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魔王ゲオルグのストライキ奮闘戦線異状アリ!  作者: 所天駄
第一章 魔王対不死軍団
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第八話 武器商人ガダモン爺さん


「デリラ嬢ちゃん。ストライキなんて大変だねー」

「ガダモンさん。こんな時でも、律義に来て下さるなんて。」

「いやいやいや、こんな面白そうな時だからこそさ。

野次馬も兼ねてるから、気にしないで構わんぞい。」

「まあ。性格がお悪いのですわね。」

「ヒッヒッヒ、誉め言葉と受け取っておくわい。」


エ・イ・ドーリアン地下大墳墓迷宮には、御用商人が出入りしている。

ガメツイ交易商人で、ガダモン爺さんという。

アーカムハウスという名の個人商会だが、これでなかなか顔が広く、人間相手にしてまで手広く商売を行っていることから、各地の魔王たちにも重宝されている。


目深に被った帽子の奥に表情は読めない。

がっしりと隙間なく、常に季節関係なく厚手のコートをまとい、種族は不明だ。

だが、彼を怒らせると、彼の取引先まで敵に回す結果となるため、強引に取引しようとまでは、誰も思わないらしい。


「お孫さんはお元気ですの?」

「ああ。お陰で元気にやっとるよ。

毎回、変わった土産は無いかとねだられて困っとるくらいさ。」

「お元気そうで、ようございましたわね。」


よくある挨拶が交わされると、取引が始まる。


「ところで、この魔鉱石、ちとグレードが落ちとりゃせんか?

先日よりも1~2ほど落ちとると、買取価格もそれ相応になるぞい。」

「まあ、そんなはずはありませんわ!

先日と同じ鉱脈から採掘してますもの。

品質は変わりありませんわ!」

「そうかのー?

どうにも、中から感じる魔力が落ちとるような気がするのだがのう。」

「きっと気のせいですわ!

採掘した技師たちからも、同じ品質だって明言されていますわ!」

「デリラ嬢ちゃんが、そこまで言うなら仕方ないのー。

後で、儂の方でも鑑定させるが、とりあえずは、半値で引き取るぞい。

その上で、鑑定結果が嬢ちゃんの言う通りだったら、残りの半値を次の取引で支払うぞい。」


難癖付て、買取価格を下げさせる常套手段なのか、魔鉱石と呼ばれる、魔力の含まれた魔道具などに用いられる石を一つ、手袋着用の掌で転がしながらのたまう。


だが、デリラも負けてはいない。


「せめて、取引する量を前回の半分で、値段を揃えるというのでは?」

「そりゃダメじゃ。魔鉱石は需要が多いでのう。

こっちは、品質が落ちとるかもしれんリスクを引き受けるんじゃ。

支払いがちと遅れたって、大丈夫じゃろい?」

「いえ、それでは、こちらが困りますわ・・・。」

「そう言ってものう・・・。」


デリラ相手に、一歩も引かないどころか、余裕の笑顔で取引品とリストを素早くチェックしてのける。


「そんなら、今回は半分だけ引き取って、支払いも前回と同じにしてやるわい。

そん代わり、魔鉱石の納入が遅れる訳じゃから、その損害分として、こっちのポイズン・トード抽出の毒液を10樽ばかし、おまけに付けると言うことでどうじゃい?」

「もー抜け目無いですわねー。

分かりました。では、ポイズントード謹製毒液樽3つをおまけということで、今回は引き下がりますわ。」

「せめて、5樽は欲しいとこじゃがのー」

「これ以上は、まかりませんわ!」

「仕方がないのー」


ポイズン・トード毒液を3樽だって、売れば十分にもうけが出る品だ。

ガダモン爺さんは、3樽で手を打ってくれたが、鑑定とやらにどれだけ待たせるつもりだであろうか。


ダンジョン相手に商売する者たちの多くは、魔族や亜人が多い。

やはり、人間相手では、差別や攻撃対象とされてしまうため、交易相手もまた、そうならざるを得ないのだ。


ガダモン爺さんの取引は、主として魔王やその配下相手の取引が多い。

ダンジョン内に必要な物なら何でも取り扱う。

罠の設置に必要なバネやゼンマイ、ネジなどを自作工作できる魔物は少なく、組み立てに必要な部品などは、彼のような商人から購入することが多い。


また、噂では、金に糸目さえ付けなければ、という条件次第ではあるが、人間の町や王宮専門の品もアーカムハウス商会でならば入手可能と言われている。


逆に、ダンジョンから出品される品も、買い取ってくれる。

ダンジョン内の戦闘の結果、不幸にも生じてしまった人間の遺品やモンスターのレアドロップ品なども。魔王の個人的なコレクションの売買も手伝ってくれるので、便利に活用されている。


お得意先のダンジョンの一つが、ストライキになったという情報と共に、内情を仕入れて、他所へ売ったり、貸しとして報せるのであろう。


積み荷の入れ替えと金銭授受が終ったら、ガダモン爺さんは挨拶を済ませ、さっさと次のダンジョンへと向かってしまった。



ガダモン爺さん。


ガメツイ交易商人

アーカムハウス商会という個人商を営んでいる。

亜人か魔物であろうと思われ、ダンジョンを主な交易対象としている。

人間の街にも顔が利くらしく、魔王たちからも重宝されている。


年齢を含め、種族も容姿も一切が不明。

常に、季節無関係で幅広い帽子と厚手のコート、手袋を着用。

※真っ暗な中から眼元だけが光って見える感じ。


孫がいるらしいが、その他の家族が会話に登場しないことから、デリラは孫と二人家族では無いかと推測している。




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