第六十八話 ストライキ再発!④二択と両方
「どちらかを選ばなければならないのでしょうか。
両方を選ぶことが出来たならば・・・。」
ん?
どちらかを選ぶ、選ぶ、選ぶ・・・。
うむ。確かに、現時点では、吾輩が新たな覇業として掲げている『戦わずに済む選択肢』か『従来通り血塗られた道を進むか』の二択であると考えている。
だが、本当に選択肢はこの二択でなければならぬのであろうか。
第三の選択肢という可能性は拓けぬのであろうか。
「二つに一つの道を選ぶか、どちらも選ばぬか、両方を選ぶか・・・
両方!?」
吾輩の脳内に、一瞬の閃きが過ぎった。
「魔王様?」
「デリラよ。
急ぎ両名とその眷属どもを集めるのだ。
これが最後の話し合いになるやもしれぬがな。」
「はい!
ただちにドアークとガーグ両名とその眷属へ招集をかけてみますわ!
応じればまだ話し合いの道が残っていますわね。」
吾輩の顔をじっと見つめたかと思ったら、デリラがいつものキビキビした感じで執務室から飛び出して行った。
◇
「我が四天王が一角、ドアーク、同じく四天王が一角、ガーグよ。」
「「御前に。」」
両名は、話し合いに応じてくれた。
良かった。
「そして、闇竜人族並びに、オーガ族のものたちよ。」
「「「「「はっ! 御前に!!」」」」」
彼らの眷属である闇竜人族とオーガ族も呼びかけに応じて駆けつけてくれた。
ここからが本番である。
「お前たちの望みを叶えたいと思う。」
「「おおっ!?
それは本当でございますか、魔王様。」」
「うむ。」
吾輩は、力強く頷いて見せた。
同時に、デリラに向かっても。
デリラは、戸惑っているようであるな。
当然である。
吾輩がドアークとガーグの願いを聞き入れると言うことは、これまで通り、人間と戦い続けるという意思表示であるからな。
「やはり、ここはダンジョンである。
ダンジョンであるならば、我等魔族や魔物、魔獣と人族との戦いは、避けては通れぬ。
否。戦いこそが必然であり、宿命であろう。」
吾輩の宣言に、ドアークとガーグ、その眷属たちがうんうんと嬉しそうに頷いている。
「だがしかし、同時にデリラが提言をも実現したいと思う。」
「「「「「ふぁぃ!?」」」」」
名お呼ばれた当のデリラはキョトンとしただけだが、周囲の者たちは、文字通りキョドっておる。
「な、なにを唐突に!?」
「や、ま、魔道、魔、魔王様!?」
「そ、そんな両立何て、出来る訳ないじゃないですかっ!?」
「魔王様。二頭追うものは一頭も得ずと昔から・・・。」
口々に吾輩の二番目の発言へ否定的な言葉を浴びせて来る。
これもまた、当然であろうな。
「諫言耳が痛いわ。
だがな、これは左程難しいと吾輩は考えてはおらぬのである。」
「「「「「ワッツ!?」」」」」
今度は声が裏返っておるか。
仕方ない、ここは一つ、胸襟を開いて見せるべきであろうな。
「なに、左程労せずとも、両立の道は開けるのである。」
「お聞かせ願いたく。」
「オ、オレもでさ!」
ドアークとガーグ、その眷属たちも吾輩への疑問を隠しもせずに、説明を求めている。
よかろう、我が新たな覇道計画を聞かせてやろうではないか。
吾輩は、静かに口を開いた。




