第十一話・刻々と進行する環境破壊を止めて、野生動物を保護してやるぜぇ
メリメたちは、黒ユリ森から離れた〝半砂漠化地帯〟にやって来た。
伐採された森の切り株が広がる大地は、砂漠化が進んでいた。
焼き畑農耕のエリアもある砂漠に立ったメリメは、タメ息を漏らした。
「アルケミラが言う通り……これは、単純なブッ壊しじゃねぇな」
このまま、森林伐採が進み環境破壊が進めば当然、自然災害も増加する。
自然火災、洪水、干ばつ、長雨、温暖化と寒冷化、それらの災害は宮殿一族の指示で環境破壊を続けているイキシア国の、貧困地域の民衆が引き起こしているモノだった。
アルケミラが言った。
「環境破壊をやめさせるのは簡単ですが……それだけで、すべての問題が解決するとは思えません」
「だな、この地域に住む民衆の生活もあるから……伐採とか焼け畑農耕を、やめさせるワケにもいかねぇからな……何か最良の解決方法が見つかりゃいいんだけれどよ」
資源の乏しい、この半砂漠地域には雪も積って砂が凍る。
砂漠民衆の生活を向上させなければ、自然を守りつつ、人間の生活を守ることは難しかった。
「カッカッカッ……頭いてぇ、どうすりゃいいんだ、砂でも売れりゃいいんだが」
半砂漠に、ブッ壊すために来たのは。
メリメ・クエルエル
アルケミラ
ロベリア
そして、ワスレナとエリカ・ヤロウの五人だった。
メリメがアルケミラに訊ねる。
「今回の計画メンバーは、この五人だけか?」
「いいえ【風変わりなヘリコニア】に、この半砂漠に一番ふさわしい十三毒花の男を連れてきてもらいます……ほら、噂をすれば」
錬金のアルケミラが指差した空には、プロペラを回転させて飛んでくるヘリコニアと、ヘリコニアに抱えられた若い男の姿が見えた。
抱えられている男は、手足が弛緩したようにダランとさせて運ばれている。
アルケミラの近くに着陸したヘリコニアは、アイマスクをして眠っている男を手から離す。
パジャマ姿の若い男は、倒れたまま眠り続けていた。
眠れるパジャマ王子を見て、悪意のロベリアが言った。
「確かに砂漠には、この男が適任者だな……夜にしか活動できないけれど【夜の星イブニングスター】」
アイマスクをして眠り続けている、イブニングスターの目の前で、手の平をヒラヒラ動かしてみた、毒血のワスレナが言った。
「この人、大丈夫なんですか? 眠っていますよ、しかもアイマスクまでして」
ワスレナが、そう言った時──イブニングスターの口が開いて、寝言で答えた。
「むにゃ……ご心配無用、お嬢さん……眠っていても、ちゃんと周囲の状況は把握しているから……これは、寝言だから気にしないで……んごぅ」
そう言って、イブニングスターはアイマスクをめくってみせた。
アイマスクの下の瞼には目が書いてあった。
ギリッギリッギリッと、イブニングスターが歯ぎしりで鳴く。
傭兵剣士だと言い張っている殺し屋の、エリカ・ヤロウが上半身を下半身から腕で持ち上げて上下運動させながらつぶやく。
「器用なヤツだ、眠りながら返答するとは」
◆◆◆◆◆◆
メリメたち一行は、アマラン・サスの古い知人が半砂漠で営んでいる、安宿を長期間の宿泊滞在場所に選んだ。
若く綺麗な宿の女性主人が、一行を部屋に案内して言った。
「砂漠しか観る風景は無い村ですから、窓から砂漠に沈む夕日でも眺めてください……この階にある部屋は、どの部屋を使ってもいいですから」
若い女性主人は、何世代に渡って、美魔女アマラン・サスとは知人関係を続けていると語った。
「わたしの祖母や母親が老いていくのに、あの人だけは時間に取り残されたように、ずっと変わらない若い姿のまま……秘訣を教えてもらいたいモノです」
女主人から、この地域の情報を仕入れた。
半砂漠村の主な財源は。
伐採した材木を運搬した収益。
焼け畑農耕での作物収益。
小さな宝石鉱山もあることはあるが、その土地は宮殿一族が所有していて。
村人は安い賃金で働かされ、生活できるだけの微々な収入でやっと、村人は毎日生きている。
宿の女主人が、メリメに言った。
「さらに、月夜には砂漠の盗賊も現れますよ」
「砂漠の盗賊?」
「元々は監獄宮殿の兵士たちなんだけれどね……なんでも、宮殿に乗り込んできて窓から飛び出していった女の子に、ボッコボッコにされたので宮殿から追放されて盗賊になったみたいよ」
メリメ・クエルエルが、それあたしだ……と、いう顔をする。
さらに、女主人は一族から盗賊団に、砂漠の村人から物品を略取していれば……監獄宮殿にもどすコトも考えていると言って、兵士崩れの盗賊団を手なづけているらしい。
「盗賊団は、どこからか連れてきた背中に一コブの膨らみがある、砂漠の環境に特化した動物を連れてきて、乗用して盗賊しているの」
ロベリアが言った。
「こりゃ、盗賊の対処も考えねえといけねぇな」




