第六十九話 ストライキ再発!⑤折衷案
「それにしても、驚きましたわ。
まさか、魔王様がこれ程までに、どん欲なお方でしたとは。」
「吾輩は魔王、であるからな。」
デリラの声に、つい、してやったりという笑みが浮かんでしまった。
「それにしても、ドアークとガーグ両名とその眷属たちが素直に聞き入れてくれて、ようございましたわ。」
「うむ。重畳であるな。」
吾輩が、ドアークとガーグ両名とその眷属たちに説明したのは、折衷案とも言うべきものであった。
今回の出来事の発端は、デリラからの人族と戦わず『平和的に差別や争いを無くす』提言があり、吾輩はその案を実行しようとしたことにある。
そこへ、ドアークとガーグ及び戦闘種族である眷属たちからの反発があり、従来通りの『人族との戦いによる支配』が叫ばれた。
戦闘種族にとって、戦うことは己の存在意義と同義である。
存在意義を否定されては、生きては行けぬ。
そこで、吾輩からの折衷案である。
先ず、デリラからの『平和的提言』については、第一階層から第六階層までを、テーマパーク化したものと、人族が死なないダンジョンとする。
第七階層から第八階層は、ドアークとガーグ両名とその眷属たちの支配領域であるから、従来通りのガチンコバトルゾーンと定める。
そうすれば、人族は第五層をこちらで用意した魔法による救護策として、途中リタイヤ、蘇生アリのイージーモードゾーンと定め、第六層からは、途中死亡による魔法蘇生・入り口までのリターンは認めるが、途中リタイヤ希望者の入り口までの魔法による自動リターンは無しのミドルモードゾーンとする。
元々時々しか人族の侵入を許していなかった第七階層からは、死をも覚悟して臨む者のみを対象として、受け入れを許可する。
ただし、途中リタイヤや自前魔法以外での死者蘇生などという甘っちょろい救護策は無い。ウルトラハードモードというヤツである。
それでも挑戦したいと言う腕自慢、力自慢の者たちは、挑めば良いだけであろう。
最初は戸惑い、反対しようとしていた者たちも居たが、吾輩からの一言が止めとなった。
「考えてもみろ、これまでは第一階層から第六階層までの六層にも及ぶダンジョンのせいで、お前たちの根城としている第七、第八階層まで辿り着ける者は、ほとんど居なかったではないか。
だが、今回のテーマパークやイージー・ミドルゾーンの登場により、以前よりも第七層への侵入が容易となったのであるぞ。
これからは、お前たちが戦う相手が増えると言うことを意味しておるのであるぞ!」
吾輩のこの言葉に反対する者は居なかった。
「「「「「ソノ発想は無かったでゴザル!!」」」」」
ござる!?




