもジョンが木剣を振り、ジードさんに打ち込んでいきます。

良い振りは受け、隙の多い振りは事前に木剣で押さえる事で自然と戦い方を覚えさせていますね。私も勉強になります。


「よし、次は俺が打ち込むから受けるか流せ」


「はい!」


ジードさんの苛烈な打ち込みがジョンを襲います。

非常に手加減はしていますが、手心は加えていません。

受けれた振りはそのままに、反応出来ていないか受けれていない振りは何度か同じ振りをジードさんはしており、それをジョンは反復して覚えていきます。

技術、体力、思考全てを使う鍛錬ですね。実に厳しい。

ですが、ジョンはとても楽しそうです。


「よし、そこまで!」


「あ、ありが ......ありがとう、ございました!」


打ち身やら土埃で散々な見た目ですが、得るものの多かった目をしていますね。

ジードさんに頼んで正解でした。


「ジードさん、ありがとうございます」


「良いって事よ!ティファレト、この坊主は強くなるぜ。もしかしたら、俺よりもずっとな」


「それほどにですか?」


「ああ。兵士になってくれるってんなら有り難い話だ。ウチで囲い込みたいぐらいだぜ。......孤児か?」


「はい」


「そうか」


何か考え込んでいますが、引き取ってくださるならジードさんならば歓迎ですよ?

貴族の方ですし、難しいですかね?

なんだかジョンを気に入ってくれたようですし、これからは度々お願いしてみましょう。

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