第二十一話・しかたねぇ、不本意だけれど……この国守ってやるぜ、監獄宮殿をブッ壊すのはオレだぜ!
メリメ・クエルエルと十三毒花たちは、黒ユリ森の美魔女小屋の並べた長いテーブルで、カリーという黄色い食べ物を千切ったパンですくって食べていた。
カリーを食べながら、ロベリアが言った。
「食事をしながら聞いて欲しいぜ……監獄宮殿のイキシア国に国境を隣接した、女王が統治する小大国がイキシア国に向けて、侵略に動き出す兆候が見られたと、見張りの使い魔カラスから報告を受けたぜ」
特殊部隊のグリーンベレー姿のシレネが、ロベリアに質問する。
「あの国の、女王がなぜ?」
「それはわからねぇ……軍備を整えている、動きがあるというコトしか」
アルケミラが口元に付着したカリーを、ハンカチで拭き取りながら言った。
「隣接する女王国は、監獄宮殿のこの国より少しばかり大きい豊かな国です……他国を侵略する必要性は、どこにもないのですが?」
〝女王国〟正式名称はクィーン・ローズ──国境の形がサメの形をした国。
統治している女王の名前は【カラン・コエ】
「必要性があろうが、無かろうが女王国は他国への侵攻準備を着々と進めているぜ……国の位置的に考えて、侵略目標にしているのは、オレたちがいる、アストランティア大陸の中にある、イキシア国だぜ……どうする、メリメ」
深皿の底に残ったカリーをパンで、拭き取るようにして食べてメリメ・クエルエルが言った。
「カッカッカッ……監獄宮殿をブッ壊すのはオレだ、オレが壊す前に侵略されて国が無くなっちまったら困る……不本意だけれど、この国を守ってやるか……和平交渉してきてやる」
ヘリクリサムが、短歌で会話する。
「〝余計だと一族言われ腹が立つそれでもやるか冷嬢姫〟……監獄宮殿の一族がお節介外交に、どう出てくるか予測できませんよ」
「カッカッカッ……この国を守ってやろって言っているんだ、感謝されても文句言われる筋合いはねぇ」
「〝庶民のご令嬢が国守るそれも一興文句言わせぬ〟字余り」
十三毒花とメリメ・クエルエルは、数名の十三毒花と毒血のワスレナを残して、女王カラン・コエが統治する女王国を目指して旅立った。
そのコトはすぐに、嫉妬のマリー・ゴールドにも知れ渡った。
◆◆◆◆◆◆
女王国へ続く街道の山道を進むメリメたちの前に早速、監獄宮殿から差し向けられた兵士たちが現れた。
「カッカッカッ……現れやがったな」
メガネ令嬢で、狼のケモ耳ケモ尻尾のメリメが、近くに生えていた果樹が実っている広葉樹を地面から引き抜く。
「この大木でブッ飛ばしてやるぜ…、カッカッカッ」
果実を飛ばしながら、振り回していたメリメを叱咤する女の声が聞こえてきた。
「食べ物を粗末にするな!」
声が聞こえてきた方向を見ると、女体化した叱咤のマリー・ゴールドが立っていた。
はだけさせた上着から金色のウロコブラジャーを覗かせたマリーは、自分の胸と股間を触って性別を確認する。
「よし、胸は膨らんでいる……股間のモノは無くなっている……ウチは女だ」
地面に転がり落ちていた果実を、軽く服で拭いて食べるマリー。
「美味い、昔ばーちゃんの家の庭で食べたの味を思い出す」
マリーは鞘からレイピア剣を抜くと構えた。
こちらに向かってくるかと身構えたメリメたちの予想に反して、マリーは兵士たちに襲いかかる。
高速の突きに剣聖闘気が霧のように、レイピア剣にまとわりつき、兵士たちを殺さない程度に痛めつけていく。
地面に倒れて呻いている、兵士たちに向かってマリーが言った。
「メリメ・クエルエルを仕留めるのはウチだ、ウチの獲物に手を出すな……落ちている果実は一つ残らず拾え、食べ物を粗末にするな」
兵士たちは、言われるままに果実を拾う。
メリメは静かに引き抜いた樹を元に戻す。
メリメたちも、なんとなく協力して果実を拾い集めた。
カゴいっぱいに果実が、集められるとマリーが言った。
「今日は、果実を持って家族の元に帰れ……帰ったら監獄宮殿の一族に伝えろ、今回だけはウチの邪魔をするなと」
兵士たちが去り、マリーは剣を鞘に収めてメリメに向かって言った。
「今日のところは、ばーちゃんのコトを思い出させてくれたから、見逃してやる……食べ物は粗末にするな……それから女王の国には」
マリーが最後まで言い終わる前に、地面から飛び出してきた、ジャスミンが女マリーの胸にタッチする。
「おっぱいタッチ!」
「ぎゃあぁぁぁ!」
胸を触られたマリー・ゴールドの体が男体化する。
飛び下がって、自分の胸と股間を押さえるマリー。
「胸が平らになっている……股間が盛り上がっている、今のウチは男だ! ひぃぃぃ」
悲鳴を発してマリーは走り去って、逃げてしまった。
「なんなんだ、いったい?」
メリメは、拾った果実を服で軽く拭くと、そのままかじって食べた。
◆◆◆◆◆◆
女王カラン・コエが統治する女王国は、小麦の産地の豊かな国だった。
風車小屋が並ぶ国境の丘に立って、小麦色の広がる作物畑を眺めていた、メリメが言った。
「とても、侵略をする国とは思えねぇなぁ」
アルケミラが言った。
「とにかく、女王に直接会って真相を確かめないと、はじまらないですね」
ジャスミンが、イキシア国と女王国の国境を往復して遊ぶ。
今回の計画に同行しているメンバーは。
生首冷嬢姫メリメ・クエルエル。
錬金のアルケミラ。
悪意のロベリア。
官能的なジャスミン。
風変わりなヘリコニア。
人間嫌いのアザミの計六名だった。
六人は小麦畑の道を歩く。
両側に畑には農作業をしている村人や、風にクネクネ揺れるカカシがあった。
歩きながらジャスミンが、アルケミラに質問する。
「のだかだなぁ……女王はどこに行けば会えるの?」
「さあ? どこでしょうか? その辺の作業をしている村人に聞いてみますか……こんにちは」
アルケミラから話しかけられた村人は、作業の手を休めて朗らかな笑顔で答える。
「こんにちは、変わった格好をした人たちだに……どこから来なさった?」
「隣の国から国境を越えて、この国の女王さまはどこにいますか?」
途端に険しい顔つきに変わった村人たちが、手に農具を持ってメリメたちを取り囲む。
村人たちの動きは尋常な動きではなかった。
フォークのような農具を持った村娘や村男たちが、麦畑の中で空中回転して。
中には農具の柄から仕込み刀を引き抜く者や、鎖鎌の分銅を振り回す者もいた。
ヘルコニアが穂の形をした触角を震わせて骨伝導で言葉を伝える。
「〝忍者だ! 忍者の村人だ!〟」
鎖鎌を持った忍びの村人が言った。
「悪く思うな……女王さまに会おうと国境を超えてきた、よそ者はとっ捕まえて女王さまの、城に連れて行くコトになっているだに」
取り囲まれたメリメたち、ロベリアがヘルコニアを通して意思を他のメンバーに恥骨伝導で伝える。
「〝抵抗しないで、このまま女王の城に連れて行ってもらえばいいと言っている〟」
六人は無抵抗のまま、女王カラン・コエの居城に連れて行かれた。
◇◇◇◇◇◇
城で君主の間に通されて、メリメたちは女王と面会させられた。
ヘビの前髪飾りをして玉座に座り、頬杖をしてメリメたちを眺めていた女王が、メリメを連れてきた村人たちに言った。
「鎖を解いてあげなさい……その人たちは、悪い人たちではありません……たぶん」
体を縛っていた鎖が解かれたメリメに女王が、頭を下げて言った。
「捕まえてしまって失礼しました……この国の国民の八割は〝シノビ〟なので、十三毒花のお噂は、この国でも聞き及んでいます」
アルケミラが代表して女王に訊ねる。
「どんな噂ですか?」
「残虐非道……十三毒花が通った道にはペンペン草も生えないとか、ウチはそんな噂は信じていませんけれど」
「ウチ?」
アルケミラが首をかしげているのを、無視して女王カラン・コエは会話を進める。
「あなた方がウチの国へ来た目的は、わかっています……ウチがイキシア国への侵攻準備をしているのを懸念懸念して来たのですね……ご心配なく、すぐには侵略は開始しませんから……とりあえず、会食をしながら詳しい話しをしましょうか……ウチと」
◇◇◇◇◇◇
会食の場で着席したメリメたちの空の皿に、丸い丸薬のようなモノが一粒、転がされ入れられた。
女王に質問するメリメ。
「これはなんでぇ?」
「〝ヒョウロウガン〟という、シノビの方々が作ってくれた食べ物です……ウチは、毎日この一粒だけで過ごしています、こうやって食するのです」
女王は、ヒョウロウガンを口に入れて舌の上で転がしナメた。
「こうやって、舌の上でナメて柔らかくなったら、ゆっくりと噛んで味わうのです」
ヒョウロウガンを飲み込んだ、女王が言った。
「食べながらでもいいので、こちらに来て城の庭を見てください」
女王に誘われて、城窓から外を見ると、武器で演武をしている兵士や体術で組み手をしている兵士たちの姿があった──その数は万人を軽く越えている。
「これが、ウチの国が誇る戦力です……これの、数十倍のシノビ兵士と武器が用意されていると思ってください……あっ、火器を扱う兵力は除いた人数ですから……総勢八万人くらには膨れ上がるかと」




