表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/51

冒険者は実力主義

ハルフォンソの街からこんにちは。ティファレトです。

子ども達との昼食も教会のお仕事も終え、今私は冒険者ギルドに来ています。

相変わらずの喧騒具合ですが、ここが静まりかえっているのは緊急事態の兆しなのでこれで良いのでしょう。

......今日は随分と人が多いような?

見慣れない人達も数多くいます。

とはいえ、目的は変わりません。

何か良い仕事は無いでしょうか?


「こんにちは、アニスさん」


「こんにちは、ティファレトさん。依頼の確認ですか?」


「はい」


今日、勤務しているのは赤髪を纏めた細目の女性アニスさんですね。


「残念ながら、めぼしい依頼はほとんどありません」


「そうですか」


夜ならばともかく、この時間帯で無くなっているのは珍しいですね。今日のこの人数が関係しているのでしょうか?


「実は今、他所の街の冒険者が流れてきてまして.....」


「このようになっていますと?」


「はい」


なるほど。随分と人が多いのはそういう事でしたか。


「ふざけやがって、どう考えても俺は銅の実力だろうが!」


一際大きな怒鳴り声が聞こえますね。大方、鉄階級の方でしょう。

鉄階級と銅階級の間には高い壁がある、というのが冒険者含め街の人や兵士の共通認識です。

実力ももちろんですが、協調性や有事の冷静さ等の能力も問われ、一つでも基準に満たないなら昇級は出来ません。

なので、冒険者ギルドの階級比率は鉄が最も多く、次に石。そこから急激に数を減らして銅、銀と続きます。

目安の一つではありますが、個人戦闘力に関しては銅階級は正規兵の兵士長以上と言われていますね。銀は超人です。


「おい!そこの胸がデカい姉ちゃん!あんたも銅らしいな?俺と模擬戦してくれや!」


「模擬戦ですか?」


この場や冒険者で胸が大きいと言うと、ほとんどの場合において私が当て嵌まるので振り向くと、そこには剃髪にした背の高い男性がいました。

見た事の無い人ですね。凶悪犯と言われれば納得してしまう面持ちですから、たぶん石階級か鉄階級でしょう。

それにしても模擬戦ですか.....別に良いのですが.....。


「お.....おう。何だよ?ジロジロ見やがって!」


「良いですよ。アニスさん、訓練場をお借りしますね」


「はい、どうぞ」


「お、ティファレトが戦うのか。久しぶりだし見に行くか」


「おいおい、鉄階級とだぞ?面白くはならねぇだろ」


「いや、ほら、揺れとかさ」


「......俺も見に行く」


「なぁ、あんたら。銅階級っても、あの姉ちゃんが強そうに見えねぇぞ?心配しねぇのか?」


「問題無い。ティファレトは銅階級としては個人戦闘力は最低限だが、それでも銅階級だ」


鍛錬にはならないでしょうし、準備運動のつもりで戦うとしましょう。


「戦闘不能、あるいはそれに値する状況になれば勝負有りだ。分かったな?」


「はい」


「へっ、こんな女が銅なんざありえねぇ。目にもの見せてやる!」


訓練用の皮鎧を身に着け......洗ってますかこれ?着けないで良いでしょう。

ひとまず、木の棍棒だけを手にします。


「あぁ!?舐めてんのか!!」


彼は皮鎧に小盾、正規兵の直剣と同じ大きさの木剣ですね。


「手加減しろよー、ティファレト」


「いや、激しく動いてくれティファレト!」


いつの間にか観戦する人が増えましたね。

激しくは動きませんよ?そこまで動く必要性がありません。


「.....始め!」


「おらぁああああ!!」


始まりの合図と共に男性がこちらへ迫ってきます。

それにしても遅いですね.....私の首辺りへと振り下ろそうとしている剣を前に進む事で回避し、そのまま下から男性の頬に向かって棍棒を振り上げます。


「ごべぇ!!?」


「勝者、ティファレト!」


意外と吹っ飛びましたが、頬ですし加減をしたから大丈夫でしょう。

......怪我も無さそうですね。


「あーあ、もう終わっちまった」


「おいいい、もっと動いてくれよー!」


「は?え?マルコ?嘘だろ?」


「分かったか?これが鉄と銅の差だ。勘違いするなよ?これでもティファレトは銅の中でも個人戦闘力は最低限だ」


そうなのですよね。

私は奇跡による補助能力は優れていますが、個人戦闘力は銅階級の中では御世辞にも強くありません。

それでも、鉄階級が相手になるかというと、ならないのです。


「お疲れ様です。はい、こちら、協力代金です」


「これは?」


アニスさんが私の手にお金を握らせます。

結構な量ですね?何なのでしょう?


「実は質の低い冒険者が一気に増えた事に対する引き締めを企画していたのですが、ちょうどティファレトさんが来たので.....つまりは迷惑料です」


「なるほど、分かりました」


銅階級での最低限を見せつける事による見せしめだったというわけですね。

この程度であれば時間が許す限り協力しますよ?


「それで、相談なのですか。これから暫くは協力してくださいませんか?もちろん謝礼金は用意します」


「はい、大丈夫ですよ」


暫くは気楽にお金が稼げそうで何よりです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ