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音楽のない世界  作者: なか たつとし
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音楽のない世界#1

 今日の最後の授業を終える。日は西日が差しこみ、学校の最上階にある音楽室は少し暑くなっている。

 今日の最後の授業、つまり6時間目を担当した生徒を教室に返すと、少し、残作業をして、私は職員室へと戻る。教師という仕事は少し忙しくもあるが楽しい。しかしながら、担任の先生ともなるともっと忙しいように見えてならなかった。


 教師になって、最初の2年はクラス担任をしていて、とても忙しかったが、今年度から音楽専科となっていた。そもそも、自分の専門科目は音楽であり、小学校の音楽教師という肩書となる予定であったため、最初の2年は現場経験なのだろう。

 生徒たちはすでに帰りのホームルームを終えて、ランドセルを背負って、帰宅しているところだ。

 その生徒たちの合間を縫って、向かいの校舎への渡り廊下を歩き、職員室がある北棟へと向かう。

 

 いつもと違う光景がそこにはあった。

 

 一人の男の子が、ランドセルを背負ったまま、階段の下で倒れていた。

「どうしたの、大丈夫。」

と、私は声を掛ける。その男の子は、メガネをかけている。身長は4年生か5年生くらいだろうか。しかしながら、私の知らない顔の生徒なので、3年生の背が大きい子だろうか。と推測する。

 音楽専科の先生による授業は4年生から教えることになっていて、3年生までは担任の先生が音楽の授業をするからだ。

 つまり、私の知っている生徒となると4年生からなのであるが、身長からして、4年生以上はありそうなのだが、きっと、背が大きい3年生なのだろうと思った。

 

 その男の子の体を見ると、大変だ、頭にこぶができている。

 男の子は、こちらに気付いたのか、涙目で言ってきた。

「階段から突き飛ばされた。それで、頭を打った。また、黒田君です。黒田君に突き飛ばされました。」

 『また黒田君』という言葉に引っかかった。いじめだ。教師の勘がそういっている。この子は、黒田君という子にいじめられているらしい。おそらく黒田君一人なのか、それとも取り巻きもいるのかは不明だが。

「名前とクラスわかる?その黒田君という子のクラスもわかる?」

私は、とっさに男の子に聞いた。

「6年2組の斉藤裕太です。黒田君も同じクラスです。」

 頭の中にクエスチョンマークが飛んでいる。6年2組。彼は6年生ということか。そうなると彼の身長はクラスで、6年生で一番小さい身長になる。倍くらいある子に突き飛ばされたりするも無理もない。

だがしかし、6年2組に斉藤君という子も、黒田君という子もいない。何がどうなっているのかわからない。


 しかし、頭にこぶができている子を放っておくわけにはいかないので、保健室へと連れて行くことにした。


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