発表会
六月の半ば、緑谷町は梅雨に突入した。降りしきる雨のなか、発表会は無事に終了した。
琳太郎の思惑通り、他校のどの演奏よりも緑谷中の演奏は際立っていた。一人一人の技術が追いつかず、総合的な演奏レベルはまだまだ未熟ではあるものの、成功というほかなかった。観客達は喜んで手拍子を取っていたし、あちこちで歓声も上がった。
音羽にパーカッションをやらせず、電子ピアノをやらせたのが正解だった。ボタンで音色を変えればコンガやシンバルやグロッケンなどの打楽器にもなるし、教会音楽のようにチェンバロの音色を出すこともできた。面白い効果音を乱発することもできた。それがスーパーマリオブラザーズというゲーム音楽によくマッチした。演奏の幅が広がり、これ以上ない楽しい楽曲に仕上がった。
音羽自身が練習中に披露してくれた引き出しの多さに、部員達はかなり圧倒された。音羽は自分で喋るのは苦手でも、楽器に喋らせるのは得意中の得意だった。電子ピアノのボタンを毎回自分で変えて、勝手にアレンジを加えたり、楽譜にないアドリブをぶちかましてくるので、合奏練習がこれまで以上に楽しいものとなった。
音羽にばかりやらせるのでは合奏の意味がないと直樹が言い出し、ちょうど、ゲーム内でマリオがコインをゲットしたときの「チャリーン」という高音を、直樹がピッコロで表現してみせた。すると、今度は健治がマリオがキノコをゲットしてムクムクと大きくなる時の音をクラリネットで表現してみせた。それならと、怜がマリオが土管をくぐる時の音をトロンボーンで表現してみせた。
練習中の思いつきを琳太郎がすべて受け入れ、どんどんやらせた。それが本番ではバランスよく収まり、ステージ音楽としてはなかなか良い演出となったのだ。
たった十六人のパフォーマンスとは思えないと、他校の顧問からも多くの褒め言葉をもらえた。ただそれは、たった十六人しかいない団体という嫌味も込められていることは、琳太郎にはすぐ分かった。
「うちは、うちの良さを引き出していきたいと思ってますんで」
琳太郎は愛想よく微笑むと、他校の顧問達の輪から抜け出し、さっさと自分の教え子と雛形の元へ戻った。
「お前ら、デビュー戦に勝ったな。大勝利だな」
琳太郎が控え室でたっぷり褒めた。部員達は満面の笑みで集まってきた。
「先生のアレンジが良かったんだと思います」
響が真面目に答えた。
「先生もみんなも、全員で楽しんだからだよ」
直樹が部長らしいことを言ってみせた。
「音羽先輩がブロック叩いてスーパースター取って、無敵になっちゃったからですよ」
伊久馬が感激して言うと、音羽は困ったような顔をして、どこかへ居なくなってしまった。
「変な奴だなあ」
怜が失笑して言うと、公彦が説明した。
「天才病だから仕方ないね」
「あんまり褒めると具合が悪くなるタイプの人だから、ほっといてあげよー」
銀之丞は、だいぶ音羽の扱いに慣れてきたように言った。




