ある男の日常
日常編に興味がないという方はこの話は飛ばし読みしても問題ありません。
小学生は楽しかった。誰とでも喧嘩をして殴り合ってもよかったし、親から怒られるだけで済んだ。中学、高校になると何やら「責任」だとか「もうあなた達は大人です」だとか訳のわからないものがくっついてきて無茶なことができなくなった。ちょっと嫌なことがあっても我慢するしかなかった。だからいつしか僕は想像の中でそれを楽しんだが、ふと我に帰るたびにその行為を虚しく感じ、また楽しみ、を繰り返すようになっていた。
靴を脱ぎ、まずはリュックの中からすぐそこのコンビニで買ったジュースを出し、冷蔵庫にいれる。
リビングへ向かいつつワイシャツのボタンを外し、脱ぐ。
そしてそのままの勢いで中に着ていたTシャツも裏表なんて気にせず乱雑に脱いで、丸めてリビングの隅にある洗濯かごへシュートして、ソファへどさっと座った。
手元にあるリモコンでクーラーをつけ、しばらく上裸で涼んだ後、ベタベタする体が気になってシャワーを浴びに風呂へと向かう。
妹が設定したのだろう、ぬるすぎる38℃の水温を43℃に直しズボンとパンツを脱ぎ洗濯機に直接入れて熱いシャワーを浴びると、
「ふぃー。」
と心地よさのあまり思わず声が出てしまった。
俺はまず、シャンプーを手につけ頭を洗う。がしがしと頭を洗いながら、体から洗う派のやつの意味がわからないわ、とかどうでもいいことを考えて、ジャーっと泡をシャワーで流していると
「〜〜♪」
女の人が歌う声が聞こえてくる。あの昼間からトラックで大音量で風俗の宣伝をしている車か?と思い、耳を傾けてみるがはっきりと聞こえないのでシャワーを止めると、歌は聞こえなくなってしまった。
空耳かと思って俺は気にせず、顔を洗う作業に移る。顔を洗いながら買ってきたジュースもう冷えたかな?冷凍庫に入れればよかった。ミスったな。なんて思って顔の泡をシャワーで流すと、また
「〜〜♪〜♪〜〜♪」
今度はさっきよりもはっきり、歌声が聞こえてくる。
歌声に耳を傾けてみると、
「〜〜♪」
心地良い歌声がするっと体の中に入り込んで頭の中で何回も何十回も反響して、とても気持ちいい気分になり急にすごく眠たくなる。
体からは徐々に力が抜けていき、眠気に耐えきれずついに俺はさっき流した泡でぬるぬるする風呂場の床に横になった。
なんだ……これ……催眠術?……ねっ……む……
炎天下の外を歩き疲れた俺の体はその甘い眠りの誘惑に抵抗することはできず、意識を失った。
――同時刻
放課後、数人がたむろしているとある高校の一室。
「今日どこ行くのー?」
「もちろんカラ……オケ……」
「眠……いんだけど」
「それ……な……」
「ぐぅ……」
不定期で更新することになると思います。この物語を読んで面白いと感じた方はブックマークや評価、レビューなどして頂けると大変励みになります。この表現は変じゃないかとか、ここをこうすれば読みやすいなどのご指摘もコメントして頂ければ参考にしたいと思っております。応援よろしくお願いいたします。
次話から本編です。