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第十七話・監獄ダム破壊?

 黒ユリ森から宿屋に帰ってきたマリーは、部屋で革のカバンを開けて中に入っていたモノを取り出して呟く。

「やはり、女になった時にコレを、胸に付けないといけないとダメか」

 男マリーが手にしているのは、派手な金ウロコのブラジャーだった。


 マリー・ゴールドは女体化した時に、背後からの敵の接近を察知するために、この金のブラジャーを十三毒花の時は装着していた。

 ふたたび女体化した、マリーが自分の胸と股間を触って性別を確認する。

「よし、胸は膨らんだ、股間のモノは無くなった……女になった、あとは監獄ダムでメリメ・クエルエルを待ち伏せして、仕留めればいいのだが」

 腕組みをして思案するマリー。

「いつ監獄ダムに来るのかわからないから……ダムで独り(ソロ)キャンプをして待つしかないか」

 マリーはキャンプに必要な最低限のモノを町で買い集めると背負って、監獄ダムキャンプに向かった。


  ◆◆◆◆◆◆


 黒ユリ森の美魔女小屋──糖質が含まれたお菓子を食べながら、監獄ダムの図面や周辺地図を凝視していた。

 ロベリアは、あるコトに気づく。

(平面な地図だけ見ていた時には気づかなかったけれど……ダムから見える両側の山、特徴的な形しているじゃん)


 それは、谷間にある両側の山のテッペンが二つの山とも平らな広い草原になっていて、

斜面がヒナ段状になっていた。

「考えてみたら、ダムをどうこうしなくても良かったんだ……洪水の被害に合う危険がある下流の村は二つ、村の方を移転させれば」

 ハッとしたロベリアが、浮かんだ計画を書き留めて。

 隣の部屋で待機している、アルケミラたちの方に持っていって叫ぶ。

「思いついたぜ! ブッ壊しの計画が決まったぜ! 今回の作戦のカギを握るのは、風変わりなヘリコニアだ」


 三日後──メリメたちは、計画実行に必要な毒花と一緒に、監獄ダムに向かって到着した。

 ダムの上部に道のような広い場所がある、ダム道近くにテントが張ってあった。

 テントの前には、女体化した、

嫉妬のマリー・ゴールドが折りたたみのイスに座って沸かしたコーヒーを、がぶ飲みしていた。

 金のブラジャーに包まれた、乳位置を少し直した女マリーが言った。

「遅い! いつまで待たせるんだ! 何回もコーヒーがぶ飲みしたぞ」


 立ち上がったマリーが、レイピア剣を鞘から引き抜く。

「ダム道のどちら側から来るか、わからなかったから読みで……茂みがある、この場所で独り(ソロ)キャンプをしていて正解だったな」


 監獄ダムのブッ壊しに来たのは、メリメ、アルケミラ、ロベリア、そして上空を旋回しているヘリコニア……なぜか、ジャスミンも興味本位でついてきていた。


 マリー・ゴールドが言った。

「さっさと、ダム破壊を決行しろ……その事実を口実にして、極悪人のメリメ・クエルエルを倒す」

 ロベリアが、冷ややかな口調でマリーに言った。

「いや、ダムは壊さない……壊さなくて、監獄宮殿一族の高額な水料金徴収を無効にして、ブッ壊す方法を思いついた」

「どうやって?」


 ロベリアの説明を最後まで聞いたマリーが、感心したようにうなる。

「発想の転換だな……その方法ならダムは、そのままで下流の二つの村に、無料の農業水を行き渡らせるコトができる」

 マリーはダムの両端から、二つの村に向かって伸びている二本のパイプに目を向けた。

 パイプの中を水が通過するコトで、中の水車が回り、高額な徴収金を計算する仕組みになっていた。

 もちろん、水量は監獄宮殿側が自在に調整していた。


 少し考えてマリー・ゴールドが言った。

「しかたがない、今回はその発想に敬意を払って剣を鞘に収めよう……だが、じ、次回は」

 急にマリー・ゴールドは、両足を動かしてモジモジしはじめた。

 コーヒーを飲み過ぎた、マリー・ゴールドに尿意が訪れた。

 顔を真っ赤にしたマリー・ゴールドがメリメたちに、哀願する口調で言った。

「頼む、誰でもいいから女性で、ウチの体を触ってくれ」

「カッカッカッ……トイレか、小ならそこの茂みで尻を丸出しにして、しゃがんで……」

「おまえたちの前で、そんな恥ずかしいマネができるか! 来る前ならやっていたが……頼む漏れそうだ、ウチの体を早く女が触ってくれ」


 マリー・ゴールドの背後の地面から、ジャスミンがひょこりと顔を出す。

「はいはーい、あたしがマリーのお尻を触りま~す」

 地面から、よっこらしょと出てきたジャスミンが、マリーのお尻を触りマリーの体は男体化した。


 股間を触って男のモノを確かめるマリー。

「ある、男のモノがある……今のウチ、男だ……漏れる!」

 マリーが茂みに入って、安堵した表情で男の放尿をしているのをメリメたちは眺めた。


  ◆◆◆◆◆◆


 放尿が終わりスッキリとした顔のマリー・ゴールドと一緒にロベリアが考えた、ブッ壊し計画をメリメたちは眺めた。


 まず、最初に両腕のパーツをドリルパーツに交換したヘリコニアが、ダム湖に飛び込んでダムの底に穴を開けて、地下水路を頂上がゴルフ場のように平らな山まで掘って水を噴出させた。


 片方の山から勢い良く噴出する水を見て、ロベリアが言った。

「サイフォンの原理だ……あそこに湖を作り、その周辺に村人を移住させて新たな村を作る……農作はヒナ壇になった山の斜面を開拓して行う」


 もう、一方の向かい合った山の平らな頂上からも、ダム湖の水が勢い良く噴き出した。

 ロベリアの説明が続く。

「両山のダム湖から離れた斜面は、思ったよりも傾斜がなだらかな斜面になっていたから、村へと続く道を造るコトは可能だぜ」

 メリメが腰に手を当てて笑う。

「カッカッカッ……ブッ壊し完了──監獄宮殿の連中が村の移転に、あれこれ手を出して阻止の動きを見せたら、十三毒花が黙っちゃいねぇ」


 アルケミラが噴水のように二つの山から噴き出している、水を見て呟いた。

「二つの山の谷間に橋を架ければ、村同志の交流も可能ですね……いつかは、村も町や市に変わり絶景の観光都市になるかも知れません、そうなれば貧しかった二つの村の収益にも」

「カッカッカッ……そりゃいい、壮大な未来じゃねぇか」

 メリメの笑い声は、ダム湖に響き渡った。

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