6あこがれ
「おいお前。」
鬼がこちらへ話しかけてきた。何故だろう。こんな僕に何か用でもあるのか。その鬼の目は鋭く痛かった。少し血のにおいがする。
「ふぅん、まだ童なのか。小汚いのぉ。お前なんぞ道端の花同然。いない方がましじゃあ。」
僕に話をしてくれた。こんなの初めてだ。そう思っていると、いきなり髪の毛を強引に掴まれた。少し浮く。鬼は笑みを浮かべている。
「そうか、そうか。何も言えんのか。可哀想じゃのう。」
なにもいえない。感動してしまって言えない。どう言えばいいのか。すると、鬼は笑顔から真顔に変わった。その場から離れて行く。
その鬼について行けば、何か変わるのかもしれない。変えてくれるかもしれない。
期待を胸に込め、鬼のかっこいい後ろについて行った。
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次に到着したのは、居酒屋だった。みんな楽しそうに呑んでいる。
「酒、一つ。」
鬼が店員に話しかけていた。僕にも話しかけて欲しいな。
料理と酒が運ばれて来た。すると鬼は顔に皺を寄せている。
「豆だぁ?俺は鬼だぞ?誰だこんなやつ出したやつは。」
怒ってる。どうやら豆が嫌いらしい。鬼は豆を自分から遠ざけた。食べてもいいのだろうか。一度鬼の方へ向く。透き通った綺麗な赤色の目が、遠くを見ている。自分の方へ豆の料理を近付ける。美味しそうだ。再び鬼の方へ見る。怒ってなさそうだ。豆を口に放り込んだ。美味しい。
あっという間に食べ終わった。そうしたら、睡魔が襲ってきた。鬼の膝の上で、眠り込もうとした。
「重い、やめろ。」
聞こえたが眠気に勝てなかった。
「〜♩」
かすかに唄声が聞こえた。心地よい。
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「……!って、」
青年が何か言っている。どうやら鬼が何か盗んだらしい。
ぐおぉぉぉ……!!
遠くで何かが鳴っている。
鬼がその時何処かへ向かって行った。付いて行く。しばらく歩いた。
「ははは。天晴れ天晴れ。」
笑っている。嬉しい。
こちらへ目を向けられた。大きな口を開けて、
「良ぉやったなぁ。褒めてやろう。」
!!
褒めてくれた。こんなの初めてだ。今日は一生の思い出になる。
「〜♩」
そしてまた、あの唄を唄ってくれた。いい事が起こり過ぎる。