2.平凡な私
わたし、私の名前は、エミリア。
平凡な村娘。それだけ。他に言いようがないと思う。
平凡な顔立ちに、地味な茶色の髪。薄緑色の目の色。
うん。普通すぎて、特徴なんてないよね。……ん?でも、人の目の色って、緑が一般的だったっけ?黒じゃなくて?あれ?いや、緑もあるか……、気のせい?いやいや、でも、わたしなんて、平凡なただの村娘ですし。
ホルト村とゆう小さな村で、たくさんいる、きょうだいのみんなで遊んだり、お手伝いしたり、賑やかにすごしている。……お手伝い、してたかな、わたし。私?
あれ?思い出せない?洗濯とか、掃除とか?料理のお手伝いとか、してたっけ?あとは?お使いとか、買い物?それに……、森に採集に行ったり?……え?森?森……、そうだ森だ。森に入っていた。私。それも、魔女の森。……入っちゃいけない魔女の森。
目覚めると、見たこともないほど大きくて、フカフカするベッドの中で寝ていた。雨に濡れて泥だらけだった服は、着替えた様子はないけれど、シミもなくキレイになっていた。足に違和感があって、真っ白な布団をめくってみると、なぜか片方だけ靴をはいたままだった。
「うわあ~おおい!」
速攻で靴をぬいだ勢いで、思わず投げ捨ててしまった。なにかにぶつかって、ガッコンとすごい音がしたけれど、それどころじゃない!
「こんなにきれいなシーツに靴のまま寝ていたなんて!どうして?!」
汚してしまっていないか、さわさわと手でシーツを確認していると、布団の中がモゾモゾと動きだした。シーツをかき分けて、まだ眠そうな男の子が顔をだした。
サラサラとした長い黒髪の隙間から、息をのむほどの美しく整った顔立ちが見えた。同じベットで寝ていたらしくて、なんだか恥ずかしい。ジッと私を見つめてくる瞳が、とても綺麗な青灰色をしていて、思わず見とれてしまう。
「あの……、おはよう?えっと、私、助けてもらったんだよね。……まだ、お礼も言ってなくて、あの、ありがとう。」
なんだか顔が熱くなってきた。そんなにずっと見つめられていたら、照れる。見つめ合ったまま、ゆっくりと近づいてきて、両手で私の頬を優しく包んだ。
「熱があるみたい。……病気かもしれない。……たくさん寝なくちゃ。」
違うと言う前に、体を倒されて布団を掛けられてしまった。小さい子にするみたいに、ポンポンと布団をリズムよく押さえる。起きたばかりで眠たくはないけれど、たしかに疲れているし、言われるままに目を閉じると、吸い込まれるように夢の中におちていった。