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第十二話・砂漠の盗賊をブッ飛ばす

 メリメたちは、分散して環境破壊が進むエリアや、宝石鉱山の視察に向かった。


 宝石採掘の鉱山へは、メリメ、アルケミラ、ロベリア。


 森林伐採の現場へは、ユリカ・ヤロウとヘリコニア。


 焼け畑農耕の現場には、ワスレナとイブニングスターが向かった。

 

  ◇◇◇◇◇◇


 宝石採掘鉱山の入り口で、メリメたちは宮殿の兵士たちに止められた。

「ここから先は、監獄宮殿の許可証が無い者は、通すワケにはいかない……帰れ! 見たところおまえたちは、鉱山作業者ではないようだな? 何者だ?」

 アルケミラの催眠洗脳が、兵士たちの記憶を書き換える。


 態度を一変させた兵士たちが、柵門を開けてメリメたちを鉱山に通す。

「失礼しました……どうぞ、お通りください」

 

 採掘現場の坑道(こうどう)は、劣悪な労働環境だった。

 換気がされていない坑道は、空気の流れも悪く咳き込みながら子供も老人も男も女も、強制的に採掘をさせられていた。


 作業中に倒れた子供のムチ打ちから、かばった老人の背中に容赦なくムチが飛ぶ。

「立て! 働け! 監獄宮殿のために宝石を掘り出せ!」

 メリメが、近くにあったトロッコを、ムチ打ち男の方に放り投げて激突させて言った。

「わりぃ、手が滑った」


 メリメたちは、ムチ打ちされていた老人と子供に駆け寄って介抱する。

 アルケミラが介抱しながら、子供と老人に言った。

「大丈夫か……ここは空気が悪い、坑道の外に出よう」

 アルケミラの、催眠洗脳眼がトロッコの下敷きになって気絶している、ムチ打ち兵士に向けられる。

「これからは、誰一人も傷つけるな……誰かをムチ打ちしたくなったら、自分の体にムチ打て」

 半分気絶しているムチ打ち兵士は小声で。

「はい……これからは、自分の体をムチ打ちします」

 そう呟いた。


 坑道の外に出した子供と老人に、日陰で質問して鉱山作業の賃金は、微々たる金額だとわかった。

 老人が傷ついた子供の体を、労働で荒れた手で抱きしめながら訴える。

「ほとんどの賃金が、監獄宮殿の一族へ流れて吸い込まれ、わたしたちには、その日の食べる分しか残りません……酷いものです」

 老人の話しだと宝石鉱山がある土地は、監獄宮殿の所有地だという話しだった。


 メリメが天を仰いで笑う。

「カッカッカッ……心配するな、オレが劣悪な鉱山の作業環境をブッ壊してやるぜ」


  ◆◆◆◆◆◆


 森林伐採の現場──エリカ・ヤロウと、ヘリコニアは、立木に斧やノコギリを入れて森林伐採をしている作業者の話しを聞いた。

「オレたちだって、本当はこんな自分たちが親しみ崇拝してきた〝精霊の森〟を伐採したくはないんですよ……この森はこの地域に住む者の心の拠り所てもあるんですから……でも、監獄宮殿からの命令で仕方なく」


 故郷の森を伐採している作業員の、賃金はやはり少額だった。

 木が倒れるたびに、森の動物たちは森の奥へと逃げていった。


  ◆◆◆◆◆◆


 ワスレナとイブニングスターは、白い煙が立ち上る、焼け畑農耕をしている村人の所にやって来て話しを聞いた。

「自分たちが行っている行為が環境に繋がっているコトは、承知しています……だけど、家族が食べていくためには仕方なく」


 まだ、焼けた切り株大地から朝靄のように白い煙が広がる中を、

 首が長い白い鳥が焼けた虫を求めて、歩き回っているのがわかった。

 ワスレナは、眠ったまま隣に立つイブニングスターを横目で見て呟いた。

「器用な人だ……」


  ◆◆◆◆◆◆


 宿屋で各現場から集めた、現状報告を聞き終わった、メリメ・クエルエルが言った。

「カッカッカッ……やっぱり、それぞれの現場をどうこうすれば、即解決っていう単純なブッ壊しじゃねぇな」

 ロベリアも頭を抱える。

「なにも、策略が思いつかない……森には絶滅危惧種の動物もいるっていうのに救えない」


 一同が沈黙していると、風変わりなヘリコニアが、穂のような触覚を出してアルケミラに向けた振動で意思を伝えた。

 ヘリコニアは、振動を相手の頭蓋骨にぶつけることで、言葉として意思を伝えるコトができる。

 ヘリコニアからの言葉を頭蓋骨で聞いた、アルケミラが少し驚いた表情で言った。


「お手軽です、まさか砂漠で地質調査をしていたんですか……そんなモノが砂の下にあったなんて……その情報を活用すれば、なんとかブッ壊しできそうです」

 アルケミラは、他の者にもヘリコニアから聞いた情報を伝え。

 さらに、夜の星イブニングスターに念を押して言った。

「やはり、イブニングスターが計画の一番の適任者でした……砂漠の盗賊が現れたら頼みます」

「ぐぅぅぅ……ボクに任せて……ギリギリギリ」


  ◆◆◆◆◆◆


 月が明るい夜──半砂漠の盗賊が現れ、村に盗賊団が侵入する前に少し離れた半砂漠でメリメたちは、兵士崩れの盗賊団を迎え討つ。


 盗賊団のリーダーらしい口元を布で隠した男が、メリメを見て怒鳴った。

「お、おまえは⁉ あの時の生首冷嬢姫! おまえのせいで、我々は監獄宮殿から追放されて!」

「カッカッカッ……知らねえよ、むしろ自由になれて良かったんじゃねぇか、発想を転換しろ囚われている監獄から、外に出れたと」


 盗賊団が曲刃の剣を抜いて、メリメへの怒りの感情をあらわにする。

「やっちまえ! 宮殿にいたら、ヌクヌクできたものを……メリメ・クエルエル! 全部おまえが悪い!」

 盗賊団が曲刃剣を、一つのコブが背中にある砂漠の環境に特化した生物の上で抜いても、殺し屋……もとい、傭兵剣士のエリカ・ヤロウと、毒血のワスレナは沈黙して動かない。


 もちろん、メリメも動かない。イブニングスターが一歩前に進み出たのを見たメリメたちは、なぜか急いでそのから離れて後方に避難した。

 逃げたメリメを見て怒鳴る盗賊団。

「逃げるな! オレたちと闘え! 腰抜け」


 一人残ったパジャマ姿のイブニングスターが、アイマスクを外して開いた目で盗賊団を睨んでから、大きく伸びをする。

「あぁ、よく寝た……ほざくな雑魚、目覚めたボクが相手をしてやる、ブッ飛んで後悔しろよ」

 イブニングスターは、疾走スタートする姿勢から走り出して、盗賊団の間を駆け抜ける。

 通過時の衝撃波で、ブッ飛ぶ盗賊団。

 夜空で悲鳴をあげる盗賊。

「うわぁぁぁ!」

「ひぃぃぃ!」

 盗賊たちが落下してくる前に、円を描くように高速疾走するイブニングスターから、竜巻が発生して。

 盗賊団を遥か彼方に吹き飛ばして追い払った。


【夜の星イブニングスター】──その脚力で衝撃波を生み出し、さらに竜巻を発生させる……ただし、夜しか活動できない。


 盗賊を竜巻で吹っ飛ばしたイブニングスターは、竜巻で砂がえぐれて出現した窪地を指差して言った。

「アルケミラ……ヘリコニアが言った通り、埋まっていたモノが砂の中から出てきたよ」

「この窪地になった土地は、砂漠民衆の土地ですから……監獄宮殿の一族は手出しできませんね」

「カッカッカッ……何かしてきたら、オレが黙っちゃいねえと、監獄宮殿のヤツらに伝えな」


  ◆◆◆◆◆◆


 翌日──半砂漠の村人は、メリメたちに案内されてやって来た窪地を見て驚いた。

「まさか、本当に砂の下に先祖が残した古代遺物が埋まっていたなんて」

「じっさまから聞いていた、伝承は本当だったんだ」


 砂の中から現れたのは、頭部が美しい女神の頭をした人頭猫身(ニャフィンクス)の巨大な、黒色石像だった。

 毛づくろいをしているようなポーズの、像の両目と額には巨大な宝石が埋め込まれ、剥き出しになった大地にも、さまざまな宝石の原石が露出していた。

 アルケミラが村人たちに言った。

「これは古代の宝石原石の採掘場です、坑道もあって地下へ続いています……無尽蔵の宝石原石の鉱脈が、掘り出されないまま地下に貯蔵されています」


 驚いている村人に、メリメが言った。

「これで、森林伐採と焼け畑農耕はしなくても済むな……森林環境を守れ、宝石原石の流通はアルケミラが手配してくれるそうだ」


 ここで、メリメは少し厳しい口調で言った。

「先祖が子孫のために残してくれた遺産だ……欲を出して先祖を泣かせるんじゃねぇぞ……カッカッカッ」

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