FRIENDLY FIRE
あのとき受けた傷は、とっくに塞がったはずなのに。
自分の存在を誇示するかのように、突然古傷が疼き出すことがある。
俺が傷痕を気にするたびに仲間が茶化した。
『いつまで引きずってんだよ、かすり傷だろ』
『気にするから気になるんだ、さっさと忘れろよ』
って。
たしかに傷はもう痛くない。
それなのにいつまでも疼くのは、きっと俺に銃口を向けたやつが、俺の大切な仲間だったからだ。
撃たれた瞬間、俺を狙ったやつの姿を見た。
俺と同じ色の戦闘服を着た、一緒に釜の飯を食った、一緒にくだらない話をした、そんな仲間が俺を撃った。
顔はよく見えなかった。
いや、もう思い出せないだけか。
一体どんな顔をして俺を撃ったんだろう。
確かめたくても、そいつはもういない。
今日もどこかで銃声が響く。
敵を撃った銃声かもしれないし、嫌いな味方を撃った銃声かもしれない。
今日もたくさん人が死ぬ。
敵も味方もたくさん死んでいく。
悲しいな。
そう思いながら俺は敵を殺す。
俺を撃ったやつのことを、俺はけっこう気に入っていた。
でもあいつはそうじゃなかった。
だから俺に向けて銃を撃った。
悲しいな。
そう思いながら、俺は大して憎くもない敵を狙って引き金を引く。
いつか俺を殺すのは、敵だろうか、仲間だろうか。
そんなことを考えて、すぐに考えるのをやめた。
死んだ人間にとってみたら、どっちが殺したかなんて関係ない。
俺は自分が殺されるまで、誰かを殺し続けるだけ。
それが俺の仕事だ。