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皆にとってのシスター

私の名前はレベッカ。

代々続く国内の調査をする一家の娘であり、私自身も構成員だ。

今日は国の命令でここ、ハルフォンソの街に来ている。

この街は近年、ヒトモドキへの迅速な対処や、水ブドウを利用した化粧水の開発で注目を浴びており、どうもそのきっかけとなっている人物がいるとの事だ。

名前はティファレト。

この街の唯一の信徒との事らしいが、それでいて銅階級の冒険者らしい。

信徒自体珍しいというのに、冒険者も兼ねているとはよほど才のある人物なのだろう。

この調査の1番の目的は、そのティファレト氏が国にとって害とならないかを判断する為にある。

主要な人物には話を通してあるので、まずは彼らから話を聞き、後は民間人から聞いていくとしよう。


「ティファレトか。頻繁にはギルドには来ないが、真面目な仕事振りで助かっている」


冒険者ギルド長からの評価は悪くは無さそうだ。


「彼女は外見から舐められがちだが、ちゃんと銅階級の基準を満たしている。問題があるようには思えん」


人品卑しくは無い、と。


「ティファレトさん?彼女とチームを組んだ時は楽に終わる事が多いから助かってるわね」


彼女は弓のミリアーネ。

銀階級の冒険者であり、山を隔てた砦の指揮官を射抜いた話があまりにも有名な女傑だ。

こうして対峙するだけでも、その実力の高さが伺い知れる。

そんな彼女をして助かると言われるとは、ティファレト氏とはいったい.....。


「ティファレトかぁ。アイツほど奇跡を数多く行使出来る奴は見た事がねぇな」


なんと、ジークバルド・グランツ様からも話を聞く事が出来た。

現グランツ伯爵の弟君でありながら、銀階級冒険者という猛者!

人でありながら城塞が如しと呼ばれる、まさしくサンレイン王国の英雄の1人だ。


「ジークバルド様から見ても、ティファレト氏は優れていると?」


「よせよせ、ここじゃジードで通ってんだ。そうだな、ここの銅階級だとはっきり言って最弱だ。だが、多彩な奇跡による補助能力はピカイチだぜ」


「ピカイチ、ですか?」


「おう。補助能力に関してだけ言やサンレインで1番かもな」


「なんと.....」


ジークバルド様にここまで言わせるとは.....。


「ご協力、ありがとうございました」


「おう。お勤めご苦労さん」


他にも情報は無いものか....。


「ティファレトさん?いつも水ブドウ食べてる変人だよ」


私も子どもの頃は散々食べたな.....。


「ティファレトぉ?胸が反則過ぎる奴だよ」


む、胸が反則過ぎる?


「お産の時はとても助かってるよ。ティファレトさんがいるとそうでないとじゃ、安心感が違うぜ」


産婆の役目もこなしているのか?


「教会に行ったら、大抵祈ってるか、読書してるか水ブドウ食ってるかだな」


読書家なのか。

さて、事前情報はある程度集まったし、本人を直接見定めるとしようか。


「ごめんください」


私が教会の扉を軽く叩くと、少しして扉が開かれた。


「どちら様でしょうか?」


胸が.....反則過ぎる!

私は小さいわけでは無く平均的だが、それでもこの格差は酷い。

この胸の前では、一般に大きいと言われる人達のモノが小さい扱いをされてしまう。


「あの?」


「コホン....失礼しました。私、サンレイン王国の調査員であるレベッカと申します。色々とお聞きしたい事がありまして」


「私に答えられる内容ならば答えましょう。中へどうぞ」


促され、教会の中に入ると.....あれは、水ブドウか?


「食事の途中でしたもので。続きを食べても良いですか?」


「も、もちろんです」


何だろう?凄く調子が狂ってしまうな。


「何故、信徒になったのですか?」


「神の御声が聞こえたもので。気づけば信仰をしていたのです」


「そ、そうですか」


水ブドウをナイフとフォークで食べながら淡々と答えているが、神の声が聞こえた?


「この街や国の事はどう思いますか?」


「楽しいところですね。特に不満はありません」


なんというか、全く表情が変わらないから真意が分からない。

それに、瞬きがあまりにも少ない気がするんだが、気の所為か?


「食べますか?」


「いえ、結構」


水ブドウ2個目だぞ?まだ食べるのか?


「あれ?お客さん?」


「はい。ジョンも水ブドウを食べますか?」


この少年は、教会に住んでいる孤児か。


「いらねぇ」


「そうですか」


無表情ですが、不意に来た子どもに対しての態度は悪くない。

それに.....。


「ジョン君と言いましたか?あなたはティファレトさんをどう思っていますか?」


「シスター?う〜ん、変人」


「心外です」


「でも、俺らの母ちゃん」


「産んでませんよ?」


「分かってるよ!でも、引き取ってくれてるから母ちゃんみたいなもんなの!」


「そういうものですか」


「そういうもんなんだよ」


随分と子どもに慕われている。


「ティファレトさん。ご協力、感謝します」


「もう良いのですか?」


「はい。もう充分です」


あれだけ子どもに慕われているんだ。邪な者ではあり得ないだろう。

国へは良い報告が出来そうだ。

ところで、帰り際に水ブドウを貰ったのだが、どうしようか?

子どもの頃に散々食べて飽きてしまったんだが.....。

仕方無い、道中でゆっくり食べるか。

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