第七十二話 魔王対デリラ②激怒!
「デリラ。先程はすまなかった。入っても良いか?」
「嫌です!
意地悪な魔王様になんて、顔も合わせたくありません!」
「そこまでお前を傷つけてしまったのか・・・。
本当にすまなかった。
我輩がお前の気持ちにもっと早く気づいてやれていれば・・・。」
「え?
ま、魔王・・・さ・・ま?」
お?
どうやら、吾輩の誠心誠意からの謝罪は効果的なようだぞ。
扉の向こう側に居るであろうデリラの声音が変わっている。
先程までのマジ切れ状態から、時々吾輩へ向ける、優しく心地よい感じの声に変っている。
この時のデリラは、非常に機嫌が良い。
大抵の吾輩からの頼み事や願いを聞いてくれやすいのだ。
やはり、我輩がデリラの気持ちに気づいてやれたことが大きいのであろう。
「魔王様・・・?」
デリラが秘書室の扉を自ら開いてくれた。
目を真っ赤に泣き腫らして、肩を震わせている姿は、少女時代に出会った頃に、時々見せていたか弱い女だと思わせるものであった。
「すまなかったな、デリラ・・・。」
我輩が型を抱いてやると、デリラは何故か目を瞑り、唇をスゥーっと突き出して来た。
アレ?
おかしいな、一体どうしたと言うのだ?
「デリラよ。
お前がそんなに結婚を望んでいたとは・・・。
早く気づいてやれなかった、我輩が鈍感であった。
鈍い吾輩を許して欲しい。」
「魔王様ったらぁ・・・。
もう、そんなことはよろしいのですわ。
そんなことより、続きを・・・。」
我輩の謝罪に、歓喜の笑みを浮かべるデリラの姿は美しい。
やはり、そなたには、泣き顔より笑顔の方が似合うぞ。
「ウム。そうだな、続きなのだが・・・。」
「ええ。魔王様♡つ・づ・き」
「お前がそれ程までに早く結婚をしたがっているのであれば、我輩も決断しよう。」
「ハイ♡」
「我がエ・イ・ドーリアン地下大墳墓迷宮のすべてのストライキが終息宣言を出せた今。
我輩は、人間界への侵攻計画全てを実行しようと考えていたのだがな。」
「では・・・♡」
「ウム。デリラよ。
お前の願いを最優先で叶えてやろう!」
「まぁ、嬉しいですわ!
魔王様っ!!」
「それ程までに喜んでもらえるならば、我輩も嬉しく思うぞ。
デリラよ。」
「まぁまぁまぁまぁ!
私と結ばれることが、それ程までに待ち遠しかったのですわね!
やっだー、ゲオルグったらぁー♡
もー♡」
「お前の結婚相手探しを、即座に開始することを宣言するっ!」
「・・・ハイ?」
「イヤ。だから、お前が結婚したいと言うのなら、先ずは相手探しが必要であろう?」
アレ?
何故デリラの眼の光が消えてるんだ!?
何故、スゥーっと幽鬼の如く、殺気に満ち満ちてるんだ?
我輩、何か地雷でも踏み抜いてしまったのか!?
「・・・。
もぅ、イイデス・・・。」
突然顔だけでなく、全身を真っ赤に染めたかと思うと、秘書室の扉を超頭蓋事ぶち抜いて、避けられない我輩めがけ、叩きつけるようにして、扉を顔面にめりこませてきやがった!
ノーモーションからの、まるで、スパっと扉を内側から強引に外側へぶち壊す場面だけが切り取られて、我輩へ扉をめり込ませるという結果だけが繋げられたかのようなそれはそれは、見事で鮮やかな奇襲攻撃であった。
「デ、デリラ・・・?」
無理やり扉と口付けさせられてしまった吾輩を顧みようともせずに、そのままデリラは疾風の如き素早さでもって、地下大迷宮の闇の彼方へ消え去ってしまった。
本日二回目だが
解せぬ。




