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鬼火  作者: あ行
4/13

4盗み

 がやがや

 人混み。まだ夜なのにここは栄えている。奇物とその後ろに童が歩いている。奇物の横を誰かが通り過ぎる。その一瞬、奇物は手慣れた手付きで財布を盗んだ。

「〜♩」

 奇物は上機嫌だ。鼻唄を唄う。誰かが奇物の腕を掴む。振り向く。奇物と童、誰かをのけるようにして、人々が過ぎ去って行く。

「あの、」

 清楚な青年だ。こちらを睨んできおる。

「なんだ。」

 青年を見下す。見下ろしているだけなのに迫力が凄い。しかし、青年は物怖じせず、

「さっき、俺、見てました。あんたが財布を盗む所を。」

「ん〜。俺はなんも盗んどらん。ほら。」

 手を広げ何も盗んで無いと主張する。

「それに俺が仮に盗んでいたとしても、持ち主はもう此処にはいない。」

 地面を指差す。

「いえ、あんたは盗んでました。この目ではっきりと見ました。」

 真っ直ぐな目で見る。

 (今どき、こんな真面目がいるのかぁ。せいぜい生きるのに苦労するだろうなぁ。)

 薄く笑う。

 童がさらに奇物の横に立った。

「ほぉら、俺だって息子もいる立派な父さんだ。な。」

 童の方に作り笑顔で微笑みかける。

「うん。」

 童は奇物の腕を掴む。

「むむ。」

 青年は何も言えない。親がこんなことするわけない。青年にとっての親の像と言うものは平和だ。顔をしかめる。

 その時、

 ぐおぉぉぉ……!

 地面が揺れる。数間先に巨大な怪物が叫んでいる。

「!? なんだ、あれ…。」

 青年は驚く。瞳が中心に凝縮する。見たことのない生き物だ。いや、生きているのか?そうだ。あの親子は?こんな事考えている暇は、

 親子の方へ勢いよく振り向く。いない。見当たらない。

「……どこに行ったんだ…。」

―――――――――――

「ははは。天晴れ天晴れ。」

 喉が渇きそうな乾いた笑い声。奇物と童は青年の目を盗み、薄暗い路地に移動していた。童に目を移す。

「良ぉやったなぁ。褒めてやろう。」

ニチャっと笑いかける。童は奇物の音は聞いているが、何も言わない。ただ幼い顔をしている。

「〜♩」

 奇物はまたあの懐かしい唄を、鼻から唄う。そして、あの者の方へ向かって行った。

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