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死神ルカと曖昧な空  作者: 夜空木春
3/6

第3話 死神に誕生日を

学生さんはもう夏休みですか。時間があるっていいですね。そういえば誕生日って意外と当日自分が誕生日だってこと覚えてないんですよね。もしかしてこれって歳かな…なんてね。

7月28日 午前10時39分。

俺は、自分の誕生日だということをようやく思い出した。それと同時に、ふと疑問が浮かんだ。

「なあ、死神って……誕生日ってあるのか?」

軽く尋ねたつもりだったけど、ルカの反応は思ったよりも静かだった。

「うーん……わかんない。いつ生まれたのかも、記憶にないし」

その言葉に、なぜかほんの少しだけ、寂しさのようなものが滲んでいた。

だから――思わず、こんな提案をしていた。

「じゃあさ、今日を誕生日にしようよ。俺とルカが出会った日。“俺の死神が誕生した日”ってことで」

しばらく黙っていたルカだったけど、やがて小さく笑った。

「うん。そうしよっか」

ルカの口元がわずかにほころんだ。無自覚かもしれないけど、それはきっと“嬉しい”って顔だった。

俺は心の中でガッツポーズを決めた。

「でどう祝う俺らの誕生日。なんか案内かな。」

と誕生日をどうするか悩んでいると

「私は誕生日がわからないから案は出せないよ。」と言われた。続けてルカは

「じゃあさ朔夜の祝い方をやってみてよ。今日はまだまだ時間があるし誕生日を知ってるのは朔夜だけでしょ」と言い俺はその意見から俺の祝い方をすることにした。

「じゃあ買い物でもするか。」と言った。

そしたらルカは首を傾げた。

「うん。知らない」

「マジか……買い物も知らないのか?」

……どうしよう。でも、だからこそ、体験させてみる価値があるのかもしれない。

「買い物を知らないなら買い物してみて分かればいいよ。」と言い近くのデパートへ向かった。

徒歩10分ぐらいで着いた。

「よし着いたぞ。ここがデパートイモンだ。」

と自慢気に言ったが

「意外と小さいね。」と言われた。

普段の俺ならしゅんとするがルカとの対応に慣れていたので

「言ってろルカ多分中を見て驚くと思うぞ。」

と軽くあしらった。

そしてデパートについてまず映画館へ向かった。映画館にしたのは何もなくだ。

「ここが映画館だ。まぁ見てみれば分かるぞ。

とりあえずどの映画がいいか選べ。」

「どれって言われてもなじゃあイラストが好きだからこれで。」

と言って選んだのは恋愛映画だった。

「まぁこれでいいや。早く見ようぜ。」と言いチケット売り場へ向かった。

しかし死神ってチケット買うのかと分からないので一応買っとくことにした。

そしてルカと映画を見ることにした。

映画を見終わったが以外と面白かった。個人的には恋愛映画の中では好きな部類だったがルカはどうだったのか気になったので聞いてみることにした。

「映画どうだった。」「映画は……言葉が多すぎて、よくわかんなかった」

「そうか。」どうやら死神に恋愛映画は向いてないらしい。その後も買い物をしたが、そもそもルカの欲しいものが分からなかったためルカの反応はイマイチだった。そして気づけば夕方になっていた。

結局、映画も買い物もルカにはあまり響かなかったらしい。気づけば夕方。俺たちは肩を並べて、デパートをあとにしていた。

どこかうまくいかなかった気がして、沈黙が落ちる。そんな空気を察したのか、ルカがぽつりと言った。

「大丈夫だよ。うまくいかないこともあるし……あの、ファミレス? あれ、美味しかったし」

笑顔じゃない、でも少しだけ慰めるような声だった。

――そのとき。「あっ……ケーキ買ってない」

誕生日といえばケーキだ。それを忘れていたなんて!慌てて近くのコンビニに駆け込んだ俺は、ルカを連れて再び帰宅する。

「ルカ、お前……うまいもん、好きだよな?」

「うん。すごく好き」

よし、いける。俺は袋から小さなショートケーキのパックを取り出した。

「ケーキだ。誕生日に食べるもので、たぶん今日一番うまい」

「へぇ……」

俺が一口食べた瞬間、ルカが背中にぴたりとくっついてくる。味の共有――そうだった、ルカはこの食べ方しかできない。

「……うまい。これ、誕生日ってこんな味なんだ」

感動したような、少し切なそうなルカの声。それを聞いて、俺は心の奥でふわっとした何かが弾けるのを感じた。

「誕生日って、悪くないだろ」

「うん。いいね」

そのあと風呂に入り、歯を磨いて、眠りについた。

こうして、7月28日――“俺たちの誕生日”は、静かに終わっていった。



次回はとうとうバイトに行きます。楽しみにしてください。

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