武器とロマン
「やっぱり槍よね」
「曲刀も捨て難い」
ハルフォンソの街からこんにちは。ティファレトです。
今私は診療所の依頼を終えて冒険者ギルドに報告しに来ているところです。
「やっぱ直剣だって!普通が1番だよ!」
今日は何と言いますか、喧騒に熱がこもっていますね?
いくつもの話題が飛び交うのでは無く1つに集約されているような.....。
「あっ、ティファレト!あんたはどう?槍よね?槍でしょ?」
「こんにちは、ツィツィーさん。槍ですか?」
妙に興奮したツィツィーさんがやけに槍を強調してきました。
何でしょう?確かにツィツィーさんは槍を使っていますが、私は使えませんよ?
「ようティファレトさん。今、1番強い武器は何かって話になっててな」
「お久しぶりです、ダーツさん。1番強い武器ですか」
ダーツさんは直剣を使っていましたね。
しかし、1番強いとはそもそも何なのでしょうか?
「そもそも、1番強いとは何を指すのですか?」
「む......」
「それは.....」
「威力!」
「射程!」
「汎用性!」
「何を!」
「やるか!?」
定義すら決まってないではありませんか。
「ティファレトはメイスよね?」
「はい。狙いが雑でも良いので便利ですよ?」
「確かにどこ殴っても痛手になるのは便利だよな」
とにかく力任せに殴れば良いですからね。
細かく狙いをつけるなんて器用な真似は出来ませんので、鈍器類は私に合っています。
「籠手も良いんだけどな.....」
沈んだ雰囲気のレシートさんがか細い声で何かを言っていますね。
レシートさんは確か籠手でしたが.....あれは使える人は限られるのでは?
「結局の所、どのような武器も使い手次第では?」
「......はぁ〜〜〜」
「ティファレトさん.....それを言っちゃあ駄目だ」
何でしょうか?皆さんから酷く落胆の気配を感じるのですが。
「良いか?ティファレトさん。俺達は最強の武器にロマンを感じてるのであって、最強が使えばどれも最強って話は認められないんだ」
「はぁ、ロマンですか」
「ロマンだ」
「例えばティファレト。あなたは水ブドウが好きだよね?」
「大好きです」
「世界で1番美味しい水ブドウと、世界で1番の農家が作った水ブドウは同じじゃないでしょ?」
「!!......確かにそうです」
衝撃が私の全身を駆け巡りました。
なるほど、確かにそれはそうです。
「私が無粋でした」
「わかれば良いの」
「そういうわけでティファレト。お前はどの武器が最強だと思う?」
静かに会話に混ざっていたバッシュさんに促され、最強の武器を考えます。
「難しいですね」
威力や射程、扱いや整備の単純さ。それらを加味しますと.....。
「私では振れませんが、巨大なメイスが最強かと」
「巨大な武器か、確かにな」
「まてまて、携行性はどうすんだよ?」
「失念していました」
結局、話は平行線で結論は出ませんでした。
それはそうと、例え話に出ていた世界一美味しい水ブドウというものは存在するのでしょうか?
あるのなら、是非とも食べてみたいですね。




