平和(周りの環境が厳しい)な街
ハルフォンソの街からこんにちは。ティファレトです。
今日は珍しく市場に来ています。
それというのも、珍しくハルフォンソの街に大規模の商隊が来ているからですね。
ハルフォンソの街及びサンレイン王国に人間同士の戦争が少ないのには理由があります。
西は全容が分からないほどに環境が厳しく生息動物が強いタラッタ沼。
東はやたらと虫の多いトルンの森。
南は踏破可能ですが環境の厳しいアダン砂漠。
北だけは環境も生物も穏やかなグリテン平原。
もうお分かりですね?サンレイン王国に攻め込む国が少ないのは、北から攻める以外に無いからです。
その北にもグリテン平原を越えた先にはムーンドルドという国があります。
平和なのは良い事ですが、欠点もあります。
このような立地の為、国交や商隊が非常に少ないという問題があるのです。
ムーンドルドとは頻繁に国交をしていますが、それ以外とは関係が浅く、文化的繋がりも無い。
つまり、今日のように大規模商隊が来るというのは滅多に無いという事です。
「どうだいどうだい?珍しい品がいっぱいだよ!」
市場はまさに大賑わい。
冗談では無く、ハルフォンソの住民の大半がこの場に集っているのでは無いでしょうか?
ハルフォンソでは見かけ無い食物、武具、趣向品。
どうやらこの商隊はトルンの森を越えてきたようで、以前私が虫下しをした一隊が帰還した後、このハルフォンソの街に目をつけたようです。
実際、トルンの森は寄生虫やカチワリザルに気をつければ踏破は充分に可能な地域な為、何度も通って方法を確立するのは良いかもしれません。
「おや?」
あそこで売っているのは、随分と小ぶりですが水ブドウでは?
「姉ちゃん、コレが気になるのかい?これは水ブドウの1種で甘水ブドウというんだ」
「水ブドウではあるのですね?」
「そうだ。水ブドウよりも小さく水分も少ないが、非常に甘いのが特徴でな。小さい分、持ち運びやすいし栄養もあるから、俺等の国の冒険者には人気なんだ」
「なるほど。種はあるのですか?」
「もちろんあるぞ。水ブドウと隣接しても大丈夫だ」
「では、実と種を売ってください」
「ありがとうよ!姉ちゃんは美人だし、少しオマケしとくぜ!」
「あら、ありがとうございます」
これは是非とも食べてみなければなりません。
それでは、一口。
「確かにかなり甘いですね」
「だろう?何度も食うと飽きちまうから少しづつが良いな」
水ブドウから水分と酸味を多く減らし、強烈な甘みを追加したような味わいですね。
水ブドウと交互に食べれば幸せになれるでしょう。
「シスター、何してんだ?」
「あら、ジョン。甘水ブドウの種を植えているのですよ」
早速私は教会に戻り、水ブドウの木の隣に種を植えました。育った時が楽しみです。
「それは良いんだけどよ、アメリアが包丁買って来てって言ってなかったか?」
「あ......」
すっかり忘れてましたね。
アメリアが怒る前に市場に戻って買ってくるとしましょう。
どうにも水ブドウが絡むと他が疎かになってしまいます。




