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老いと死

ハルフォンソの街からこんにちは。ティファレトです。


「彼の者の魂が神の御手にて救われますように」


「.......」


私の言葉に合わせ、参列した皆さんが静かに祈りを捧げます。

今朝、長く親しまれてきた居酒屋の店主ドブローさんが亡くなりまして、急ではありますが私の教会でお葬式をあげているという訳です。

特に大きな病も無く、今朝冷たくなっていたという事なので、恐らくは寿命でしょう。

人の寿命は60〜70年ほどだと聞きますが、私はどうなのでしょうね?

コレに関しては神はお答えくださりません。

ところで神?ドブローさんはそちらへ着きましたでしょうか?

あっ、無事着いたみたいですね。良かったですねドブローさん。


「それでは、最後のお別れをお願いします」


「うぅ....親父ぃ」


「ドブローさぁん」


皆さんが思い思いに別れを告げます。

この後は遺体を燃やし、専用の墓地へと埋葬される手筈です。

始め、遺体を燃やすという行動には大変驚きましたね。誰の糧にもならないので。

しかし、死体に群がって動かす虫や、死体を好む凶暴な動物の襲撃を避ける為なのだと聞き、今は感心しています。

私が死んだ場合は、この見た目は維持されるのでしょうか?

それとも、本来の不定形の何かに戻るのか......。

この姿は神からお褒めの言葉を頂いていますので、出来れば死んだ後も保持してほしいですね。

老いに関しては、どうなのでしょうか?

生まれてそろそろ10年になるのですが、見た目だけは20歳の人間のメスです。

どうも細胞の入れ替えが激しいせいか、老化をしている感じがしないのですよね。

しないならしないで身体能力が落ちないので好都合ではありますが、他者との齟齬が生じるのが良くありませんね。

......いつかは正体が露呈するという事ですか。

そうなっても良いよう、日頃から皆さんの役に立たねばなりませんね。

人間は排他的ですが一度認めれば懐が深いので、そこに落ち着ければ大丈夫でしょう。


「うああああ」


「ひぐっ.....ひぐ」


ドブローさんの遺体が灰となっていきます。

お酒が入ると話が長くなるドブローさん。

値切ろうとした石階級を殴り飛ばしたドブローさん。

若い頃はモテたと言っては孫に疑われていたドブローさん。

色々な思い出が頭を過ぎります。

肉体は灰になり、魂は神の御下へと向かい、ドブローさんはもう、ここの何処にもいません。

それでも、思い出は確かにあります。

これも....1つの生きた証という事なのでしょうか?

今の私には、まだ難しそうです。

.....まずは、そうですね、生きましょう。

生きていれば、答えを知る機会に恵まれるでしょうから。

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