人狩り
トルンの森周辺からこんにちは。ティファレトです。
今日はお仕事で沢山の薬草を採取しに来ています。
発熱や怪我、虫下しに料理の風味付けなど薬草は人々の生活に欠かす事は出来ません。
基本的には栽培をしているのですが、どうしてもそれが出来ないものがあり、それでいて危険地帯に生えていたりするので、そんな時こそ冒険者の出番というわけです。
「?」
必要な薬草を採取したのは良いですが、空気が変わったような?
何かに、そう、狙われているような気配がしますね。
「!!」
矢が飛んできたのでメイスで叩き落とします、が、数が多いです。
急所こそ避けましたが、1本ふくらはぎに刺さりました。
「う......」
痛みとは別に脱力と倦怠感。これは、毒矢ですね。
「弾かれた時は焦ったが、無事刺さってくれたな」
「初手に全力不意打ちがやっぱ1番だな」
「ヒヒヒ.......」
膝をついた私の周りを3人の男性が取り囲みました。
冒険者、ではないですね。
「あの方が捕まってどうしたもんかと思ったが、この女を剥製にして売り込めば新しい買い手なんてすぐに見つかるぜ」
「見た事もねぇ美人だからなぁ。剥製にする前に楽しもうぜ」
「良いねぇ良いねぇ」
私を殺した後、剥製にして誰かに売りたいようですね。
ふむ.....周囲に他に人影は無し。
「あなた、達は?」
「俺達3人組は泣く子も剥製にするバルガン兄弟だ!これから俺達とよろしくした後、剥製になってもらうんだからな。良い稼ぎになってくれよ?」
他に隠れてもいない。
ならば、仕方ありませんね。神?少しお目汚しを致しますよ。
擬態、解除。
「あ?いてっ!ぎぃいいいいい!?」
「あ、兄貴!?ぎゃああああ!」
「な、な、なんだこの化物!?ぎぃ!」
私の背中から大小の触手が服を破きながら飛び出し、先端の針を男達に刺しながら大きく発達した4本の腕で押さえ込みます。
「あぎゃああああ!か.....!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
「げ.....ぎ.....!」
大量の針から注入するのは神経毒と消化液。
体の自由を奪いながら内部を溶かしていきます。
まだ、街の人達に私の正体を知らせるつもりはありませんので、証拠は徹底的に消します。
「〜〜〜〜〜ッッ!!?」
体の内部を溶かし、ある程度柔らかくなったのを頃合いに肥大した私の体が縦に裂け、断面にヤスリのような歯を大量に形成。男達を削りながら体を閉じて呑み込んでいきます。
「ひゃ......ひゃひゅけへ」
「ひやは.....ひやだ」
「あ....あ.....あ」
ああ、不味い。
やはり私は水ブドウが良いですね。
「ティファレトさん!大丈夫でしたか!?」
冒険者ギルドに戻ると、切羽詰まった様子のロールさんが私の無事を確認してきました。何かあったのでしょうか?
「はい」
「良かった.....。先ほど、国からバルガン兄弟という極悪人についてのお触れがでまして。なんでも人を殺して剥製にして売るのだとか。買い手の貴族は処刑されたのですが、肝心のバルガン兄弟は逃走中でして」
「なるほど」
「しばらくは冒険者も単独行動は禁止となりまして.....彼等はお揃いの指輪を着けているとも報告があります。くれぐれも気をつけてください」
「それは、この指輪ですか?」
私は特徴的な指輪をロールさんに見せます。
「これは!いったいどこで?」
「トルンの森周辺の薬草自生地帯に落ちていました」
「なるほど。あの一帯は危険な生物もいますし、可能性はありますね。早速、上に報告してきます。ティファレトさん、くれぐれも気をつけてくださいね!」
「はい」
きっと、恐ろしい怪物に襲われてしまったのでしょう。
神?そろそろ頭痛を治めてくれるとありがたいのですが?




