4 ルドルフとシルビア
妖精同好会が開催された。貧民にクッキーを配り、幻影を見せ、映像を送る。ルドルフもシルビアも驚いた。
4 ルドルフとシルビア
部屋に入って来たのはあの愛想のいい美少女マリエールだ。シルビアの前では大抵の美少女は霞むが、マリエールは霞まない。孤高の美と言われるシルビアの美しさと違って誰にでも愛される美しさがマリエールにはある。聖母のようだ。マリエールは
「妖精同好会に入ることをとても楽しみにしていました。今日から宜しくお願いします。」
と挨拶した。ルドルフは
「シルビアに妖精を借りて国民の子ども達を喜ばす同好会だよ。君も妖精を借りて子ども達を喜ばしてくれ。」
マリエールは
「昨日妖精さんとお話しました。妖精さんはクッキーを作るのとマジックショー特に幻影が得意だそうです。私もそれがやってみたいです。」
シルビアは呆れたというように
「あなた妖精と話しができるの。じゃあ私と同じ力が使えるのじゃなくて。」
シルビアは少しヒステリックに言った。
「今までは妖精が見えるだけでした。でも今日から妖精同好会ですから、妖精さんとお話しができるようになりたいと思い、創生魔法で作りました。」
むちゃくちゃな話しだ。シルビアにしても妖精の力が使えるだけで妖精と話せるわけでもない。妖精は見えるし力を使えるがコミュニケーションが取れる対象とは知らなかった。
「じゃあシルビアにクッキーを作る妖精と幻影をする妖精を借りることしよう。シルビア頼むよ。」
シルビアは2体の妖精をマリエールに差し出した。マリエールは魔法人形と小麦粉と砂糖を出して、
「妖精さんクッキーをお願いね。幻影もお願いします。行ってらっしゃい。」
ルドルフ、シルビア、マリエールの周りが貧民街になった。驚くルドルフとシルビア。マリエールは、
「ただの立体映像ですよ。魔法人形の視点です。我々あそこには行けないでしょう。だから映像でみているんです。あっ、子ども達が集まって来た。幻影が始まったわ。湖で白鳥が舞うのね。魔法人形がクッキーを配り出したわ。」
魔法人形と妖精達はクッキー配りと幻影を終えて帰って来た。マリエールは妖精をシルビアに返そうとするがルドルフは、
「その2体はマリエールに貸して置こう。妖精達の力とマリエールの魔法を合わせて何ができるか知りたい。」
マリエールは頷いた。今日の同好会はここまでになった。マリエールは礼言って退出した。
ルドルフとシルビアだけになるとため息が2人から漏れる。
「何という非常識だ。魔法人形に妖精を乗せて転移させて映像を送る。我々は一ヶ月貸し与えて来月報告受けるつもりでいたのに。」
王子は別に不機嫌そうではなくそう言った。シルビアは
「妖精と話すとか信じられませんわ。魔法人形を転移させるとか映像を送るとか信じられないことばかりですわ。」
ルドルフもシルビアもマリエールの勢いに飲まれるばかりだ。
一方マリエールは妖精達と会話していた。
「ルドルフ王子にあなた達の力と私の魔法を組み合わせるように言われだけどそんなこと出来るのかしら。」
マリエールは優しく尋ねる。
「魔法人形はあらかじめ指示したことしか出来ないだろう。魔法人形に妖精が入れば臨機応変に対応出来るし、指示の変更も簡単だと思うよ。」
マリエールは悩ましげだった。
「でもあなた達は来月には帰す約束よ。」
妖精達はそんなことと言わんばかりに
「きみが話せる妖精は僕達だけじゃないだろう。きみの頼みを聞かない妖精は少ないと思うよ。」
ルドルフに妖精の力とマリエールの魔法を組み合わせる課題を与えられた。