第七十六話 魔王対デリラ⑥ヘタレって・・・。
カーミラからの一時間に亘るお説教で、吾輩が得る情報もあった。
これは朗報である。
どうやら、デリラが怒ってしまったのは、吾輩が結婚について、勘違いをしていたというのが、カーミラの言い分であったが。
しかし、藁にもすがる思いで、解決策を求めた吾輩に、数少ない情報である。
そこで、吾輩はデリラと再び対峙することとなった。
「デリラよ・・・。」
「はい。魔王様。」
吾輩の執務室でも、謁見の間でも無く、会議室を選んだのは仕方あるまい。
だがしかし。
「何故、お前の周りには、カーミラ、マリイ、ネイまで付いて来ているのであるか?」
二人だけで話そうと思っていたのだが、何故か女性陣がデリラに付いて来ている。
対する吾輩は一人。
不公平だ。
「あー気にしなくっていいわよぉー」
「私たちは置物に徹しますから、どうぞ続けてください。」
「魔王はニブイから、私たちがサポート役です。」
ヲイ。
最後のネイの言葉は直球過ぎて、吾輩の心を抉る、抉る。
「し、仕方あるまい・・・。」
「先日は、二人だけでお話ししましたところ、冷静さを欠いてしまいましたわ。
今回は、前回の反省も踏まえて、同行してもらいましたの。」
デリラまでもが・・・。
だが、信頼を先に失ってしまったのは、吾輩である。
これも、ある意味罰かもしれぬな。
「コホン。それで、デリラよ・・・。」
と、言いかけて、やはり迷いが出てしまう。
今回は、デリラから助け舟は期待できぬであろうな。
蝶が飛んで、フワフワと舞うくらいの時間が空いてから、吾輩の言葉がようやく形になった。
「デリラよ・・・。」
「はい?」
あー直接顔見ながら聞くのは、やはり恥ずかしいぞ。
しかも、共の3人は、置物に徹すると言いながら、しっかりと食い入るように吾輩とデリラのやり取りを見つめている。
正直やり辛いわ。
今のデリラなら、吾輩を超えた真のラスボス感が半端無いわ。
「お、お前の・・・その・・・ケ。」
「ケ?」
「結婚、についてだが・・・。」
「・・・。」
前回は、食いついてきたのだが、今回は返事も無い。
目の端で、ジロっと吾輩を睨んだだけ。
怖っ!
「け、結婚について・・・、なのだが・・・。」
「・・・。」
カーミラが、『言っちゃえ言っちゃえ!』と言いたげに、何度もウィンクしてくる。
ゾンビ少女のマリイは、ワクワクした感じで見てる。
リッチーのネイは、相変わらず表情は読めぬが、じーっと見ているな。
「そ、そのぉ・・・(汗)」
「・・・。」
(無言止めぃ!)
「結婚・・・。」
(溜息止め・・・。)
「魔王様ヘタレーぇ」
「うっさいわ!」
カーミラめ!
余計な茶々を入れおって。
吾輩だとて、怖いものは怖いのである。
しかし、このままでは、話しがちっとも進まん。
腹を据えようではないか!
吾輩は深呼吸すると、一気に吐き出すように告げる。
「デリラよ。お前の結婚についてなのであるが・・・。」
「・・・。」
相変わらず、答えてはくれぬが目線はもう一度吾輩へと戻してくれたぞ。
一歩前進と受け止めようではないか。
「お前の結婚についてなのだが、そのぉ・・・。
相手は誰かいるのであるか?」
吾輩の精一杯勇気を振り絞った問いかけに、その場にいた一同が盛大にズッコケた。
なんだ、最近はそうやってポーズをとることが流行ってるのかな?
「そ、そこからかぁ・・・・。」
「「「「ハァー・・・」」」」
カーミラの呟きとほぼ同時に、周囲の者たちが溜息を吐いた。
解せぬ。




