第七十一話 魔王対デリラ①
そう高笑いしていた時が吾輩にもあったっけ・・・。
「どうしてこうなった・・・。」
気が付くと、ストライキは振り出しに戻っていた。
いや、以前よりずっとマズイ状況に陥っている。
先ず、以前は、第一階層から第十階層まである全ての階層が全面ストライキでは無かった。
ところどころが、バラバラにストライキを行っていたので、個別に交渉することで解決することが出来た。
そうだよな、出来ていたはずなんだよな・・・。
しかも、吾輩の隣には常に副官であるデリラが控えていた。
今、は不在。
一寸待て。
マジでどうしてこうなった!?
きっかけは何だったっけ・・・。
そうだ、あの会話か?
◇
「魔王様。恐れながら、質問を一つよろしいでしょうか?」
「どうしたのだ、デリラよ?
何でも聞いてくれて構わんぞ。」
「それでしたら・・・。」
いつも冷静を気取り、メガネクイっをしながらズケズケと質問してくるデリラの様子がおかしい。
なんというか、お淑やか?
頬を少しだけ赤く染めながら、まるで少女の様に、キラキラさせた目を吾輩に向けて来る。
花粉症か?
いや、熱があるのではあるまいか?
風邪や病気だと困る。
質問とやらが終ったら、速攻で病棟か医務室へ行かせよう。
「それで・・・どうお考えですか?」
「へ?」
いかんな、デリラが熱に浮かれた様に見えたため、話しを聞いていなかった。
「すまんが、もう一度言ってくれないか?」
「・・・(意地悪なんだから!)。
はい。ではもう一度だけ言いますね。
魔王様、ご結婚はどのようにお考えですか?」
「はい?」
いかん。
ストライキの時といい、今回のデリラの唐突な質問といい、予想を遥かに上回ることに対処しようと思うと、頭が付いて行けなくなる。
「何度も言わせないでください!」
デリラの顔が真っ赤になってしまった。
頭からは湯気が出そうな勢いで。
「い、いや、その、急に、そうだ。
唐突過ぎて、何も思い浮かばなかったのだ!
決して、お前の話しを聞いていなかった訳じゃないのだ!
そうか、結婚か?
結婚なぁ・・・。
すまんが、今は人類とのこれからの在り方を考える方が先決だと思うのだ。
だから、それが一段落着いたら、ゆっくりと考えることにしようと思う。
その頃に、良い相手が吾輩の周りに居ればなんだがな・・・。
デリラよ、誰ぞ良い心当たりはあるのか?」
一息で一気に言い終えた吾輩へ目掛けて、デリラの肘鉄がわき腹に突き刺さる。
わき腹と同時に、鋭い痛みが、足の甲に突き刺さる!
ヒールは痛すぎる、ヒールの踵は!!
ヒールダメ!
Noヒール!!
「グッフゥ・・・!?」
「もういいです! ゲオルグなんて大っ嫌い!」
「・・・!?」
解せぬ。
一体全体何の話しだったのだ!?
藪から棒に?
デリラは何に対して怒っているのだ!?
分からん!
さっぱり分からん!!
誰でも良い。
我輩に説明してはくれぬか?
デリラを怒らせてきっかけは・・・。
そうか!
直前の話題は、『結婚』であったな!
やはり、そうであったか・・・。
すまぬことをしてしまったようであるな。
どうやら、我輩の危惧していたことが、現実となってしまったようである。
デリラを怒らせてしまった原因は判明した。
で、あれば、速やかに解決へと突き進むのみであろう?
迷わず、我輩はデリラの控えているであろう、迷宮内の一角にある秘書室と書かれた扉をノックした。




