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第三十ニ話・バカ男の奴隷ハーレムをブチ壊してやったぜ!カッカッカッ

 メリメ・クエルエルの監獄ハーレム城での、奴隷初心者の日々がはじまった。

「ご主人サマ、この庭木を向こうに植え替えればいいんだな」

 メリメが大地から引き抜いた、針葉樹の大樹が揺れる。


 青ざめた顔で、ハーレム王が言った。

「あぁ、頼む」

「そうじゃねぇだろぅ『メリメ、ご主人サマに対して、その口の利き方はなんだ! お仕置きだ』だろう……しっかり頼むぜ、ご主人サマ」

「わ、わかった努力する」

「カッカッカッ……ヘルコニア、穴を掘ってくれ……この木を植える」


 奇妙な主従関係になってしまった、メリメとハーレム王。

 なぜかメリメと一緒についてきた、十三毒花とエリカ・ヤロウもちゃっかり、城に入り込んでいる。


 ハーレム王は、傍らに立つハーレム奴隷商人の女に、小声で相談した。

「なんとか、メリメ・クエルエルを引き取って、基本の奴隷教育だけでも……」

「イヤですよ……怪力の野獣は調教できません……反対に喰い殺されます」


 庭木の植え替えを終わったメリメが、腰に手を当てて笑う。

「カッカッカッ……庭の仕事終わったぜ、次は何をすれば……おっ、なんだその風格がある茶碗は?」

 ハーレム王がなにやら、焼き物の茶碗を大事そうに布で拭いているのを見た、メリメが王に近づく。

 ハーレム王がドヤ顔で言った。

「これは、先祖から受け継いだ、天目の茶碗だ……特別にメリメ・クエルエルに見せびらかすために、持ってきた……どうだ、すごいだろう」


 メリメは無言で、国宝級の価値がある天目の茶碗を奪うと、うっかり床に落としたフリをして天目の茶碗を割る。

 顔面蒼白になったハーレム王に、悪びれた様子もない口調でメリメが言った。

「わりぃ、手がすべった……『ご主人サマ……申しわけありません、ご主人サマが大切にしていた茶碗を割ってしまいました……メリメにお仕置きをしてください』……なーんてな、さあ失敗をしたドジっ子奴隷に仕置きをしろ」


 ハーレム王の頭の中は、家宝の茶碗が突然割れたコトにパニックになって、メリメにお仕置きをするまで頭が回らなかった。

「あわあわあわわっ」


 動揺しているハーレム王を叱咤するメリメ・クエルエル。

 もはや、新しい形の主人と奴隷の関係が生まれはじめていた。

「あわあわ言ってんじゃねぇよ! 頭を下げて『奴隷調教させてください』だろう、念願のハーレムを作るんだろう!」

 主人が奴隷に頭を下げる。

「ち、調教させてください」

「よーし、それでいいんだ……で、どんな破廉恥(ハレンチ)なコトをオレの体にするんだ、十三毒花が見ている前で」


 近くで遠い目で二人のやり取りを眺めていた、ハーレム奴隷商人の女は内心。

(従来のハーレムの主従関係構造が、ブッ壊されているな……コレは、新時代のハーレムか?) 

 そう思った。


  ◇◇◇◇◇◇


 監獄ハーレム城の通路を歩く、エリカ・ヤロウ。

 向う側にから、ハーレム奴隷商人の女が歩いてくるのが見えた。

 二人は無言ですれ違い……数歩進んでから立ち止まり、互いを指差して言った。

「あーっ⁉」

「あの時の?」


  ◇◇◇◇◇◇


 数分後──エリカとハーレム奴隷商人の女は、城内あるバーのカウンターで並んで酒を飲んでいた。

 エリカが言った。

「驚いた、まさかあの時の壊滅させた、臓器ブローカーのボスの情婦がハーレム奴隷商人のリーダーだったとは」

「オレも、あの時は憎い女だと思っていたけれど……今は違う、臓器ブローカーの組織を壊滅してくれてありがとう」

 エリカは、不思議そうな表情で酒を飲む、女を眺めて言った。

「まさか、礼を言われるとは思わなかった」


「子供の臓器を売りさばくあの仕事……大嫌いで、早く組織から抜けたいって内心思っていた……そんな時に、あなたが組織をブッ壊して壊滅させてくれた」


 エリカは以前、ロベリアから聞いた『壊しは終わりじゃなくて、むしろ、はじまり』……その言葉を思い出していた。


 酒を飲み干して、カウンターのイスから立ち上がったハーレム奴隷商人の女が言った。

「オレがリーダーしている、ハーレム奴隷の仕事……ブッ壊してもいいぞ、家族のために自分の体をハーレム好きなバカに捧げた、男女を救済する方法があったら遠慮なく」


  ◇◇◇◇◇◇


 ハーレム王としての自信を完全に見失った、ハーレム王がアルケミラに相談していた。

 アルケミラの近くには、金銭を引き寄せる異能力を持つラナンキュラスと、壁を自在にスリ抜けるジャスミンがいた。

「どうすればいい……ハーレムを維持するのが、こんなに大変だとは思わなかった」


「ハーレムを作るのにも、器量は必要ですからね……田舎の女好きのおっさんが、複数の愛人を作るのとはワケが違うのですよ」

 さらに、アルケミラは……勝手に女が周囲に集まってきてハーレム化するモテ期にも、複数女性の相手をする、それなりの大変さはある──そう語った。


「よく、わかった……なんとかしてくれ」

「なんとか、しましよう……明日、ハーレム奴隷の女たちを広間に集めてください、それと奴隷契約書がどこにあるか教えてください」

「奴隷契約書なら、寝室のベッドの下にある隠し引き出しの中に……」

 それを聞いたジャスミンの怪盗魂が、燃えあがった。


  ◆◆◆◆◆◆


 翌日──広間にハーレム奴隷の女たちが集められた。

 アルケミラの指示で、奴隷女たちとハーレム王以外は、広間の少し離れた場所でこれから行われるコトを眺めていた。


 ハーレム奴隷たちと、ハーレム王の中間に立ったアルケミラが言った。

「それでは、はじめます」

 アルケミラが、整列したハーレム奴隷女たちと、ハーレム王に向かって催眠洗脳を放つ……奴隷女たちとハーレム王の目から、自我の光りが消えた。


 催眠洗脳状態の女たちに向かって、アルケミラが言った。

「あなたたちは、今日から『奴隷でありながら、この城の主人です』」

 ラナンキュラスが、引き寄せた城の紙幣束を、女たちに一人づつ手渡す。

 アルケミラが言った。

「その、お金はあなたたちのモノです……とりあえず、家族への仕送りに使ってください……さてと、次はハーレム王を奴隷に変えます」


 虚ろな目をしたハーレム王にアルケミラが言った。

「今日からあなたは、『ハーレム奴隷女たちに主従する主人奴隷です』……女たちに、服従しなさい」

 奇妙な主従関係に変えられたハーレム王が、女たちに向かって服従のポーズをとった。

「奴隷女さま……どうか、主人であるわたしを激しく罵ってください」

「ご主人サマ……これから調教して……立派な主人に変えてあげます、まずはわたしたちの足の指をナメて、服従の証しを示ください」

 ハーレム王は恍惚(こうこつ)とした顔で、次々と奴隷女たちの足の指をナメた。

 

 城の外の庭では、監獄宮殿から派遣された兵士たちが、メリメ・クエルエルを討伐しようと押し寄せていた。

 兵士を迎え撃つは、異世界楽器を持った、一人ロックバンドの美人、デンドロビウム。


 デンドロビウムが、兵士たちに向かって熱いロックのリズムをぶつける。

「アルケミラたちの邪魔はさせない! アタイのロック魂で、体中の血を沸騰させろ!」

 激しい旋律に兵士たちの細胞が震え、沸騰した体の血が体の穴から噴き出した。


  ◇◇◇◇◇◇


 城の広間で主従関係が逆転した、奇妙なハーレムを見せられている、ハーレム奴隷商人の女が心の中で呟く。

(なんだコレ? 完全にハーレム主従関係が逆転している? こんなモノを見せられた日には、廃業するしかない……こんなハーレムが広がって主流になってしまったら)


 少し離れた位置で逆転ハーレムを見ていたメリメ・クエルエルが、いつもの豪快に笑う。

「カッカッカッ……ハーレムのブッ壊し完了だぜ、短い間だったけれど楽しかったぜ、ご主人サマ」

 ハーレムをブッ壊して変えた、メリメたちは城を去った。


  ◆◆◆◆◆◆


 その後──ジャスミンが監獄ハーレム城から盗み出した、奴隷契約書はアマラン・サスの所に運ばれ。

 文字写しの魔法で『奴隷』と『主人』の主従関係の名前位置を入れ替えて、また城に戻された。

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