第七十三話 魔王対デリラ③助けてカーミラ!
「それでぇー?」
「いや、お前も一応は女だからな。」
「一応ってぇー、なぁにぃかぁなぁー?」
「コホン。すまん。ちゃんとした“立派な女”だ。」
「分かればぁーいいのぉよぉー分かればぁー。」
全く持って解決方法が浮かばぬ吾輩は、溺れる者は藁をも掴むという言葉の如く、吸血鬼真祖カーミラの宮殿へ知恵を借りに来ている。
周囲では、バンパイアブライドやカーミラの眷属どもが遠巻きに囲みながら、時折呼ばれると嬉しそうに茶を注いだり、甲斐甲斐しく給仕をしてくれている。
「カーミラよ。教えてくれ。
デリラは何故あれほどまでに、怒っておるのだ?」
「・ ・ ・。
ハァ~」
盛大な溜息で返事を返されてしまっただと!?
デリラの意図が分からぬ上に、カーミラまでもか!?
吾輩の頭は混乱の極みに達してしまいそうである。
「魔王様さぁ~ 一寸、コレ読んでみてはどうかしらぁ?」
ペラっと一枚の羊皮紙を差し出された。
なんぞヒントでも書いてあることを期待しながら、カーミラの言う通り、読んでみよう。
ん?
連名血判状・・・だと!?
説明書きに、なんかあるぞ。
『利用者の皆様へ。
この度、従業員一同による要求に関し、今後の交渉によって解決できない場合には、 当面の間ストライキを計画している旨の申し入れを受けており、計画通り実施されましたため、終日閉鎖となりました。
当方では、ストライキを回避すべく、魔王と今後とも鋭意協議を続けてまいりますが、万一ストライキが行われた場合、ダンジョン利用者(勇者一行、冒険者、墓荒らしの皆様)及びショッピング・モール、ファンシーランド、ファンシー・オーシャン、関連施設などをご利用になられる関係の皆様方に多大なご迷惑をお掛けすることになりますことを深くお詫び申し上げます。
尚、苦情、ご相談窓口として当迷宮次席責任者である秘書官及び四天王が担当者となります。
エ・イ・ドーリアン地下大墳墓迷宮
配下一同』
へ?
目の前に座っておるカーミラまで、連名の血判状に名を連ねておるではないか!?
訳が分からん!!
「お、お前もか・・・!?」
「ハァイ♡今回はぁー、デリラちゃんの味方でぇーっす♪」
思わず、信じられないものを目にしたような、そんな眼差しでカーミラを睨んでしまった。
今の吾輩を一言で言い表すなら、きっと、血の涙を流しながら、捨て犬の様に、惨めで憐れな、絶望に支配された表情を浮かべているのであろうな・・・。
ハハハ。
苦笑しか浮かばぬわ!!
解決の糸口すら見つからず、吾輩はボロボロになりながら、第九階層にあるカーミラの宮殿を去った。




