最高級肉は命懸けだからこそ最高級(前編)
ハルフォンソの街からこんにちは。ティファレトです。
今日は私はお仕事探しの為、冒険者ギルドに来ています。
「あっ、来た。おーい!ティファレトさん!」
あら、レシートさんが呼んでいますね。
何かあったのでしょうか?
「ティファレトさんが来たか。こりゃありがたいぜ」
ダーツさんまで。いったい何でしょう?
「どうしたのですか?」
「実は、貴族の人からの依頼でさ。ワタリウシの肉を取りに行くんだ」
「随分な大物ですね?」
「今、グリテン平原に群れが来ているらしくてな。王家のパーティーが近いらしいし、ここぞとばかりの依頼って訳だ」
【ワタリウシ】
特定の場所に定着せず、非常に大規模な群れを維持しながら各地を移動する牛なのですが、問題は個としても強靭かつ大きく、群れの規模が凄まじいことにあります。
雄は人間の倍以上は大きく、雌はそれよりも一回り小さい。
更には筋肉と脂肪の密度が高く、中々殺す事が出来ない上に、群れの個体が脅かされると周りの個体も反撃して来ます。
正直、敵対するべきでは無い生物です。
幸いにも非常に少食かつ寿命も短いので、人間が住処を脅かされるというわけではありません。
話によりますと、その肉は非常に美味であり、捨てるところが一切無いのだとか。
ちなみに、寿命で死んだ個体は著しく味が低下するらしく、ワタリウシの捕獲のほとんどは群れからはぐれた子牛です。
そういえば、以前に読んだ本にワタリウシは雄牛が最も美味であり、そこから雌牛、子牛と味の序列があると書いてありましたね。
もっとも、雄牛の味に関してはもはや昔の記録にしか無い様子ですが......。
「なるほど、それで私ですか」
「そういうこと!子牛1頭分で充分らしくて、ロールさんからはこれくらいの成功報酬を言われてる」
これは.....なんとも大盤振る舞いです。
1人1人が本を10冊買えてしまうではありませんか。
受けないのはあまりにも勿体無いですね。受けましょう。
「受けましょう。ロールさん、手続きをお願いします」
「わかりました」
「作戦はこうだ。ティファレトさんが奇跡で群れに隙を作り、その間に俺とレシートが1頭を攫って撤退。どうだ?」
「俺はそれで良いぜ」
「私も異論ありません。ですが、どうせなら雄牛を狙いませんか?」
「.......理由は?」
「以前読んだ本に、雄牛が最も美味しいとありましたので。成功すれば報酬も良くなるでしょう、と」
「うーむ、雄牛かぁ」
「流石にヤバくないか?」
「私が隙を作り、お二人が一撃で雄牛を殺して持ち去る。どうです?」
「ダーツ先輩、どうする?」
「俺の筋力じゃあ、頭蓋で剣が止まるな.....レシート、刺した剣を釘打ちみたいに脳まで突き入れられるか?そこからのトドメは俺がする」
「たぶん、大丈夫だと思う」
「うし、決まりだ。頼むぜ二人共!それじゃあ行くか!」
いざ、ハルフォンソの北にあるグリテン平原へ。




