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第二十六話・悪魔の移植計画……女の首と男の体の外科縫合計画を阻止したぜ!

  ◇◇◇◇◇◇


 メリメたち一行は連結した、二隻の小舟に乗って空を飛ぶヘルコニアに、ロープで引っ張ってもらって湖面を島へと向かう。

 波を立てて進む小舟に乗っていた、ストレリッチアが後方の水面を指差して叫けぶ。

「なんだ、アレは⁉」

 見ると小舟を追いかけるように、三角の波が迫ってきていた。

 やがて、三角波の下からヘビのような長い首の生き物が、ヌウッと水面に頭と首を出現させた。

「湖の怪物だ!」


 必死に小舟のロープを引いて逃げようとしているヘルコニアに、アマラン・サスが言った。

「逃げなくても大丈夫……止まって」

 ヘルコニアが空中停止すると、小舟を寄ってきた水棲巨大生物が、アマラン・サスに頭を近づける。

 アマラン・サスが、怪物の鼻先を撫でるとレディーは、嬉しそうに喉をゴロゴロ鳴らした。

「よしよしよし、ずいぶん大きくなったわね……よしよしよし、いい子、いい子」


 メリメがアマラン・サスに質問する。

「お母さん、その怪物を知っているのか?」

「知っているもなにも、この湖の古城に住んでいた時に、ペットで飼っていた水蛇よ……あの時は両手の平サイズだったけれど……なにを食べたら、こんなに大きくなるのかしら」

 アマラン・サスは、レディーの首筋にある、連なったハート模様を撫でる。

 水蛇のレディーに小舟を押してもらって、メリメたちは湖の島に無事上陸するコトができた。


 島に立てられた古城の閉められた木製の大門をジャスミンがすり抜けて、内側から閉じられていた門を開ける。

「壁をすり抜けて軽く、城内を見てきたけれど数名の兵士がいたけれど、料理人とか雑用の兵士で抵抗する意思は無いみたいだよ」

「そっか、拉致された村娘は?」

「それも聞いた、ついてきて案内するから」


 ジャスミンの後ろから歩いていると、アマラン・サスが懐かしそうな口調で呟く。

「懐かしいわね……わたしが居なくなってから、だいぶ改装したのね……こんな通路沿いに並んだ、鉄柵の石牢みたいなのは無かった」

 城内通路を進むと鉄柵が取り除かれた石牢部屋の一つに、美しい村娘が手首を鎖で床に繋がれて横座りしていた。


 娘の近くには木製の食器が置かれている。

 そして、娘の視界に入る部屋の隅には、断頭台(ギロチン)が冷たい刃の輝きを放って置かれていた。

 娘はメリメたちを見るとひどく怯えた。

「いやぁぁぁ! 来ないで! 家に帰して、首を斬らないで!」

 近づいて娘の頬を優しく撫でるアマラン・サス。

「心配しないで、わたしたちは何もしない、あなたを救い出すためにここに来たの」

 娘は手首の鎖が解かれても、腰砕けの状態で座ったままブルッブルッと震えている。


 ストレリッチアが言った。

「他の部屋を見てくる」

 隣の石牢部屋を見たストレリッチアがメリメたちを呼ぶ。

 隣の部屋には手術台が置かれ、棚には薬物が入った広口ビンが数多く並べられ。

 金属の外科器具がベッド近くの、キャスターの上に並べられていた。

 医療部屋を見て、ストレリッチアが言った。

「この程度の、医療設備で首のすげ替えをして、人間が生き返ると本気で思っているのか……笑止」


 ストレリッチアは、さらに隣の部屋を覗いた。

 そこには天井から下がった、二本の手錠鎖に手首を繋がれて、黒いビキニパンツだけを穿かされ。

 意識を失っている、ムッキムキッのマッスル筋肉男性が立った状態で、吊り下げされていた。


 プロレスパンツを穿いたプロテアが、意識を失っている若い男性の肉体を、見てタメ息を漏らす。

「なんという鍛えあげられて完成し筋肉の体……オレの体よりもすごい」

 意識を失っている男性の顔は、隆起(りゅうき)した体の筋肉体とは不釣り合いな童顔だった。

 

 ストレリッチアが部屋の隅に置かれている断頭台(ギロチン)と、男性の近くに置かれた丸テーブルの上の注射器を見て言った。

「これは、健全な鍛え方で成長した筋肉ではありませんね、薬物投与で強制的に筋肉強化された体です……この男性は薬で眠らされています」

 ストレリッチアは、部屋の隅にある断頭台を指差す。

「おそらく男性はこの眠らされた状態で首を切断されて、村娘の切断した首とマッチョな男の体を縫合して──第二のメリメ・クエルエルを誕生させる計画だったのでしょう……断頭が実行される前に間に合って良かった、二人を助け出しましょう」


 腰に手を当てて、メリメ・クエルエルが豪快に笑う。

「カッカッカッ……本当だぜ、メリメ・クエルエルはこの世界に、ただ一人……もう少しで、体はマッチョ男の妹が誕生しちまうところだったぜ……カッカッカッ」

 ロベリアが低い声で、メリメに向かって呟いた。

「それ……笑えない冗談だから」

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